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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー

第13話 『プロフェッサー芹澤』登場

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「どうした? 私の顔に何かついているのか?」

 突然現れた副会長に食堂にいた冬夜たちが驚く中、当の本人は不思議そうな顔で辺りを見回している。不意に目が合ったリーゼが我に返ると、鋭く睨みつけながら芹澤に詰め寄る。

「アンタね……いきなり現れて、落ち着いていれるわけないでしょうが!」

 食堂内に響き渡る怒号によって呆気にとられていた全員が現実に引き戻される。

「今日の放課後は生徒会の会議があるって、前から伝えていたでしょ! どこにいたのよ?」
「ああ、会議は今日だったのか。失礼、実験が忙しくすっかり失念していた」
「何が忙しいよ! 実験室に行ったけどいなかったじゃない!」
「私としたことが……実験室に訪ねるときは事前にアポイントをお願いしたい」
「放課後に会議だって朝も言ったでしょ! 何がアポイントよ! 忘れていたことを認めなさい!」

 ヒートアップしていくリーゼにわざと煽っているのではないかと思うような回答を繰り返す芹澤。

「なあ、言乃花。この二人はいつもこんな感じなのか?」
「見ての通りよ。会議中はきちんとお互いの……けどね」

 冬夜と言乃花がそんな会話をしていると、疲れ果て椅子にもたれかかるリーゼの姿に慌てたソフィーが飲み物を用意していた。それぞれの様子を興味深そうな顔で眺めていた芹澤がふと冬夜に目を留め、口元を緩めると話しかけてきた。

「君が冬夜くんだね? 学園長からと聞いているよ」

「……はじめまして……ですよね?」

 冬夜が用心深く聞くと、芹澤の眼鏡の奥の黒い瞳がキラリと光る。

「ふふふ……細かいことは気にしないでくれ。そうだ、ぜひ実験室に遊びに来てくれたまえ。そこのもぜひ一緒に来てくれるとうれしい。では、楽しみにしているぞ!」

 話し終えると、スッと立ち上がると声高らかに宣言した。

「僕のことは、と気軽に呼んびたまえ」

 白衣をなびかせ笑いながら去っていく。その場にいた全員があっ気にとられた数秒後、我に返ったリーゼの絶叫が響く。

「ああ゛! また逃げられた! 今日は会議だって言ったのに!」
「リーゼお姉ちゃん、落ち着いて! みんなでおやつ食べようよ」

 普段と違うリーゼにビックリして、ぎゅっと抱きつくソフィー。

(ん? え? ソフィーちゃんが抱きついてる?)

 一気にだらしない顔になるリーゼ。
 ハッと落ち着きを取り戻し、優しく頭をなでる。

「ありがとう、ソフィーちゃん。せっかく用意してくれたおやつをいただこうかしら」
「はい! すぐに用意するので待っていてくださいね」

 リーゼに頭をなでられてご機嫌で準備を始めるソフィー。しばらくすると人数分のお茶とお菓子が用意された。

「リーゼと言乃花に聞きたいんだが、生徒会ってちゃんと成り立っているのか?」
「副会長が特殊なだけよ。あれでもだからね」
「そうね、けど、芹澤よりはまともよ」

 二人の会話から聞き捨てならない言葉が聞こえ、思わず飲んでいたお茶でむせかける冬夜。

(そうだ、もう一人いたんだった。どう考えても癖が強すぎだろ……よく成立してるよな……)

 生徒会は四人で構成されている。会長のリーゼ、副会長の芹澤、書記の言乃花、そして、まだ会ったことがない会計である。学園長から以前聞いた説明では四大属性(地・水・火・風)のトップクラスの使い手で構成されている。

「今、を考えていなかった?」

 ニッコリと笑うリーゼ。全身から底知れぬ圧がにじみ出ており、必死に言い訳を考えようとする冬夜。自らの行動が更なる墓穴を掘っていることに気が付かず……

「いや、何も考えていないぞ。ただ、生徒会の人たちって個性的な人が多いんだなって……」
「それはかしら? もらいたいものね」

 一切目が笑っていない笑顔で圧をかけるリーゼに対し、絶体絶命の状況に自らを追い込んでいく冬夜。
 突然、耳をつんざく大きな爆発音が響き、床と壁がビリビリと震えた。

「なんだ? 今の爆発音は?」
「はぁ……まーた、あの副会長がやらかしたみたいよ」

 ため息とともに言乃花がうんざりした様子で話す。

「どうするの、リーゼ? 今日こそ注意しにいく?」
「そうね。今日はビシッと言っておかないといけないわね。会議の件もうまくかわされたし。みんなで行くわよ!」

 急いで爆発音のした実験室に向かうことになる一行。

「校舎が揺れるほどの爆発だろ? 中の人は大丈夫なのか?」
「すごい音だったよ。ケガがないといいけど……」

 最悪の事態を想像して顔色が悪くなっていく冬夜とメイ。そんな二人に、安心させるようにリーゼが語りかける。

「大丈夫よ。言葉で説明するよりも自分の目で確かめてみるといいわ」

 はたして爆発のあった実験室と中にいた人は無事なのであろうか……
 リーゼの言葉の真意が何を意味しているのか……
 衝撃の光景に二人が言葉を失うのはすぐ後のことだった。
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