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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー
第12話 三人目の生徒会役員
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廊下の先で待っていたメイと合流した冬夜と言乃花はソフィーの待つ食堂へ向かう。
「俺のいる場所がよくわかったな?」
「お手伝いが終わってソフィーと一緒に職員室を出たら、男の人に声かけられたんだ」
「いきなり? なんて言われたんだ?」
「冬夜くんが学園長との面談が終わるころだから、迎えに行ってあげてって。振り返った時には誰もいなかったんだよね」
学園長の面談を冬夜以外に知っていたのは、リーゼや言乃花を含む生徒会役員とメイとソフィーといった限られた人間のみ。
「メイに声をかけた人物って……」
「なるほどね、メイちゃんに声をかけたのはあの子ね」
「言乃花、心当たりがあるのか?」
「もちろん。その子は生徒会の会計だもの」
驚いて固まっている冬夜とメイを見て二人の様子に首をかしげる言乃花。
「どうしたの? そんなに驚くことでもないでしょう?」
「いやいや、驚くだろ! 何の前触れもなくサラッと重要なことを言われたら!」
二人が驚いているのかわからないといった表情を浮かべる言乃花。
「些細な事を気にしていたらこの学園ではやっていけないわよ。ソフィーちゃんのお茶が冷める前に早く食堂へ行きましょう」
話し終えると食堂へ向かい、歩みを進める言乃花。メイと冬夜も一瞬あっ気にとられたが、すぐに後を追い、三人でソフィーの待つ食堂へ向かうためありき始める。
「冬夜くん、面談お疲れ様。言乃花さんも一緒だったんですね」
食堂に到着するといそいそとお茶の準備をするソフィーが温かく迎えてくれた。小さな身体で一生懸命準備をする姿に三人とも癒されていた。
「もうすぐ準備できるからみんな座って待っていて。お菓子もってくるからね」
ソフィーが奥のほうへ用意しているお菓子を取りに行ったときだった。柱の物陰からその姿見つめる人影が視界に入ってきた。
「リーゼ……何やっているんだ?」
本人は隠れているつもりなのだろうが、冬夜達からは丸見えである。むしろかなり怪しい人物にしか見えない。
「え? あ、いや、これは……そう、ソフィーちゃんに何かあったらいけないからここから見守っていたのよ!」
顔を真っ赤にしながら胸を張って言い切るリーゼ。
「いやいや、さっきの表情見ちゃったから説得力ゼロだって」
「もう手遅れよ。バッチリ見えていたわ」
普段から想像できないほど緩み切った表情を言乃花と冬夜は笑いをこらえるのに必死だ。そして、二人からいじられてどんどん顔が赤くなり、慌てふためくリーゼ。
「リーゼさん、ソフィーのこと心配してくれていたのですね! ありがとうございます。ソフィーに言ったらすごく喜んでくれますよ」
メイの純粋な言葉にリーゼの表情がぱっと明るくなる。そして、両手をぎゅっと握り同意を求める。
「さすがメイちゃん! わかってくれるのね」
「はい。ソフィーが頑張っているのをそっと見守っていてくれたんですよね?」
「そうそう! もし困ったことがあればすぐ助けに行けるように見守っていたの!」
二人の会話を聞いてあきれて開いた口がふさがらなくなる冬夜と言乃花。そんな会話をしているとソフィーがお茶の用意を持ってきた。
「みんなどうしたの? 準備できたからおやつにしましょう」
お茶とお菓子を並べ、みんなでほっと一息をつこうとした時であった。ソフィーが奇妙なことを言う。
「あ、ごめんなさい。カップが足りなかったみたいで……すぐ持ってきますね」
「いやいや、お気遣いありがとう」
一斉にその声の主のほうを見る。そこには白衣を身にまとい、眼鏡をかけたぼさぼさの青い髪の男性が何食わぬ顔で椅子にもたれ掛かるように座っている。
(いつの間に? そんな気配感じなかったぞ……)
ガタッと勢い良く椅子から立ち上がり、男性に向かい怒鳴り始めるリーゼ。
「どうしてここにいるのよ! それより、今までどこに行っていたの?」
「リーゼ君、何にそんなに怒っているのかね? そんなことより美味しいお茶が冷めてしまうと思わないのか?」
怒りをあらわにするリーゼに対し、まったく意に介さない男性。
「言乃花、あの人は誰なんだよ? めちゃくちゃリーゼ怒ってないか?」
「例の副会長よ。どこにいるかわからない神出鬼没の」
冬夜と言乃花は二人に巻き込まれないように小声で話していたのだが、ばっちり副会長に聞こえていたようで唐突に自己紹介が始まる。
「申し遅れてすまない、そう、私こそ生徒会副会長の芹澤 玲士である。私のことはプロフェッサー芹澤と呼びたまえ」
白衣をなびかせ、左手で眼鏡をクイッと直す。その様子を見た冬夜はこう思った。
(また変なのが出てきたよ……この学園、ほんとに大丈夫か……)
ほっと一息つくはずの時間が、衝撃的な副会長との遭遇により一変する。
自らをプロフェッサー芹澤と呼ぶ副会長。
冬夜はまだ気が付いていなかった、彼が起こす事態に巻き込まれてしまう運命を……
「俺のいる場所がよくわかったな?」
「お手伝いが終わってソフィーと一緒に職員室を出たら、男の人に声かけられたんだ」
「いきなり? なんて言われたんだ?」
「冬夜くんが学園長との面談が終わるころだから、迎えに行ってあげてって。振り返った時には誰もいなかったんだよね」
学園長の面談を冬夜以外に知っていたのは、リーゼや言乃花を含む生徒会役員とメイとソフィーといった限られた人間のみ。
「メイに声をかけた人物って……」
「なるほどね、メイちゃんに声をかけたのはあの子ね」
「言乃花、心当たりがあるのか?」
「もちろん。その子は生徒会の会計だもの」
驚いて固まっている冬夜とメイを見て二人の様子に首をかしげる言乃花。
「どうしたの? そんなに驚くことでもないでしょう?」
「いやいや、驚くだろ! 何の前触れもなくサラッと重要なことを言われたら!」
二人が驚いているのかわからないといった表情を浮かべる言乃花。
「些細な事を気にしていたらこの学園ではやっていけないわよ。ソフィーちゃんのお茶が冷める前に早く食堂へ行きましょう」
話し終えると食堂へ向かい、歩みを進める言乃花。メイと冬夜も一瞬あっ気にとられたが、すぐに後を追い、三人でソフィーの待つ食堂へ向かうためありき始める。
「冬夜くん、面談お疲れ様。言乃花さんも一緒だったんですね」
食堂に到着するといそいそとお茶の準備をするソフィーが温かく迎えてくれた。小さな身体で一生懸命準備をする姿に三人とも癒されていた。
「もうすぐ準備できるからみんな座って待っていて。お菓子もってくるからね」
ソフィーが奥のほうへ用意しているお菓子を取りに行ったときだった。柱の物陰からその姿見つめる人影が視界に入ってきた。
「リーゼ……何やっているんだ?」
本人は隠れているつもりなのだろうが、冬夜達からは丸見えである。むしろかなり怪しい人物にしか見えない。
「え? あ、いや、これは……そう、ソフィーちゃんに何かあったらいけないからここから見守っていたのよ!」
顔を真っ赤にしながら胸を張って言い切るリーゼ。
「いやいや、さっきの表情見ちゃったから説得力ゼロだって」
「もう手遅れよ。バッチリ見えていたわ」
普段から想像できないほど緩み切った表情を言乃花と冬夜は笑いをこらえるのに必死だ。そして、二人からいじられてどんどん顔が赤くなり、慌てふためくリーゼ。
「リーゼさん、ソフィーのこと心配してくれていたのですね! ありがとうございます。ソフィーに言ったらすごく喜んでくれますよ」
メイの純粋な言葉にリーゼの表情がぱっと明るくなる。そして、両手をぎゅっと握り同意を求める。
「さすがメイちゃん! わかってくれるのね」
「はい。ソフィーが頑張っているのをそっと見守っていてくれたんですよね?」
「そうそう! もし困ったことがあればすぐ助けに行けるように見守っていたの!」
二人の会話を聞いてあきれて開いた口がふさがらなくなる冬夜と言乃花。そんな会話をしているとソフィーがお茶の用意を持ってきた。
「みんなどうしたの? 準備できたからおやつにしましょう」
お茶とお菓子を並べ、みんなでほっと一息をつこうとした時であった。ソフィーが奇妙なことを言う。
「あ、ごめんなさい。カップが足りなかったみたいで……すぐ持ってきますね」
「いやいや、お気遣いありがとう」
一斉にその声の主のほうを見る。そこには白衣を身にまとい、眼鏡をかけたぼさぼさの青い髪の男性が何食わぬ顔で椅子にもたれ掛かるように座っている。
(いつの間に? そんな気配感じなかったぞ……)
ガタッと勢い良く椅子から立ち上がり、男性に向かい怒鳴り始めるリーゼ。
「どうしてここにいるのよ! それより、今までどこに行っていたの?」
「リーゼ君、何にそんなに怒っているのかね? そんなことより美味しいお茶が冷めてしまうと思わないのか?」
怒りをあらわにするリーゼに対し、まったく意に介さない男性。
「言乃花、あの人は誰なんだよ? めちゃくちゃリーゼ怒ってないか?」
「例の副会長よ。どこにいるかわからない神出鬼没の」
冬夜と言乃花は二人に巻き込まれないように小声で話していたのだが、ばっちり副会長に聞こえていたようで唐突に自己紹介が始まる。
「申し遅れてすまない、そう、私こそ生徒会副会長の芹澤 玲士である。私のことはプロフェッサー芹澤と呼びたまえ」
白衣をなびかせ、左手で眼鏡をクイッと直す。その様子を見た冬夜はこう思った。
(また変なのが出てきたよ……この学園、ほんとに大丈夫か……)
ほっと一息つくはずの時間が、衝撃的な副会長との遭遇により一変する。
自らをプロフェッサー芹澤と呼ぶ副会長。
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