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第2章 ワールドエンドミスティアカデミー
第4話 迷宮と言われる由縁
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(この図書館には何かあるな……)
迷宮図書館に入ると冬夜は小さく息を吐いて周囲を見渡した。入口から見て左側には貸出カウンターや机があり、よくある図書館の光景だ。しかし、右側に広がるエリアが否応なしに異質な空間であるという現実を突き付けてくる。天井付近まで本で埋め尽くされた本棚、迷路のように入り組んだ先に広がる先の見えない闇。
「何回来ても好きになれないわね……思い出すだけで寒気がするわ」
「そう? 慣れてくると居心地が良いわよ」
見事なまでに真逆の反応だが、リーゼが嫌悪感を隠そうとしないのは理由があった。
冬夜が入学する半年前のことである。個人的な調べ物のため、迷宮図書館を訪れたリーゼ。言乃花が一緒に案内する予定だったが、直前に頼まれた急用があり、しばらく席を外すことになった。
「帰ってくるまで絶対に一人で探しにいかないこと! わかったわね?」
「はいはい、大丈夫よ。早く用事終わらせてきてね」
リーゼに釘を刺し、迷宮図書館を後にした言乃花。出入口の扉が閉まる音がするとリーゼが怪しい笑みを浮かべる。
(ふふふ、行ったわね? 言乃花はダメだって言っていたけど……探したい本はすぐ近くの本棚にあるはずだし、迷子になるわけないじゃん。大丈夫、大丈夫)
軽い気持ちで『絶対に一人で探さないこと』という言乃花の忠告を無視して足を踏み入れた数分後……
「どうなってるのよ? さっきから同じ景色ばかりだし……まさか迷った……ここから出られないの? 言乃花、早く帰ってきて……」
一時間後、用事を終えた言乃花が発見したのは迷子になり、半泣きでうずくまっていたリーゼ。この後、しっかりお説教されたのは言うまでもない……
「本当にビックリしたわ。本棚エリアに入ってすぐだったから良かったけど、あの時のリーゼったら……」
「ちょっとストーップ! それ以上は何もなかったわよね?」
慌てて言乃花の口を抑え込むリーゼ。あからさまな慌てようからよほど知られたくないことがあったと推測できる。
「ぷはぁ。そんなに恥ずかしがるようなことでもないと思うけど?」
「私は忘れたいことなの! この話はもうおしまい!」
二人のやり取りがひと段落したところで、冬夜が口を開く。
「気になっていたことなんだが、図書館内部の見取り図はないのか?」
「一応あるわよ。まったく当てにならないけど」
さっとカウンターへ向かうと中から一枚の紙を取り出し、皆が集まっている机に広げた。全員で見取り図を見て驚愕する。描かれている配置図と実際の広がる空間を見比べ、全く当てにならないといった言葉の意味がよく理解できる。
「言っている意味が分かった……これはまったく当てにならない」
全員が一致した意見だった。
現在の場所から見えている景色と図に記されている箇所は一見すると整合性があるように見える。見えている範囲は。
奥に広がる空間は闇に包まれており、実際にどうなっているか確認することもできない。
「これが迷宮図書館と言われる由縁。どういった仕組みなのかはさっぱりわからないけど……何かしらの要因で空間が歪んでしまったからじゃないかと推測しているわ。目印なしで足を踏み入れたらたどり着けるか定かじゃないの」
サラッと恐ろしいことを話す言乃花。
「空間の歪みが原因とおっしゃってましたが、私たちがいたことが何か関係しているのでしょうか?」
今までじっと話を聞いていたメイが遠慮気味に言乃花に質問する。
「否定はできないわ。私自身も管理を任されてはいるけど、把握できているのは多くても半分くらい。あの時はノルンの力も関係しているような気がするし、一概には関係ないとは言えないと思うの」
「この場所で話していても埒が明かない。言乃花、俺たちが遭遇した場所まで行って調べてみようぜ」
無言でうなずく言乃花。
右手をすっと上げ、風の魔力をまとわせると一筋の線が暗闇に向かって伸びていく。
「目的の場所までのルートはこれで大丈夫よ。皆ついてきて」
先頭に言乃花、すぐ後ろにリーゼと並ぶようにメイとソフィー、最後尾に冬夜の順で迷宮図書館の内部へ歩みを進めていく。
(ほんとまっすぐ歩いているはずなのに振り返るとさっきいた場所が全く見えないんだよな……一体どんな構造しているんだ?)
ふと後ろが気になり振り返ると全く見覚えのない空間へ変わっている。感覚としてはほんの数メートルしか歩いていないはずだがまったく当てにならない。
「ちゃんとついてこないと迷子になるわよ」
「わるい、わるい。ちょっと振り返っただけだ」
リーゼから小言が飛んできた。気が付くと数メートル進んだところで冬夜のことを待っており、慌てて追いかける。
メイのいた空間と『箱庭』に関する手掛かりとなるものはあるのだろうか。
時を同じくして、因縁の相手も動き始めようとしていた。
迷宮図書館に入ると冬夜は小さく息を吐いて周囲を見渡した。入口から見て左側には貸出カウンターや机があり、よくある図書館の光景だ。しかし、右側に広がるエリアが否応なしに異質な空間であるという現実を突き付けてくる。天井付近まで本で埋め尽くされた本棚、迷路のように入り組んだ先に広がる先の見えない闇。
「何回来ても好きになれないわね……思い出すだけで寒気がするわ」
「そう? 慣れてくると居心地が良いわよ」
見事なまでに真逆の反応だが、リーゼが嫌悪感を隠そうとしないのは理由があった。
冬夜が入学する半年前のことである。個人的な調べ物のため、迷宮図書館を訪れたリーゼ。言乃花が一緒に案内する予定だったが、直前に頼まれた急用があり、しばらく席を外すことになった。
「帰ってくるまで絶対に一人で探しにいかないこと! わかったわね?」
「はいはい、大丈夫よ。早く用事終わらせてきてね」
リーゼに釘を刺し、迷宮図書館を後にした言乃花。出入口の扉が閉まる音がするとリーゼが怪しい笑みを浮かべる。
(ふふふ、行ったわね? 言乃花はダメだって言っていたけど……探したい本はすぐ近くの本棚にあるはずだし、迷子になるわけないじゃん。大丈夫、大丈夫)
軽い気持ちで『絶対に一人で探さないこと』という言乃花の忠告を無視して足を踏み入れた数分後……
「どうなってるのよ? さっきから同じ景色ばかりだし……まさか迷った……ここから出られないの? 言乃花、早く帰ってきて……」
一時間後、用事を終えた言乃花が発見したのは迷子になり、半泣きでうずくまっていたリーゼ。この後、しっかりお説教されたのは言うまでもない……
「本当にビックリしたわ。本棚エリアに入ってすぐだったから良かったけど、あの時のリーゼったら……」
「ちょっとストーップ! それ以上は何もなかったわよね?」
慌てて言乃花の口を抑え込むリーゼ。あからさまな慌てようからよほど知られたくないことがあったと推測できる。
「ぷはぁ。そんなに恥ずかしがるようなことでもないと思うけど?」
「私は忘れたいことなの! この話はもうおしまい!」
二人のやり取りがひと段落したところで、冬夜が口を開く。
「気になっていたことなんだが、図書館内部の見取り図はないのか?」
「一応あるわよ。まったく当てにならないけど」
さっとカウンターへ向かうと中から一枚の紙を取り出し、皆が集まっている机に広げた。全員で見取り図を見て驚愕する。描かれている配置図と実際の広がる空間を見比べ、全く当てにならないといった言葉の意味がよく理解できる。
「言っている意味が分かった……これはまったく当てにならない」
全員が一致した意見だった。
現在の場所から見えている景色と図に記されている箇所は一見すると整合性があるように見える。見えている範囲は。
奥に広がる空間は闇に包まれており、実際にどうなっているか確認することもできない。
「これが迷宮図書館と言われる由縁。どういった仕組みなのかはさっぱりわからないけど……何かしらの要因で空間が歪んでしまったからじゃないかと推測しているわ。目印なしで足を踏み入れたらたどり着けるか定かじゃないの」
サラッと恐ろしいことを話す言乃花。
「空間の歪みが原因とおっしゃってましたが、私たちがいたことが何か関係しているのでしょうか?」
今までじっと話を聞いていたメイが遠慮気味に言乃花に質問する。
「否定はできないわ。私自身も管理を任されてはいるけど、把握できているのは多くても半分くらい。あの時はノルンの力も関係しているような気がするし、一概には関係ないとは言えないと思うの」
「この場所で話していても埒が明かない。言乃花、俺たちが遭遇した場所まで行って調べてみようぜ」
無言でうなずく言乃花。
右手をすっと上げ、風の魔力をまとわせると一筋の線が暗闇に向かって伸びていく。
「目的の場所までのルートはこれで大丈夫よ。皆ついてきて」
先頭に言乃花、すぐ後ろにリーゼと並ぶようにメイとソフィー、最後尾に冬夜の順で迷宮図書館の内部へ歩みを進めていく。
(ほんとまっすぐ歩いているはずなのに振り返るとさっきいた場所が全く見えないんだよな……一体どんな構造しているんだ?)
ふと後ろが気になり振り返ると全く見覚えのない空間へ変わっている。感覚としてはほんの数メートルしか歩いていないはずだがまったく当てにならない。
「ちゃんとついてこないと迷子になるわよ」
「わるい、わるい。ちょっと振り返っただけだ」
リーゼから小言が飛んできた。気が付くと数メートル進んだところで冬夜のことを待っており、慌てて追いかける。
メイのいた空間と『箱庭』に関する手掛かりとなるものはあるのだろうか。
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