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第一章 終わる世界
金色の力
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「金色の力!」
フアニータの身体の周りで光りながら回る金色の光。
遠くから飛んで来るつららを光で弾き、間に合わないものは素手で掴んで投げ捨てながら、フアニータは走ってる。
目指すのは、心の声が聞こえる方向。
ケダモノがいると思われる場所。
なのに、走っても走ってもフアニータはケダモノに辿り着けない。
声の聞こえる場所があちこちに移動してるように思えるから。
フアニータはぜえぜえ言いながら叫んだ。
「神様っ!」
叫んでいる最中にも大きなつららが飛んできて、フアニータは転がって直撃を避けた。
「このっ!」
起き上がったフアニータは、つららが飛んできた方向に向かって全力でダッシュした。
そこにあったのは、
・・・霧だった。
ケダモノがいると思われる場所に、真っ白な霧。そこから先は何も見えない。
「太陽の剣!」
フアニータの左手に金色の長い棒状の、煙のようなものが現れ、それが長剣の形になった。
柄にヒマワリの飾りの付いた、黄金色の長剣。
フアニータは、霧に頭から突っ込み、思い切り長剣を振り回した。
(無駄だな)
剣をめちゃくちゃに振り回すフアニータ。
長剣で濃い霧を吹き飛ばすように振って、それでも霧は彼女にまとわり付いて消えない。
「このお!」
ケダモノの声が聞こえた方にダッシュして剣を突き出し、激しく攻撃する。
でもやっぱり手応えはなさそう。
たまりかねて、さっきまでぐったりしていたガブリエラが叫んだ。
「フアニータ、頭を使いなさいよ! そんなんじゃ、疲れ切ったところをケダモノに簡単に倒されちゃうわよ!」
「うるさぁい! 私だって色々考えてるのよ!」
「例えば?」
「えっと・・・秘密よ秘密!」
あ。これはあれだ。
思考放棄ってやつ。
フアニータは考えるのを止めた。
これは、地味にピンチだ。
最強の花乙女がこんなとこで負けてしまう。
でもアン先生もナターシャさんもガブリエラもボロボロで、戦えそうもない。
無傷なのは・・・私だけ?
花乙女なのに何もできない私。
しかも手持ち武器は普通の野球用バット。
どうしよう?
どうしたらいい?
「フアニータ、絶対助けるから!」
「ジェニーは来ないで」
「えっ!?」
「足手まといだから」
フアニータははっきり言った。
・・・知ってたけど。こんな娘だって。
「全力で行くよ、ケダモノ。覚悟して」
フアニータは両腕をぶんぶん回した。
「金色の力!」
フアニータの全身を、金色に光る嵐が包んだ。
ギャアアアアアアン!
金色の嵐は勢いを増し、大きくなってフアニータの小柄な体を完全に覆い隠した。
(全力で来る? 何をしても無駄だ)
フアニータは、無言のまま全力で走った。
霧を蹴散らし跳ね飛ばし、ケダモノに向かってダッシュする。
(無駄なことを・・・)
次の瞬間、地面に大きな落とし穴が開いた。
金色の光の渦は、たまらずその穴に落ちた。
「えっ!」
私たちの絶叫。
「フアニータ!」
すうっと、霧が晴れた。
長身のケダモノが、ゆっくりと姿を現し、落とし穴に歩み寄った。
(バカが。力だけでこの私に勝てるか)
足が、やたら長いケダモノ。
トレンチコートのような上着とソフト帽をかぶった男。
その男がパチンと指を鳴らすと、上空からつららが降ってきて、ケダモノの目の前の空間に静止した。
(さあ、その金色の光の渦は、私のつらら何本に耐えられるかな?)
ケダモノがもう一度指を鳴らすと、つららたちは同時に穴の中に落ちた。
「フアニータ!」
(フアニータとやら、お仲間さんが心配してるよ。いつまで頑張れるかな?)
ケダモノがパチン、パチンと何度も指を鳴らすたび、つららが穴の中に落ちる。
そのたびに、穴の中から金色のまばゆい光が漏れる。
このままじゃ、フアニータが死んじゃう。
何とかしなきゃ!
私は、足を前に踏み出した。
「私が、あ、相手だ! ケダモノ、め!」
震える足。
カタカタ音を立てる歯。
情けない。
情けないけど、戦わなきゃ。
私が、フアニータを、助けなきゃ!
私は野球用バットを両手で構えて、ケダモノに向かって走り出した。
「フアニータ!」
フアニータの身体の周りで光りながら回る金色の光。
遠くから飛んで来るつららを光で弾き、間に合わないものは素手で掴んで投げ捨てながら、フアニータは走ってる。
目指すのは、心の声が聞こえる方向。
ケダモノがいると思われる場所。
なのに、走っても走ってもフアニータはケダモノに辿り着けない。
声の聞こえる場所があちこちに移動してるように思えるから。
フアニータはぜえぜえ言いながら叫んだ。
「神様っ!」
叫んでいる最中にも大きなつららが飛んできて、フアニータは転がって直撃を避けた。
「このっ!」
起き上がったフアニータは、つららが飛んできた方向に向かって全力でダッシュした。
そこにあったのは、
・・・霧だった。
ケダモノがいると思われる場所に、真っ白な霧。そこから先は何も見えない。
「太陽の剣!」
フアニータの左手に金色の長い棒状の、煙のようなものが現れ、それが長剣の形になった。
柄にヒマワリの飾りの付いた、黄金色の長剣。
フアニータは、霧に頭から突っ込み、思い切り長剣を振り回した。
(無駄だな)
剣をめちゃくちゃに振り回すフアニータ。
長剣で濃い霧を吹き飛ばすように振って、それでも霧は彼女にまとわり付いて消えない。
「このお!」
ケダモノの声が聞こえた方にダッシュして剣を突き出し、激しく攻撃する。
でもやっぱり手応えはなさそう。
たまりかねて、さっきまでぐったりしていたガブリエラが叫んだ。
「フアニータ、頭を使いなさいよ! そんなんじゃ、疲れ切ったところをケダモノに簡単に倒されちゃうわよ!」
「うるさぁい! 私だって色々考えてるのよ!」
「例えば?」
「えっと・・・秘密よ秘密!」
あ。これはあれだ。
思考放棄ってやつ。
フアニータは考えるのを止めた。
これは、地味にピンチだ。
最強の花乙女がこんなとこで負けてしまう。
でもアン先生もナターシャさんもガブリエラもボロボロで、戦えそうもない。
無傷なのは・・・私だけ?
花乙女なのに何もできない私。
しかも手持ち武器は普通の野球用バット。
どうしよう?
どうしたらいい?
「フアニータ、絶対助けるから!」
「ジェニーは来ないで」
「えっ!?」
「足手まといだから」
フアニータははっきり言った。
・・・知ってたけど。こんな娘だって。
「全力で行くよ、ケダモノ。覚悟して」
フアニータは両腕をぶんぶん回した。
「金色の力!」
フアニータの全身を、金色に光る嵐が包んだ。
ギャアアアアアアン!
金色の嵐は勢いを増し、大きくなってフアニータの小柄な体を完全に覆い隠した。
(全力で来る? 何をしても無駄だ)
フアニータは、無言のまま全力で走った。
霧を蹴散らし跳ね飛ばし、ケダモノに向かってダッシュする。
(無駄なことを・・・)
次の瞬間、地面に大きな落とし穴が開いた。
金色の光の渦は、たまらずその穴に落ちた。
「えっ!」
私たちの絶叫。
「フアニータ!」
すうっと、霧が晴れた。
長身のケダモノが、ゆっくりと姿を現し、落とし穴に歩み寄った。
(バカが。力だけでこの私に勝てるか)
足が、やたら長いケダモノ。
トレンチコートのような上着とソフト帽をかぶった男。
その男がパチンと指を鳴らすと、上空からつららが降ってきて、ケダモノの目の前の空間に静止した。
(さあ、その金色の光の渦は、私のつらら何本に耐えられるかな?)
ケダモノがもう一度指を鳴らすと、つららたちは同時に穴の中に落ちた。
「フアニータ!」
(フアニータとやら、お仲間さんが心配してるよ。いつまで頑張れるかな?)
ケダモノがパチン、パチンと何度も指を鳴らすたび、つららが穴の中に落ちる。
そのたびに、穴の中から金色のまばゆい光が漏れる。
このままじゃ、フアニータが死んじゃう。
何とかしなきゃ!
私は、足を前に踏み出した。
「私が、あ、相手だ! ケダモノ、め!」
震える足。
カタカタ音を立てる歯。
情けない。
情けないけど、戦わなきゃ。
私が、フアニータを、助けなきゃ!
私は野球用バットを両手で構えて、ケダモノに向かって走り出した。
「フアニータ!」
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