上 下
65 / 171

建国祭ー最終日 カンザキ

しおりを挟む
巨大都市ウルグインは今、建国祭の最後のイベントをしていた

コロシアムにおいて武大会の決勝が行われていた。
勝者には国王より賛辞としかるべき地位が与えられる
昨日まで姿を現さなかった王は、ついに本日姿を見せた
そして決勝の様子を見ているところである


「さぁ、決勝も盛り上がっております!司会進行はこの私、キューティライナと、昨年度王者のアリントさんがお送りしております!」

キィィィと響く大きな声は猫印の拡声器によるものだ。
コロシアムの各所につけられたスピーカーからライナとアリントの会話が聞こえる

「いやぁ、アリントさんは前回王者ですが、今年の様子は如何でしょうか?」

「今年ヤベェ!なんか前回よりヤベェっすよ。レベルがちげぇすぎるっす!」

「え?なんかキャラ軽くないですかアリントさん?」

「やっべぇっす!」

「おっとお!ザッツ選手ここで奥の手!お得意の火炎魔法を纏わせた魔法剣!これはあああああああ!決まったぁぁぁ!優勝はザッツ!ザッツ・ウルトラ選手だぁぁぁ!」

「やべぇーっす!」

「黙ってろアリントぉ!」

ゴスッ

「さて静かになったところで勝利者インタビューです!今回ほぼ無傷での勝利となりましたザッツさんです」

「はぁ、はあ、そんな、無傷だなんて・・・でも今回の大会は正直楽でした。優勝候補のカインさんもいませんでしたし、そうですね、優勝したとはいえ納得はできてません」

そう言ったところで、国王がザッツに歩み寄ってきた

「はっはっは。だが君はこの国で一番強いということが証明されたわけである。」

「こ、国王様!」

ザッツは膝をつく

「いや、良い。立ちたまえ」

「はっ!」

そう言ってザッツが立ち上がった時だった

会場となるコロシアムに一陣の風が吹く
それは魔力の風

そこに一人立つ金色の髪をたなびかせる女性

白い鎧を着込み
腰には剣を
そして、イヤリングや指輪をゴテゴテと付けている

それらが何を意味するか知る人は少ない

「ル、ルシータ・・・」

「ようクソ親父。終わらせに来たよ」

「な、何者!?」

ザッツはキャサリンの前に立つ。
凄まじい殺気を受けて今にも逃げ出したくなる気持ちを必死に押さえ込む

「ジャマだな」

キャサリンがそう言って右手を払うように動かす

ガァン!!

一瞬にして百メートルを軽く超す程にザッツは吹っ飛び、壁にめり込んだ

王がその腰に構えた剣を抜く

「何か用か?ルシータ」

「悪いけど、しかるべき地位を貰いに来た」

「ッツ!」

父親ではなく、国王として目の前に現れた明確な「敵」を迎えうつ

そして国王は呼び出す

「召しませ、風の王よ」

「召しませ、風の王よ」

「我が呼びかけに応え目の前の敵を打ち払えガルーダ!」

ぶわり

あたり一面の小石が舞い、竜巻が舞い始める
その中心には巨大な鳥の神ガルーダが顕現した

だがー

「孵れ、卵よ、来たれ黒き竜よ」

「来たれ、蒼き竜よ」

重なる声ー

「なっ!シアか!」

キャサリンの後ろから現れたもう一人の娘ー

「ルシータ、シア!貴様ら反乱を起こす気か!」

王は二人の呼び出す「神獣」を知らない。だからその召喚魔法に覚えが無い

「来な!バハムート!」

キャサリンが叫ぶ

「全てを超えて来たれ!リヴァイアサン!」

晴天だった空は漆黒の闇に染まり雷鳴が轟く
その空からは二柱の「星獣」が降りてくる

一つは巨大な黒き竜ー

一つは巨大な蒼き龍ー

ぶわりー

ぶわりと降りて来た二人の呼び出した召喚獣に対してー

「な、なんだアレは!くそっ!打ち払えガルーダ!」

そう、王は叫んだがガルーダは動かない

「ただデカイだけの召喚獣などー」
そう言いかけてガルーダを見ると、ガルーダはなんと頭を下げている

「無駄だよ親父、いや国王。バハムート以上の召喚獣などそうそうはいないさ。シアの呼び出したリヴァイアサン以上もー」

国王は知らない。だが、識っていたのは勝ち目がないと言う事だけだ
観念した王は問う

「な、何が望みだ!」

「言ったろ。しかるべき立場を貰うと」

キャサリンの目はー優しくにこりと父親であり国王に微笑んだ

その2人と2体の暴風は全てを黙らせたー








「さて、聞こえてるかな?私の名前はルシータ・ウル・グインだ。そこで縛られて唸っている「元」国王の娘だ。残念ながら先ほど勘当されたのでもはや娘ではないかもしれない。」

キャサリンは拡声器にて喋っている

結局完全に戦闘形態のキャサリンにワンパンで国王はのされてしまった。

もちろん兵士も出てきたが、バハムートとリヴァイアサンを見た瞬間に敗北を悟ったお陰で血は流れなかった

「今日はウルグインと言う国の最後の祭だ。そしてー「カンザキ」と言う名前の国として新たに生まれ変わる記念すべき日だ!」

「私の名はアレクシア・ウル・グイン。この革命は私達王族姉妹の望んだ結果です。国名がカンザキとなると共に、隣国ダイダロス、南の国ラスクロも賛同し、属国となります」

その瞬間、コロシアムの観客から歓声が巻き起こる

縛られ動けない王は衝撃を受ける

「なっ!それでは世界人口の4割が一つの国に居ることになってしまうぞ!いつの間にそんな・・」

青ざめる「元」王

「マジ聞いてねぇよ・・・」

はっとして見るとそこに居るのはカンザキだ

「貴様カンザキィ!・・・・ん?・・・なんでお前まで縛られているんだ?」

「逃走防止じゃねぇの?何度か逃げたがあっさりと捕まった。で、今はこの切れない鎖にて拘束されて連れてこられた」

二人の間を無言の静寂で包まれる

「そ・・そうか。大変だな?」

「そう思うなら娘をなんとかしろよ・・・俺は焼肉屋をやりたいだけなんだ・・・なんで俺が国王になんかならなきゃならないんだ・・」

そういうカンザキの顔は本当に嫌そうな顔をしている

「そして、私ルシータは王妃としてカンザキと婚姻を結ぶ!側室にはアレクシア、ラスクロのヴァネッサ王女、ダイダロスのユネーミア王女が確定している!その婚姻を持って、カンザキは3都市すべての王となる!」

キャサリンの演説を聞いてさらにカンザキの顔が青ざめる

「は・・ハーレムだな?良かったじゃないか・・お前、世界征服でもやる気か?・・」

「・・・俺の人生オワッタ・・・陰謀ヤバイ」

いつの間にかヴァネッサ、ダイダロスのユネーミア元王妃もキャサリンの後ろに立っている

「昨夜いきなり拉致られて、王宮に連れてこられたんだ。その時にこの事を聞かされて逃げたんだが無駄だった・・バハムートも共犯だとはな・・・」

契約を結んでいるカンザキの居場所はすべてむーたんに筒抜けになっていたのである

「わ、わしが言うのもなんだが・・ざまぁ・・・いや、娘をよろしく頼むぞ」

「おいやめろ、心の声がもれてんぞおっさん」

「なんにせよこれは世界が動くぞ・・その中心にはお前が要るんだ、あいつらの期待を裏切らないように頑張るんだな。わしは気楽なただの冒険者としてダンジョンにでも潜ることにする」

もはやウルグイン「元」国王は諦めている

「あっ!きたねぇ!」

そんな会話をしていると

「仲良くやっているようでなにより。カンザキとクソ親父。ただクソ親父、冒険者になんてなれるわけがないだろう?あんたにゃそのまま宰相として国王業務の殆どはやってもらう」

「なぬ!」

「シアとレオノールを売り飛ばそうとしたんだ。結果、この国をラスクロに売り渡しそうになってた。実権はやらないがその罪は償ってもらわないとね」


「おお!」

カンザキの顔がほんの少し明るくなる

「それにカンザキは子づくりで忙しいから。4人分だし」

一瞬でその明るくなった以上に顔色が悪くなる
マジでか・・・そうだ!

「まてキャサリン!俺はキャサリンとなら良いが、他の三人は遠慮したい!俺はキャサリンが好きなんだ!」

ついでに本音を告白をしてしまう
逃げられないなら数を減らすまでだ!
そう浅はかに思っていたのだが

「嬉しいわね、お店を始めた時にその言葉を聞けていたならそうなっていたかもね」

「じゃあ!」

「でももう手遅れ。あなたを逃げられないようにした結果こうなちゃった。だから諦めてね?」

にこりとカンザキに笑いかけるキャサリンの笑顔に

「うああああああああ」

カンザキは悟る
逃げられない運命なのだと・・・・

だがここで異変が起きるー
すんなりと事は運ばない

ギャリィン!

キャサリンとバハムートの張り巡らせていた結界が切り裂かれる!

「ちょおおおおっと!まぁったああああああああああああああああ!」

そう叫びながら一人の女性が舞い降りる

黒く長い髪、その手には日本刀を持っている
そして

「じゃ、ジャージ?」

なぜかその女性はジャージを着ている

スタッと軽快に舞台に降り立ち



「ミナリ見参!!!!!」



そう、彼女は叫んだのだった

彼女はこの陰謀を、カンザキを救うことができるのか?

そしてこれ何の茶番?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ポーション必要ですか?作るので10時間待てますか?

chocopoppo
ファンタジー
松本(35)は会社でうたた寝をした瞬間に異世界転移してしまった。 特別な才能を持っているわけでも、与えられたわけでもない彼は当然戦うことなど出来ないが、彼には持ち前の『単調作業適性』と『社会人適性』のスキル(?)があった。 第二の『社会人』人生を送るため、超資格重視社会で手に職付けようと奮闘する、自称『どこにでもいる』社会人のお話。(Image generation AI : DALL-E3 / Operator & Finisher : chocopoppo)

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

処理中です...