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湯治へ
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親方達の頑張りもあり、管轄院に動向を探られず治療に専念出来た。私もキンカモミジも受けた傷が酷く、完治まで2ヶ月近くかかってしまった。大分動けるようになった頃、コシに突然湯治へ行こうと提案された。
「とう・・じ、 どっかのお店とかの名前 ?」
「ああ、ごめん。そっか、温泉はあってもその文化はないんだっけーーー 」
「湯治って温泉の効能で傷を癒す、東の果ての国のアレかい ?」
「そうそう、やっぱり医師は知ってるよね」
「湯治なら、シズイノクニでも行くのかい ?」
リーモが術の都なら、シズイノクニは温泉が有名な観光地だ。小さい半島の中に40をも越える温泉があり、疲労回復や傷の治りが早くなるもの。さらには、闘気や術を使う為の気に効くとされているモノがあり効果は様々だ。
「シズイノクニか、こっからだとちと距離があるなぁ !」
「親方は行ったことあるの ?」
「昔に大将らとなぁ、そういやアレってまだ出来てねぇのか ?」
「アレ ?」
「ミシズとシズイノクニを結ぶ、超高速帆船ルガンワスのことかい ?」
「ああ、ソレだぁ !」
「バカじゃないのかい、出来たばっかで運賃高くて乗れる分けないさね」
「一応聞くけど、いくらくらい ?」
私が眠っている間にコシはサイの報酬を受け取って来たらしく、自慢げに掲げているのだが値段を聞いた途端ガックリと崩れ落ちる。
超高速帆船ルガンワス。妖水を利用した風力装置を使い、陸路で数ヶ月かかっていた所が1週間程度で着けるようなった新型帆船。流石に運航開始したばかりで、運賃が1000ルーク払って乗れるかどうかだ。
「陸路だと結構かかるさね。馬車でも数ヶ月くらいはかかるから、それでも結構な旅費さね」
時間や路銀が倍位にかかる為、半ば諦めていた時思わぬ人物から声が挙がる。
「にゃはは、条件付きだけどコレ使ってあげようか ?」
そう言って懐から取り出した物は、一匹の龍とアイビーの花が刻まれいる懐中時計だった。管轄院のシンボルマークにもなっているこの龍紋は、原初の龍と契約した初代龍姫の龍紋だと言われている。
「おいおい、龍行証をこんなトコロで出すか普通ーーー 」
「龍行証、その懐中時計がなにかあるの ?」
「龍行証ってのは、管轄院から龍姫にだけ渡される証明書のようなもんさね。龍姫である事の証明と、あらゆる検問や関所を通る事が出来るさね。さらに継承の儀まで、能力の使い方を実践的に学ぶ公務の為あらゆる乗り物に管轄院の支払いで乗る事が出来るさね」
「それって、つまりーーー 」
「無料で乗り放題ってことだな。ただ、龍行証の使用履歴は残るけどいいのか ?」
「にゃはは大丈夫大丈夫、あーしを追って来るんだったらクロツツジだけだしね」
「それで条件って何 ?」
「その湯治にあーしも連れてってよ !」
余りにも突拍子もない申し出にその場居た全員が固まる。
「いやいや、なんで ?!」
「さっきの話聞いてたらさ、アオバラの言う事も一理あるなって思ってさ。今迄管轄院の言う通りにして来たけどさ、少しくらいは自由にしても良いかなってーーー 」
「別にそれくらいなら良いんじゃない ?」
「ちょっ、シラユリまで何言ってんのさ !」
「だって結局はキンカモミジに助けられてるワケだし、わざわざ私を捕まえる為に命まで賭けないでしょ」
「それは、そうだけどーーー 」
しばらく悩み渋々と納得するコシを見て、キンカモミジと顔を合わせる。
「それでどういう道のりでいくの ?」
ルガンワスが出ているミズシまでは、それ程離れていないのだが歩きだと3週間くらいかかってしまう。
「それも、あーしが乗ってきた馬車使えばどう ?」
キンカモミジが呼ぶと、1台の派手ではないがソコソコ装飾された馬車が姿を現す。普通の馬車なのだが、ソレを引いている馬が普通では無かったのだ。普通の馬よりふた周り程大きく、黒に近い紫色の肌をしている。さらに、赤い瞳に山羊のような角が二本生えている。
「おいおい、こりゃぁ早馬じゃねぇか !」
早馬、比較的大人しい馬型の妖獣を品種改良した人工妖獣だ。普通の馬より脚が速く、馬自身の体力も桁違いになっている。
翌日、親方達と別れキンカモミジと共にミズシに向かい馬車を走らせていた。キンカモミジが個別に雇った行商人が手綱を握っている為、3人共車内で馬車に揺られている。
「今更だけど、クロツツジは置いてって良かったの ?」
「良いの良いの、大体さいつも管轄院の命令で組まされるけど良い事なんて一度もないし。今思えば、なんであんなクソ真面目にちゃんと付き合ってたんだかーーー 」
その後、ミズシに着くまで永遠とキンカモミジの愚痴を聞かされ続けたのは言うまでもない。
「とう・・じ、 どっかのお店とかの名前 ?」
「ああ、ごめん。そっか、温泉はあってもその文化はないんだっけーーー 」
「湯治って温泉の効能で傷を癒す、東の果ての国のアレかい ?」
「そうそう、やっぱり医師は知ってるよね」
「湯治なら、シズイノクニでも行くのかい ?」
リーモが術の都なら、シズイノクニは温泉が有名な観光地だ。小さい半島の中に40をも越える温泉があり、疲労回復や傷の治りが早くなるもの。さらには、闘気や術を使う為の気に効くとされているモノがあり効果は様々だ。
「シズイノクニか、こっからだとちと距離があるなぁ !」
「親方は行ったことあるの ?」
「昔に大将らとなぁ、そういやアレってまだ出来てねぇのか ?」
「アレ ?」
「ミシズとシズイノクニを結ぶ、超高速帆船ルガンワスのことかい ?」
「ああ、ソレだぁ !」
「バカじゃないのかい、出来たばっかで運賃高くて乗れる分けないさね」
「一応聞くけど、いくらくらい ?」
私が眠っている間にコシはサイの報酬を受け取って来たらしく、自慢げに掲げているのだが値段を聞いた途端ガックリと崩れ落ちる。
超高速帆船ルガンワス。妖水を利用した風力装置を使い、陸路で数ヶ月かかっていた所が1週間程度で着けるようなった新型帆船。流石に運航開始したばかりで、運賃が1000ルーク払って乗れるかどうかだ。
「陸路だと結構かかるさね。馬車でも数ヶ月くらいはかかるから、それでも結構な旅費さね」
時間や路銀が倍位にかかる為、半ば諦めていた時思わぬ人物から声が挙がる。
「にゃはは、条件付きだけどコレ使ってあげようか ?」
そう言って懐から取り出した物は、一匹の龍とアイビーの花が刻まれいる懐中時計だった。管轄院のシンボルマークにもなっているこの龍紋は、原初の龍と契約した初代龍姫の龍紋だと言われている。
「おいおい、龍行証をこんなトコロで出すか普通ーーー 」
「龍行証、その懐中時計がなにかあるの ?」
「龍行証ってのは、管轄院から龍姫にだけ渡される証明書のようなもんさね。龍姫である事の証明と、あらゆる検問や関所を通る事が出来るさね。さらに継承の儀まで、能力の使い方を実践的に学ぶ公務の為あらゆる乗り物に管轄院の支払いで乗る事が出来るさね」
「それって、つまりーーー 」
「無料で乗り放題ってことだな。ただ、龍行証の使用履歴は残るけどいいのか ?」
「にゃはは大丈夫大丈夫、あーしを追って来るんだったらクロツツジだけだしね」
「それで条件って何 ?」
「その湯治にあーしも連れてってよ !」
余りにも突拍子もない申し出にその場居た全員が固まる。
「いやいや、なんで ?!」
「さっきの話聞いてたらさ、アオバラの言う事も一理あるなって思ってさ。今迄管轄院の言う通りにして来たけどさ、少しくらいは自由にしても良いかなってーーー 」
「別にそれくらいなら良いんじゃない ?」
「ちょっ、シラユリまで何言ってんのさ !」
「だって結局はキンカモミジに助けられてるワケだし、わざわざ私を捕まえる為に命まで賭けないでしょ」
「それは、そうだけどーーー 」
しばらく悩み渋々と納得するコシを見て、キンカモミジと顔を合わせる。
「それでどういう道のりでいくの ?」
ルガンワスが出ているミズシまでは、それ程離れていないのだが歩きだと3週間くらいかかってしまう。
「それも、あーしが乗ってきた馬車使えばどう ?」
キンカモミジが呼ぶと、1台の派手ではないがソコソコ装飾された馬車が姿を現す。普通の馬車なのだが、ソレを引いている馬が普通では無かったのだ。普通の馬よりふた周り程大きく、黒に近い紫色の肌をしている。さらに、赤い瞳に山羊のような角が二本生えている。
「おいおい、こりゃぁ早馬じゃねぇか !」
早馬、比較的大人しい馬型の妖獣を品種改良した人工妖獣だ。普通の馬より脚が速く、馬自身の体力も桁違いになっている。
翌日、親方達と別れキンカモミジと共にミズシに向かい馬車を走らせていた。キンカモミジが個別に雇った行商人が手綱を握っている為、3人共車内で馬車に揺られている。
「今更だけど、クロツツジは置いてって良かったの ?」
「良いの良いの、大体さいつも管轄院の命令で組まされるけど良い事なんて一度もないし。今思えば、なんであんなクソ真面目にちゃんと付き合ってたんだかーーー 」
その後、ミズシに着くまで永遠とキンカモミジの愚痴を聞かされ続けたのは言うまでもない。
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