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「全く、いつから廊下にいたの?コレット、温かいミルクを用意してちょうだい。あなたの分もね。朝晩は冷え込むんだから、そんな薄着で出ちゃ・・・」
ガミガミ怒られて、というより計画の頓挫にソファの上でしょぼんとしてたら、ガレスの言葉がピタリと止んだ。
不審に思って見上げると、ガレスは私の足元を凝視していた。
そこにはガウンからはみ出た膝上からむき出しの両足が。
「あ、」
ささっとガウンを直すが、あられもない姿を見られてしまったことが恥ずかしくて体温が上がる。
「・・・お嬢様、こんな夜更けにまさか、・・・いえ、お嬢様に限ってそんなことは!」
ガレスが鼻を押さえながら聞き取れない声でぶつぶつと呟いている。
きっとはしたないと思われてしまったに違いない。女性用の夜着は長いワンピース状のものが一般的で、つまりガウンから足ははみ出ないものなのだ。
終わった・・・。
勝負をかける前に。
「お嬢様!!」
「は、はいっ!」
「──少し、外します」
「はい」
ガレスは足早に部屋を出ていった。
ほうっ。肩から力が抜けた。
そしてはっ、と気付き、慌てて胸元を押さえる。
普通の夜着なら胸元は出ていないものなのだ。普通じゃない夜着をガウンの下にまとった私の胸元は、まるで、ガウンの下には何も着ていないかのように、谷間の線が見えていた。
「・・・これも見られてしまったかしら」
くらっ、と目眩がした。
これは、どう言い訳すればいいのだろうか。
そうだ!ガレスが戻る前にいつもの夜着に着替えてしまうのはどうだろう。貴方の見間違いよ、って。
「・・・無理があるわ」
がっつり見られていたわね。
では、ベッドに入って寝たふりはどうだろうか。ガレスの気配で起きたふりをして「──うん?あら、ガレス、どうしたの、こんな夜更けに。寝ぼけているの?私はずっと寝ていたわよ」と言いくるめ、・・・られる気がしないわ。
これが小説なら上手くいくのでしょうけど、現実はそうもいかないわね。ほう、とため息をついた。
コンコンとノックの音が響き、応えるとガレスが入って来た。手にはカップが一つのったお盆。コレットの姿はない。
「あら?コレットは?」
「もう遅いので部屋に戻りましたよ」
「・・・そうなの」
ひどいわ、コレット!この状況をどうやって一人で打開したらいいの?体がこわばる。
「さあ、ミルクよ。体が冷えたでしょ」
「あ、ありがとう」
両手でミルクを受け取る。カップの温かさにホッ、と肩の力が抜けた。ふうふう、と冷まして、そっと飲む。
「美味しいわ」
コレットのホットミルクにはいつも蜂蜜が入っていて、その量がちょうどいいの。
ああ、癒やされる。このまま、もう寝てしまおう。
「ガレス、私はもう休みます。ガレスも、もう部屋に戻って」
「ん、なーに何にもなかったことにしてんの?私はまだなんの説明も受けていないわよ?
何故、夜更けに廊下に出ていたの?どこへ向かうつもりだったの?私が納得できる答えを聞けなければ、残念だけど御父上に報告しなければね」
ガレスは忘れていなかった。
「ガレスもホットミルクはいかが?とっても癒やされるのよ?」
そして小さいことは気にならなくなるのよ?
「いいえ、結構よ。私は今、仕事中。私の仕事は騎士としてお嬢様とこの屋敷を守ることよ」
「・・・し、仕事中?寝ないの?」
「夜勤の者が寝るわけないでしょ」
「え、・・・」
衝撃の事実。あの夜勤の者専用の部屋は、寝るための部屋ではないと?そう思ってよくよくガレスを見れば、確かにきっちりと隊服を着ている。・・・厚い胸板が、引き締まった腰が、長い脚が、いえ、もう、全てがカッコいいわ。もっと言えば、いつもは一つに括っている金茶の髪をそのまま下ろしていて、それが肩から滑り落ちるときの曲線がなんとも色っぽい。
「けほん、けほん」
うっかり見惚れてしまったわ。変態か、私。
えーと、何だっけ。
そうそう、つまり、眠るガレスのベッドに忍び込む、という計画は最初から成り立たなかったということ。なんなら、部屋に忍び込んだ途端、成敗されていた可能性もある。
「・・・・・」
──世間知らずのお嬢様。
一緒に計画を立てたコレットも世間知らずということになる。長年、私の侍女をやっているせいね。申し訳ないわ。
「さあ、話してちょうだい」
無知な自分に深く落ち込んでいると、ガレスが急かしてきた。
「・・・その、特に何がということもなくて、・・・たまにはコレットと親交を深めようと・・・」
真実を話せるわけもなく、適当にもそもそと話す。普段のガレスならこんなふうにしつこく問い詰めてこないのに、なぜだろう、今は私の前に腕を組んで仁王立ちしている。まるで真実を聞くまでは許さないと言わんばかりに。
「あら、コレットから聞いた話と違うわね」
「・・・え?コ、コレットはなんて?」
カップを持つ手が震える。
「私の口から言わせたいの?罪を軽くしてもらいたければ自白するのが一番なのよ?」
私ってば犯罪者なの?問い詰め方がえげつない。な、なんて応えれば・・・。もう、跪いて許しを請いたい。
ただ、固まっていただけなのだが、だんまりの私に痺れを切らしたのか、ため息混じりにガレスが衝撃的なことを言ってきた。
「・・・コレットはね、こう言ったのよ。お嬢様のガウンの紐を解くべし、とね」
「は?」
コ、コ、コレット~~~!!
ガミガミ怒られて、というより計画の頓挫にソファの上でしょぼんとしてたら、ガレスの言葉がピタリと止んだ。
不審に思って見上げると、ガレスは私の足元を凝視していた。
そこにはガウンからはみ出た膝上からむき出しの両足が。
「あ、」
ささっとガウンを直すが、あられもない姿を見られてしまったことが恥ずかしくて体温が上がる。
「・・・お嬢様、こんな夜更けにまさか、・・・いえ、お嬢様に限ってそんなことは!」
ガレスが鼻を押さえながら聞き取れない声でぶつぶつと呟いている。
きっとはしたないと思われてしまったに違いない。女性用の夜着は長いワンピース状のものが一般的で、つまりガウンから足ははみ出ないものなのだ。
終わった・・・。
勝負をかける前に。
「お嬢様!!」
「は、はいっ!」
「──少し、外します」
「はい」
ガレスは足早に部屋を出ていった。
ほうっ。肩から力が抜けた。
そしてはっ、と気付き、慌てて胸元を押さえる。
普通の夜着なら胸元は出ていないものなのだ。普通じゃない夜着をガウンの下にまとった私の胸元は、まるで、ガウンの下には何も着ていないかのように、谷間の線が見えていた。
「・・・これも見られてしまったかしら」
くらっ、と目眩がした。
これは、どう言い訳すればいいのだろうか。
そうだ!ガレスが戻る前にいつもの夜着に着替えてしまうのはどうだろう。貴方の見間違いよ、って。
「・・・無理があるわ」
がっつり見られていたわね。
では、ベッドに入って寝たふりはどうだろうか。ガレスの気配で起きたふりをして「──うん?あら、ガレス、どうしたの、こんな夜更けに。寝ぼけているの?私はずっと寝ていたわよ」と言いくるめ、・・・られる気がしないわ。
これが小説なら上手くいくのでしょうけど、現実はそうもいかないわね。ほう、とため息をついた。
コンコンとノックの音が響き、応えるとガレスが入って来た。手にはカップが一つのったお盆。コレットの姿はない。
「あら?コレットは?」
「もう遅いので部屋に戻りましたよ」
「・・・そうなの」
ひどいわ、コレット!この状況をどうやって一人で打開したらいいの?体がこわばる。
「さあ、ミルクよ。体が冷えたでしょ」
「あ、ありがとう」
両手でミルクを受け取る。カップの温かさにホッ、と肩の力が抜けた。ふうふう、と冷まして、そっと飲む。
「美味しいわ」
コレットのホットミルクにはいつも蜂蜜が入っていて、その量がちょうどいいの。
ああ、癒やされる。このまま、もう寝てしまおう。
「ガレス、私はもう休みます。ガレスも、もう部屋に戻って」
「ん、なーに何にもなかったことにしてんの?私はまだなんの説明も受けていないわよ?
何故、夜更けに廊下に出ていたの?どこへ向かうつもりだったの?私が納得できる答えを聞けなければ、残念だけど御父上に報告しなければね」
ガレスは忘れていなかった。
「ガレスもホットミルクはいかが?とっても癒やされるのよ?」
そして小さいことは気にならなくなるのよ?
「いいえ、結構よ。私は今、仕事中。私の仕事は騎士としてお嬢様とこの屋敷を守ることよ」
「・・・し、仕事中?寝ないの?」
「夜勤の者が寝るわけないでしょ」
「え、・・・」
衝撃の事実。あの夜勤の者専用の部屋は、寝るための部屋ではないと?そう思ってよくよくガレスを見れば、確かにきっちりと隊服を着ている。・・・厚い胸板が、引き締まった腰が、長い脚が、いえ、もう、全てがカッコいいわ。もっと言えば、いつもは一つに括っている金茶の髪をそのまま下ろしていて、それが肩から滑り落ちるときの曲線がなんとも色っぽい。
「けほん、けほん」
うっかり見惚れてしまったわ。変態か、私。
えーと、何だっけ。
そうそう、つまり、眠るガレスのベッドに忍び込む、という計画は最初から成り立たなかったということ。なんなら、部屋に忍び込んだ途端、成敗されていた可能性もある。
「・・・・・」
──世間知らずのお嬢様。
一緒に計画を立てたコレットも世間知らずということになる。長年、私の侍女をやっているせいね。申し訳ないわ。
「さあ、話してちょうだい」
無知な自分に深く落ち込んでいると、ガレスが急かしてきた。
「・・・その、特に何がということもなくて、・・・たまにはコレットと親交を深めようと・・・」
真実を話せるわけもなく、適当にもそもそと話す。普段のガレスならこんなふうにしつこく問い詰めてこないのに、なぜだろう、今は私の前に腕を組んで仁王立ちしている。まるで真実を聞くまでは許さないと言わんばかりに。
「あら、コレットから聞いた話と違うわね」
「・・・え?コ、コレットはなんて?」
カップを持つ手が震える。
「私の口から言わせたいの?罪を軽くしてもらいたければ自白するのが一番なのよ?」
私ってば犯罪者なの?問い詰め方がえげつない。な、なんて応えれば・・・。もう、跪いて許しを請いたい。
ただ、固まっていただけなのだが、だんまりの私に痺れを切らしたのか、ため息混じりにガレスが衝撃的なことを言ってきた。
「・・・コレットはね、こう言ったのよ。お嬢様のガウンの紐を解くべし、とね」
「は?」
コ、コ、コレット~~~!!
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