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永遠くん4歳のお話

とわくんたちのお誕生日会

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 ピピッ。

 「37.7度だわ…」

真っ赤な顔をしているとわくんの横で、
お母さんはとても心配な顔。

前日まではとても元気なとわくんだったのですが、
今朝からグッタリしてしまっているんです。


 「お母さん、保育園行く……!」

とわくんは保育園のバッグを肩にかけ帽子を被りました。

 「ちょ、ちょっと!永遠」

お母さんは慌ててとわくんを止めます。

 「お熱の高い子は保育園に行っちゃダメでしょ?」

そっとバッグをおろし、帽子を脱がそうとしたとき
ボソッととわくんは呟きました。

 「保育園行きたいよ。だって今日は……」

涙が溢れたとわくん。

そう。今日は楽しみにしてた、
10月のお誕生日会なんです。


 「行きたいよう。行きたかったよう……」

ちびっこヒーローのとわくんは
お熱のある子が登園しちゃいけないのはもちろん分かっています。

どうしても行きたかった理由。

お祝いしてもらいたいこと。

それよりもワクワクドキドキしていたこと。


あっちゃんにプレゼントを渡したかったんです。

そのプレゼント
それはとわくんが筒状にしてにぎっているものでした。


1枚の画用紙に描いてあるもの。

それは運動会のときにあっちゃんと踊った笑顔があふれている絵。

とわくんの絵はお世辞にも上手いと言えませんが、
これまでの中で一番上手に描けていました。


黄色、ピンク、そらいろの花びらのなかに、
ひとりの男の子と女の子。

あのとわくんなのにめずらしく、
髪の毛は黒で、顔も体もバランスよく描かれているんです。

あっちゃんにあげるものだから大切にていねいにクレヨンで描いたのでしょう。

お母さんは運動会のときの1枚の写真をプリントしてとわくんにあげていました。

とわくんは、それを見ながら描いていたんです。

そんな想いがギュッと詰まったプレゼントを
今日のお誕生日会にあっちゃんへ渡したかった。

とわくんの悔しくて悲しい想いが伝わり、
お母さんも涙がこぼれてしまいます。

 「永遠。残念だけど、今日は保育園休もう。あっちゃんには元気になってからプレゼントしようね」

 「ヒック……うん…」

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