九番姫は獣人王の最愛となる

番外編 「その旋律は永遠に甘く」

お披露目

シメオンは呆れながら、扉の脇へ避けた。
既に割れんばかりの拍手が鳴り響いている。

「おめでとう！！」
「良かったなぁ！！」
「ヴァニラきれーい！！」

二人は祝福の声に手を上げて応えながら、教会の階段を並んで下りていく。
顔見知りの獣人達が両脇から押し寄せて拍手をする。
その人垣に誘導されるまま進めば、前方にテーブルが並ぶ祝賀会の会場が見えてきた。
王城の中庭を利用した祝賀会は昨年からもう四回目だ。
そう、獣人国の王であるシメオンが王妃を迎えてから、不思議なことに立て続けに彼の側近達も番を見つけたのだ。

ヴァニラは傍らに立つ新郎をそっと見る。
何度見てもお可愛らしい。
こんな素敵なお方が私の番だなんて。
貧相な自分には過分な贈り物だ。

「ヴァニラ、そのドレスは胸が開きすぎじゃないか？僕の後ろに隠れて」

それなのにレッサードは要らぬ心配をして、周囲を威嚇する。

「私なんて誰も見てませんよ」
「なんて、は禁止！！」

レッサードは頬を膨らます。
ヴァニラはそれをツンツンと指で突いた。

「わかりました。拗ねないでください旦那様」

レッサードはハッとした表情でヴァニラを見ると、ぎゅう、と抱き寄せた。

「そうか！ヴァニラは僕の奥さんなんだね！嬉しい！早く新居に帰って奥さんを堪能したい！」

ヴァニラはその背中を撫でる。
あ～可愛い可愛い…
私こそ貴方を撫でくりまわしたい。

そうやって抱擁する新婚夫婦の真横に、大きな影が落ちた。