68 / 97
ポッコチーヌ様のお世話係
罠①
しおりを挟む
「ガルシア侯爵に脅されているのですか」
その問いには答えず、ジェレミーはゲルダにナイフを突き付けた。
「王宮内で問題を起こしたら不味いことぐらいジェレミー様はご存知でしょう」
「百も承知だ。安心しろ命は取らない」
ゲルダは後退り、壁に背中をつける。ジェレミーはチラリと廊下の窓に視線を走らせたあと、ゲルダに向き直った。
「お前は俺の言う通りにすれば良いんだ」
「私はもう奴隷ではありません」
「……生意気なんだよ、俺たちに飼われていた身分のくせに口ごたえするな!」
ジェレミーの瞳に狂気が混じり始める。態度も徐々に高圧的に変化していく。ゲルダは鼻からゆっくり息を吸う。ジェレミーとは反比例するように、ゲルダは冷静だった。鼓動が刻むスピードも通常通りだ。
「侯爵から脅迫されていたと証言して頂ければ、お力になれるかもしれません」
「お前の施しなんか要るか!俺とてプライドがある」
「くだらないプライドですね」
「黙れ!」
ゲルダの首筋に刃を当てながら、ジェレミーはスラックスのボタンを外し始める。ゲルダは予想通りの展開に、心の中でため息をついた。
「私を辱めろと侯爵はご希望なのですね。とすれば、どこかでこの様子を見ているお仲間がいらっしゃると」
「お前なんぞ相手にするのも穢らわしいが、仕方ない」
「奥様とお嬢様がお知りになられたら、どう思われますかね」
ジェレミーの手が止まる。苦しげに顔を歪ませ、ゲルダを睨む。スラックスをはだけ、白い下着を覗かせる様は、ただ情けない。
「……それでも、路頭に迷わせる訳にはいかない。こんな不甲斐ない男に嫁いでくれた妻だ。せめて、守らねば、人として生きている価値もない」
家族からの愛に飢え、著しくねじ曲がっていた少年は、愛する人と出会い幸せを得たのだ。細々と暮らしながらも心は満たされていたのだろう。
ところが、侯爵に目をつけられ困窮する状況に追い込まれた。ゲルダを陥れる道具となるために。そうであれば、ゲルダのせいともいえる。
ふと沸いた同情心と罪悪感に、ゲルダは苦笑いを漏らした。
「何が可笑しい!! 」
声を荒らげるジェレミーから目を逸らし、ゲルダは呟いた。
「私も偉くなったものだと思ったんですよ。ほんの十数年前までは生きることに必死で、今の貴方のようにもがいていたのに」
「余裕だな。だが、お前も道連れだ。卑しい癖の抜けない奴隷女が騎士団長の側近など、騎士団の名を穢すだけだ。相応しくないと誰もが思うだろう」
「そして私は職を失うわけですか……良いでしょう。脱げば宜しいですか?」
挑戦的に言うゲルダを見て、ジェレミーは一瞬怯む様子を見せる。しかし、意を決したように唇を噛むと、自らの下着に手をかけ、一気に下げた。黒い下生えの隙間に赤黒いものが覗く。
「咥えろ」
「ほほう。口淫しろと」
「奴隷女は得意だろう」
「残念ながら私は教わる機会がなかったもので、上手くできるか今ひとつ自信が無いのですが」
「咥えるだけで良い……歯はたてるなよ」
成程、咥えているところを誰かに目撃させ、騒ぎ立てるという算段か。ゲルダはジェレミーの股間を凝視する。
「それにしても、ふにゃふにゃじゃないですか。もう少し固くして貰えるとやりやすいのですが」
「うるせえ、さっさとやれ!」
ジェレミーがゲルダの髪を乱暴に掴み、押し下げる。目前に黒々とした陰毛が迫り、ゲルダは息を止めた。
その問いには答えず、ジェレミーはゲルダにナイフを突き付けた。
「王宮内で問題を起こしたら不味いことぐらいジェレミー様はご存知でしょう」
「百も承知だ。安心しろ命は取らない」
ゲルダは後退り、壁に背中をつける。ジェレミーはチラリと廊下の窓に視線を走らせたあと、ゲルダに向き直った。
「お前は俺の言う通りにすれば良いんだ」
「私はもう奴隷ではありません」
「……生意気なんだよ、俺たちに飼われていた身分のくせに口ごたえするな!」
ジェレミーの瞳に狂気が混じり始める。態度も徐々に高圧的に変化していく。ゲルダは鼻からゆっくり息を吸う。ジェレミーとは反比例するように、ゲルダは冷静だった。鼓動が刻むスピードも通常通りだ。
「侯爵から脅迫されていたと証言して頂ければ、お力になれるかもしれません」
「お前の施しなんか要るか!俺とてプライドがある」
「くだらないプライドですね」
「黙れ!」
ゲルダの首筋に刃を当てながら、ジェレミーはスラックスのボタンを外し始める。ゲルダは予想通りの展開に、心の中でため息をついた。
「私を辱めろと侯爵はご希望なのですね。とすれば、どこかでこの様子を見ているお仲間がいらっしゃると」
「お前なんぞ相手にするのも穢らわしいが、仕方ない」
「奥様とお嬢様がお知りになられたら、どう思われますかね」
ジェレミーの手が止まる。苦しげに顔を歪ませ、ゲルダを睨む。スラックスをはだけ、白い下着を覗かせる様は、ただ情けない。
「……それでも、路頭に迷わせる訳にはいかない。こんな不甲斐ない男に嫁いでくれた妻だ。せめて、守らねば、人として生きている価値もない」
家族からの愛に飢え、著しくねじ曲がっていた少年は、愛する人と出会い幸せを得たのだ。細々と暮らしながらも心は満たされていたのだろう。
ところが、侯爵に目をつけられ困窮する状況に追い込まれた。ゲルダを陥れる道具となるために。そうであれば、ゲルダのせいともいえる。
ふと沸いた同情心と罪悪感に、ゲルダは苦笑いを漏らした。
「何が可笑しい!! 」
声を荒らげるジェレミーから目を逸らし、ゲルダは呟いた。
「私も偉くなったものだと思ったんですよ。ほんの十数年前までは生きることに必死で、今の貴方のようにもがいていたのに」
「余裕だな。だが、お前も道連れだ。卑しい癖の抜けない奴隷女が騎士団長の側近など、騎士団の名を穢すだけだ。相応しくないと誰もが思うだろう」
「そして私は職を失うわけですか……良いでしょう。脱げば宜しいですか?」
挑戦的に言うゲルダを見て、ジェレミーは一瞬怯む様子を見せる。しかし、意を決したように唇を噛むと、自らの下着に手をかけ、一気に下げた。黒い下生えの隙間に赤黒いものが覗く。
「咥えろ」
「ほほう。口淫しろと」
「奴隷女は得意だろう」
「残念ながら私は教わる機会がなかったもので、上手くできるか今ひとつ自信が無いのですが」
「咥えるだけで良い……歯はたてるなよ」
成程、咥えているところを誰かに目撃させ、騒ぎ立てるという算段か。ゲルダはジェレミーの股間を凝視する。
「それにしても、ふにゃふにゃじゃないですか。もう少し固くして貰えるとやりやすいのですが」
「うるせえ、さっさとやれ!」
ジェレミーがゲルダの髪を乱暴に掴み、押し下げる。目前に黒々とした陰毛が迫り、ゲルダは息を止めた。
10
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
かわりに王妃になってくれる優しい妹を育てた戦略家の姉
菜っぱ
恋愛
貴族学校卒業の日に第一王子から婚約破棄を言い渡されたエンブレンは、何も言わずに会場を去った。
気品高い貴族の娘であるエンブレンが、なんの文句も言わずに去っていく姿はあまりにも清々しく、その姿に違和感を覚える第一王子だが、早く愛する人と婚姻を結ぼうと急いで王が婚姻時に使う契約の間へ向かう。
姉から婚約者の座を奪った妹のアンジュッテは、嫌な予感を覚えるが……。
全てが計画通り。賢い姉による、生贄仕立て上げ逃亡劇。
第一王子様は妹の事しか見えていないようなので、婚約破棄でも構いませんよ?
新野乃花(大舟)
恋愛
ルメル第一王子は貴族令嬢のサテラとの婚約を果たしていたが、彼は自身の妹であるシンシアの事を盲目的に溺愛していた。それゆえに、シンシアがサテラからいじめられたという話をでっちあげてはルメルに泣きつき、ルメルはサテラの事を叱責するという日々が続いていた。そんなある日、ついにルメルはサテラの事を婚約破棄の上で追放することを決意する。それが自分の王国を崩壊させる第一歩になるとも知らず…。
双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
【完結】妊娠中のお姉様の夫に迫られて、濡れ衣を着せられた
かのん
恋愛
年の近いショーンは、姉のロザリーか妹のライカ、どちらかの婚約者になるだろうと言われていた。
ライカはそんなショーンのことが好きだったけれど、ショーンが好きだったのはロザリーであり自分の恋心を封印して二人を応援するようになる。そして、二人が婚約、その後妊娠が発覚して結婚。
二人を祝福し、自分も前に進もうと思っていたのに、ショーンに迫られその現場を姉に発見されてしまう。
ライカは無実を訴えたが、姉の夫を誘惑したとして濡れ衣を着せられ男爵家へと送られてしまうのだった。
完結済の全21話です。毎日更新していきます。最後まで読んでいただけたら幸いです。 作者かのん
今、姉が婚約破棄されています
毒島醜女
恋愛
「セレスティーナ!君との婚約を破棄させてもらう!」
今、お姉様が婚約破棄を受けています。全く持って無実の罪で。
「自分の妹を虐待するなんて、君は悪魔だ!!」
は、はい?
私がいつ、お姉様に虐待されたって……?
しかも私に抱きついてきた!いやっ!やめて!
この人、おかしくない?
自分の家族を馬鹿にするような男に嫁ぎたいと思う人なんているわけないでしょ!?
継母の心得 〜 番外編 〜
トール
恋愛
継母の心得の番外編のみを投稿しています。
【本編第一部完結済、2023/10/1〜第二部スタート☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる