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ポッコチーヌ様のお世話係

お世話係になりました①

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「団長、そろそろお支度をお願いします」

 ゲルダの声を無視し、ベッドの上で股間を凝視しているマクシミリアンを再び急かす。

「団長」
「今朝の朝立ちも素晴らしい」
「左様でございますか」
「この元気なポッコチーヌをパンツに押し込めるのは可哀想だ」

 くだらんこと言ってないで、パンツを履け。

「それであれば御不浄へ」
「暫し待て」

 愛おしげに勃起した陰茎を愛でる変態を横目で見ながら、ゲルダはため息をつく。
 初日からマクシミリアンの世話係を務め上げたゲルダは、白騎士達から絶賛された。女の身でありながら逃げ出すこともせず素晴らしい、肝が据わってる!と皆、口々に誉めそやす。そして、明日からも頼む、と力強く肩を叩かれたのである。
 最初にゲルダをマクシミリアンのもとに差し向けたのはニコライ副団長だ。おそらくゲルダの生真面目な性格を見抜いていたのだろう。詳しい説明もなくマクシミリアンの部屋に押し込んだ際、彼が垣間見せた表情を思い返す。その目には確かに何かを含んでいたのに、何故あの時易々と従ってしまったのか。
 しかし、今となれば後の祭りだ。
 ゲルダの退路は完全に絶たれた。重大な機密事項に関わった研修生をニコライは逃がさない。白騎士団への配属と引き換えに変態の世話を延々と押し付けられるか、それとも口封じの為に闇へ葬られるか……何せ、奴隷上がりの騎士など、いつ何時居なくなっても誰も困らないのだから……。

 ドンドンッ 

 背後のドアが乱暴にノックされ、続けて間延びした声が聞こえてきた。

「おーい、団長~早くしろ~今日は月イチの陛下見学デーだぞ~」

 ゲルダを嵌めた張本人、副団長のニコライだ。彼は、変わり者のマクシミリアンと唯一意思疎通が出来る貴重な人物でもある。
 指導者として名高いマクシミリアンだが、実際には殆ど機能していない。白騎士団の中においての立ち位置は、せいぜいマスコットかゆるキャラといったところである。そして、そんなマクシミリアンに代わり、団を取り仕切っているのが、ニコライ・ゼッセルその人だ。
 マクシミリアンの返事を待たずにノブが回され、長身の美丈夫が明るいブラウンの長髪を揺らしながら颯爽と現れた。大きな歩幅で真っ直ぐにベットへ向かう。

「おはよう~、おや、今朝のチンポリーナはご機嫌だね~」

 ポッコチーヌです。副団長。

「でも、もうお支度の時間だよ~早く準備しないと国王様から王妃様に報告されちゃうよ」
「む、それは不味い」
「それじゃあ、御不浄で出すもの出してきてね~」

 マクシミリアンはベッドから降りて、便所の扉へ向かう。その剥き出しの引き締まった臀を見ながら、ゲルダはコソッと呟く。

「上手いもんですね。やっぱり世話係は副団長が適任では?」
「俺は忙しいの!自分にしか興味のない変人のお陰で、団長業務のほとんどが俺に集中してるんだから」
「不信任決議案を提出されれば如何ですか」
「いやだよ。俺は面倒だから団長になんてなりたくないし、だとしたら他所の団から堅苦しいのが来ちゃうだろ?そんなら多少忙しくても好きにやれる今の方が良いもん」
「はあ……」

 仮にも王宮のお膝元である中央騎士団だぞ。そんな緩い志で務めて良いものなのか。ゲルダは呆れる。
 着任してすぐさま気付いたが、白騎士団は特殊な場所だった。他の団とはあからさまに雰囲気が違う。訓練や業務をサボっている訳ではないのだが、とにかく生ぬるい。上下関係の境界が曖昧で、制服は乱れまくり行儀も悪い。
 しかし、外面は良い。そして、何故か皆等しくあの変態団長を慕っているようなのだ。
 彼らの献身的で臨機応変な対応により、団長の秘密は、未だ外へ漏れずに済んでいる。

「マクシミリアンはやれば出来る子なんだぜ?団長に就任したのは、何も家柄だけが理由じゃない。しっかりとした実績があったからだしな。それに、アイツは可哀想な奴なんだよ。ここを追い出されたらどこも行くところがないの」
「団長はガルシア家の跡取りでしょう?」
「まあな。けど、あの家は……」

 ニコライは顔を歪め言葉を切ると、ゲルダの肩に手を置いた。

「とにかく、変な奴だけどよろしく頼むよ。白騎士団の連中は皆んなこれでも団長を好いてるんだ。その代わりと言っちゃなんだが、君の評価は最高点をつけておくから」
「それは、ありがたいことですけれど……。しかし、本当に世話係が私のような者で良いのでしょうか。未だに名前も顔も覚えて頂けないようだし、視線さえ合わないのですが」
 
 ゲルダは抱えていた着替えをベッドに置くと、ニコライの隣へ戻る。

「ゲルダの事は聞いていた。能力の高い女騎士だってね。人事の評価会議でも度々話題に上っていたんだぜ?」
「ありがたいことです」
「会えて嬉しいよ。シャンピニ族の騎士は中央にもいるけど、女性は初めてだから。そんな細いのに扱うのはバスターソードなんだろ?」
「ええ。我々一族は剛力なので……」
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