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(17)エルフと電車
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改札を抜けてホームで電車を待っていると、遠くから列車がゆっくりと滑り込んでくるのが見えた。その瞬間、フィリアが目を輝かせて感動したように呟く。
「動く巨大な鉄の塊…!もう一つの大陸では、土や鉄で作られたゴーレムに乗って戦う国があると聞いていましたが、この世界にも…!」
えっ、待て。危うく吹き出しそうになるのをこらえながら、俺は焦る心を隠してなんとか平静を装う。隣で夏菜が「え?何それ?」と不思議そうにフィリアに問いかけてきた。
これはまずい。即座に俺は作り笑いを浮かべながらフォローを入れる。
「いや、フィリアさ、日本のアニメが好きなんだよ。ほら、ロボットとか出てくるやつ、ああいうの見て感動しちゃうらしくてさ。」
夏菜は「ふーん」と納得したような、していないような表情で首を傾げる。それでも特に追及する気はなさそうで、「ちょっと変わってるけど、まあいいか」と軽く笑って切符を手にする。
ひとまず危機は回避できたようだが、心臓がまだドキドキしているのを感じる。頼むからもう少し言葉を選んでくれ、フィリア…。
電車に乗り込み、席についてしばらくすると、列車が静かに揺れながら出発した。窓の外には田舎の風景が広がり、フィリアはその景色に完全に心を奪われている様子だった。窓を指差しては小さく感嘆の声を漏らし、シートに腰掛けながらも落ち着かない様子だ。新しいものに触れるたびにこんなふうにキラキラと目を輝かせる彼女を見ると、少し誇らしいような、なんとも言えない気持ちになる。
一つ目の駅に到着した時、フィリアは不思議そうにホームを見つめ、首を傾げて言った。「駅という場所には、人が誰もいないこともあるのですのね…。さっきの駅にはたくさんの人がいらっしゃったので、それが普通だと思っておりましたわ。」
俺は少し考えながら説明する。「あぁ、ここみたいに利用者の少ない駅は、無人駅って呼ばれてて、駅員さんがいないんだ。南に行くほど、こういう駅が増えていくんだよ。」
フィリアは目を丸くしてからふんわりと微笑む。「そういうことでしたのね。ありがとうございます、ユウトさん。」小さく頷くその礼儀正しい仕草に、なんだか自分がすごく頼りになる人間に見えたんじゃないかと錯覚しそうになる。
その一方で、夏菜が口角をニヤリと上げて言った。「田舎の駅ってさ、たまに動物が電車に乗ってくることがあるんだよ。鹿とか猫とかね。」その冗談めいた調子に、俺は内心でため息をつく。
しかし、その話にフィリアは目を輝かせて食いついた。「え、本当ですの?動物が電車に乗るのですか?」
「いやいや、それはたまたまだって!普通、そんなことはないから!」俺は慌てて訂正するが、フィリアの純粋な驚きが可愛らしくて、つい言葉に熱が入ってしまう。
それでも夏菜は肩をすくめて得意げな笑みを浮かべた。「それがあるんだよねぇ。猫が乗ってきて、そのまま駅長さんになっちゃった駅もあるぐらいなんだから。悠斗、知らないの?」
そう言いながらスマホを取り出し、指を素早く動かして検索を始める。その手慣れた仕草に感心しつつも、どこか呆れた気持ちで見ていると、数秒後、彼女はスマホの画面を俺たちに向けた。
「ほら、これ!三毛猫のミケ駅長。帽子かぶってて、めっちゃ可愛いでしょ?」
画面には、小さな駅員帽を誇らしげにかぶった猫が座っている写真が映っていた。その堂々とした姿に、俺は思わず「これ、本当にいるんだな…。しかも帽子、似合ってるし」とぼそっと感想を漏らす。
夏菜は満足そうに頷いて「でしょ?美駅から電車で東に30分くらい行けば、ミケ駅長に会えるらしいよ。今度時間がある時、一緒に行ってみない?」と言う。まるで小さな冒険を誘うようなその提案に、俺は少し驚きながらも頷いた。
「そんな近くにいるんだな…。確かに面白そうだ。」そう答えると、フィリアが画面に顔を寄せて、目を輝かせながら嬉しそうに言った。
「まぁ、こんなに可愛らしい動物が駅長を務めているのですのね!本当に素敵ですわ。」
その純粋な反応に、思わず俺の口元も緩む。彼女が何でも新鮮に受け止めて感動する姿を見ていると、こっちまで気持ちがほのぼのとしてくる。
電車がゆっくりと動き出し、窓の外に田舎の風景が広がり始める。のどかな景色が流れていくのをぼんやりと眺めていると、フィリアが時折窓を指差し、小さな声で感嘆を漏らしている。その無邪気な反応がなんだか微笑ましい。
やがて列車が小さな町の駅に到着し、俺たちは改札を抜けてバス停へ向かった。夏菜はスマホで道順を確認しながら、「ここからバスで15分くらいだって。ほら、ちゃんと調べてあるから安心してついてきなさいよ!」と自信たっぷりに言う。
「頼もしいな。助かるよ、ありがとう。」俺が素直に感謝を伝えると、夏菜は手をひらひら振りながら「当然でしょ!アタシがいなかったら迷子になってるって!」と得意げに笑った。その言葉に、つい「確かに」と心の中で頷く自分がいる。
フィリアはそんなやり取りを微笑ましそうに見つめ、「お二人は本当に仲が良いのですわね」と小さく呟く。その一言に夏菜は一瞬動きを止め、何か言いかけたようだが結局、「そ、そうかな?」と照れ隠しのように笑った。
次のバスを待ちながら、俺はなんとなく周囲の風景を眺めて過ごす。自然の匂いが漂うのどかな町並みに、少しリラックスした気分になる。
バスが到着し、揺れる車内で窓の外を眺めていると、徐々に海が見え始めた。その青い海と、その先に広がるヨーロッパ風の白い建物が目に入った瞬間、思わず息を飲む。異国を思わせるその景色は、現実から少しだけ離れたような気分にさせてくれる。
「見て見て、フィリアちゃん!あれが今日行く場所だよ!」
夏菜が楽しげに指を差し、フィリアも目を輝かせながら「本当に綺麗ですわ!」と景色に見入っている。その無邪気な反応に、俺もつられて嬉しい気持ちになる。
目的地が近づくにつれ、俺の胸の中にも期待とわずかな緊張が入り混じった。不思議な一日が始まる予感を抱きながら、バスの到着をじっと待っていた。
「動く巨大な鉄の塊…!もう一つの大陸では、土や鉄で作られたゴーレムに乗って戦う国があると聞いていましたが、この世界にも…!」
えっ、待て。危うく吹き出しそうになるのをこらえながら、俺は焦る心を隠してなんとか平静を装う。隣で夏菜が「え?何それ?」と不思議そうにフィリアに問いかけてきた。
これはまずい。即座に俺は作り笑いを浮かべながらフォローを入れる。
「いや、フィリアさ、日本のアニメが好きなんだよ。ほら、ロボットとか出てくるやつ、ああいうの見て感動しちゃうらしくてさ。」
夏菜は「ふーん」と納得したような、していないような表情で首を傾げる。それでも特に追及する気はなさそうで、「ちょっと変わってるけど、まあいいか」と軽く笑って切符を手にする。
ひとまず危機は回避できたようだが、心臓がまだドキドキしているのを感じる。頼むからもう少し言葉を選んでくれ、フィリア…。
電車に乗り込み、席についてしばらくすると、列車が静かに揺れながら出発した。窓の外には田舎の風景が広がり、フィリアはその景色に完全に心を奪われている様子だった。窓を指差しては小さく感嘆の声を漏らし、シートに腰掛けながらも落ち着かない様子だ。新しいものに触れるたびにこんなふうにキラキラと目を輝かせる彼女を見ると、少し誇らしいような、なんとも言えない気持ちになる。
一つ目の駅に到着した時、フィリアは不思議そうにホームを見つめ、首を傾げて言った。「駅という場所には、人が誰もいないこともあるのですのね…。さっきの駅にはたくさんの人がいらっしゃったので、それが普通だと思っておりましたわ。」
俺は少し考えながら説明する。「あぁ、ここみたいに利用者の少ない駅は、無人駅って呼ばれてて、駅員さんがいないんだ。南に行くほど、こういう駅が増えていくんだよ。」
フィリアは目を丸くしてからふんわりと微笑む。「そういうことでしたのね。ありがとうございます、ユウトさん。」小さく頷くその礼儀正しい仕草に、なんだか自分がすごく頼りになる人間に見えたんじゃないかと錯覚しそうになる。
その一方で、夏菜が口角をニヤリと上げて言った。「田舎の駅ってさ、たまに動物が電車に乗ってくることがあるんだよ。鹿とか猫とかね。」その冗談めいた調子に、俺は内心でため息をつく。
しかし、その話にフィリアは目を輝かせて食いついた。「え、本当ですの?動物が電車に乗るのですか?」
「いやいや、それはたまたまだって!普通、そんなことはないから!」俺は慌てて訂正するが、フィリアの純粋な驚きが可愛らしくて、つい言葉に熱が入ってしまう。
それでも夏菜は肩をすくめて得意げな笑みを浮かべた。「それがあるんだよねぇ。猫が乗ってきて、そのまま駅長さんになっちゃった駅もあるぐらいなんだから。悠斗、知らないの?」
そう言いながらスマホを取り出し、指を素早く動かして検索を始める。その手慣れた仕草に感心しつつも、どこか呆れた気持ちで見ていると、数秒後、彼女はスマホの画面を俺たちに向けた。
「ほら、これ!三毛猫のミケ駅長。帽子かぶってて、めっちゃ可愛いでしょ?」
画面には、小さな駅員帽を誇らしげにかぶった猫が座っている写真が映っていた。その堂々とした姿に、俺は思わず「これ、本当にいるんだな…。しかも帽子、似合ってるし」とぼそっと感想を漏らす。
夏菜は満足そうに頷いて「でしょ?美駅から電車で東に30分くらい行けば、ミケ駅長に会えるらしいよ。今度時間がある時、一緒に行ってみない?」と言う。まるで小さな冒険を誘うようなその提案に、俺は少し驚きながらも頷いた。
「そんな近くにいるんだな…。確かに面白そうだ。」そう答えると、フィリアが画面に顔を寄せて、目を輝かせながら嬉しそうに言った。
「まぁ、こんなに可愛らしい動物が駅長を務めているのですのね!本当に素敵ですわ。」
その純粋な反応に、思わず俺の口元も緩む。彼女が何でも新鮮に受け止めて感動する姿を見ていると、こっちまで気持ちがほのぼのとしてくる。
電車がゆっくりと動き出し、窓の外に田舎の風景が広がり始める。のどかな景色が流れていくのをぼんやりと眺めていると、フィリアが時折窓を指差し、小さな声で感嘆を漏らしている。その無邪気な反応がなんだか微笑ましい。
やがて列車が小さな町の駅に到着し、俺たちは改札を抜けてバス停へ向かった。夏菜はスマホで道順を確認しながら、「ここからバスで15分くらいだって。ほら、ちゃんと調べてあるから安心してついてきなさいよ!」と自信たっぷりに言う。
「頼もしいな。助かるよ、ありがとう。」俺が素直に感謝を伝えると、夏菜は手をひらひら振りながら「当然でしょ!アタシがいなかったら迷子になってるって!」と得意げに笑った。その言葉に、つい「確かに」と心の中で頷く自分がいる。
フィリアはそんなやり取りを微笑ましそうに見つめ、「お二人は本当に仲が良いのですわね」と小さく呟く。その一言に夏菜は一瞬動きを止め、何か言いかけたようだが結局、「そ、そうかな?」と照れ隠しのように笑った。
次のバスを待ちながら、俺はなんとなく周囲の風景を眺めて過ごす。自然の匂いが漂うのどかな町並みに、少しリラックスした気分になる。
バスが到着し、揺れる車内で窓の外を眺めていると、徐々に海が見え始めた。その青い海と、その先に広がるヨーロッパ風の白い建物が目に入った瞬間、思わず息を飲む。異国を思わせるその景色は、現実から少しだけ離れたような気分にさせてくれる。
「見て見て、フィリアちゃん!あれが今日行く場所だよ!」
夏菜が楽しげに指を差し、フィリアも目を輝かせながら「本当に綺麗ですわ!」と景色に見入っている。その無邪気な反応に、俺もつられて嬉しい気持ちになる。
目的地が近づくにつれ、俺の胸の中にも期待とわずかな緊張が入り混じった。不思議な一日が始まる予感を抱きながら、バスの到着をじっと待っていた。
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