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女神の正体③

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「っ!俺たちを混乱させようって魂胆だな!ふざけるな!俺たちは硬い絆で結ばれてるんだ!心を揺さぶろう何て無駄だぞ!」

 御門が亜月たちに向かって大声で怒鳴る。その声で我に帰ったサキラも「その通りですわ!」と吠えて、武器を構えて向き直ってきた。

「私たちを仲違いさせようなんて!魔族は何で卑怯なんでしょう!」

 サキラが鋭い目つきでこちらを睨みつけてくる。そんな2人に守られている女神は目に涙を浮かべながら「2人とも!」と感極まっている。でも亜月にとってはそんな仕草も嘘くさくて反吐が出そうだった。

「うぅ、気持ち悪い。嫌い、嫌い!あの人嫌い!」

 とにかく気に入らない。あの女の存在が気に入らない。

 だってあいつは。

 存在してはいけないものだから。



「大丈夫ですわ、アヅキ様。わたくしがあのものの本当の姿を暴いて差し上げます。どうかアヅキ様はライヤードの近くでゆっくり休まれてください。」

 ミィが亜月の肩を抱いてゆっくりとライヤードの近くまで誘導してくれた。

「アヅキ!」

 ライヤードの近くまで来たことを確認した亜月は、体から力が抜けるのを感じた。それをライヤードが抱き止めてくれる。

「大丈夫、アヅキ?辛い?ここは女神に任せようね。」


「誰が女神ですか!その女は魔族でしょう!女神様はこのお方、たった1人なのよ!」

 聖女がライヤードの言葉に反論するが、ライヤードは全く反応せずにぐったりとしている亜月の世話を焼いている。



「…そんな女のどこがいいんだ。何の取り柄もない平凡な女だ!」

「…なんだと?」

 蔑むような御門のセリフに反応したライヤードは、顔を上げて御門を見る。感情が感じられない瞳に、御門は一瞬気圧されたがすぐに気持ちを立て直す。

「はっ!俺のことを好きという理由でちょこちょこと周りをうろちょろされて迷惑だっだんだ。そんな女、醜い魔族にお似合いだ!」

「殺されたいのか?」

「へ?ぐうぅ!!!」

 いつ攻撃されてもいいように、剣を構えていた御門だったが、ライヤードの体が消えたかと思うと、脇腹に激痛が走った。慌てて自分の腹を見ると、ライヤードの手がそこを貫通していた。

「ぐあぁぉぁ!!」

「御門!」

「サキラ!早く御門を治して!」

 倒れ込む御門にサキラが駆け寄る。女神も顔を青くして指示を出す。







「正体を表しなさい。愚かな『反女神』よ。」


「きゃあああぁぁああ!!!!」

 その隙をついて、ミィが女神の懐に入り込み、美しい白銀色の光を女神の体に叩き込んだ。
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