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魔王の本気②
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「ライヤードさん、待って!」
「待たない。」
「ひゃっ!」
ライヤードさんに押し倒されて、こめかみに優しくキスを落とされる。抵抗しようにも両手はベッドに縫い付けられてしまっていて、満足に体を動かすこともできない。それに加えて、甘い甘い言葉が私の耳に囁かれる。
「可愛いね、アヅキ。本当のことを言うとね、僕は良いやつなんかじゃないよ。聖女の部屋で君を初めて見た時からずっと僕のものにしたいと思ってたんだ。」
「あ…。」
今度は頬にキス。
「君が聖女だと思った時には絶望したよ。勇者と聖女は恋仲だって聞いてたからね。でも、アヅキは聖女じゃなかった。まぁ、勇者とは付き合っていたのかもしれないけど、あいつは君を殺そうとした。…そんな男にもう未練はないだろ?」
「ひゃん!」
今度は首筋に。
「アヅキがあいつらの攻撃で傷付いた時、初めて聖女たちを殺してやりたいと思ったよ。アヅキの治療が優先だったからやめたけどね。…勇者より僕の方がずっと男前だろ?」
「そ、それは…!」
即座に反論するできなかった。確かにかっこよさならライヤードさんの方が絶対に勝っている。そんな私の迷いを感じたのか、ライヤードさんはにっこりと笑う。
「ふふ、僕のことかっこいいと思っているくれてるんだね?…今はそれだけでいいよ。すぐに僕のことを好きになってくれるとも、奥さんになってくれるとも思ってないからね。この魔王城でアヅキをドロドロに甘やかして、僕だけしか見えないようにしてやるから覚悟してね。」
「ん!」
最後に額へのキス。ライヤードさんのせいで私の体はすっかりグズグズにとろけてしまった。
「ふふ、可愛いよアヅキ。とにかく少なくとも傷が治るまではこの部屋から出ることは禁止だ。僕の言うこと、聞けるよね?」
ライヤードさんが笑顔で念押ししてくる。その顔は笑っているのに有無を言わさぬ迫力があって、私は何度も頷いた。
「いい子だねアヅキ。…じゃあもっと僕と親睦を深めてもらおうかな。」
「あぅ…。」
至近距離で見つめられ、あと少しでお互いの唇が当たりそうになる。
「アヅキ…。」
ゆっくりと近付いてくるライヤードさんの整った顔。
「っ、だめぇーーー!」
「ぎゃっ!」
ギリギリで正気を取り戻し、私はライヤードさんの頬をベチンと叩いてキスを阻止した。頬から鈍い音をさせたライヤードさんは、ベッドに倒れ込んでしまう。
「わ、私は付き合ってもいない人とキスするような軽い女じゃないです!ばっ、馬鹿にしないで!」
拳を握りしめて訴える。ライヤードさんは叩かれた頬を抑えたながら、呆けた顔で私を見ていた。
「助けてくれたことは感謝してます。でもだからといってあなたのことをそんなに簡単に好きにはならないです!」
「…勇者なことがまだ好きなのかい?」
ボソリと小さな声で聞いてくるライヤードさんの言葉に首を横に振った。
「確かに御門君のことはまだ完全に吹っ切れた訳じゃないです。でも彼への恋心はもうなくなりました。…彼がサキラさんを選ぶと言うのなら、もう私が要らないと言うのなら受け入れます。」
「…どうしてそこまで彼のことを。」
「たとえ酷いことをされても、御門君が小さい頃に私を助けてくれたのは本当だから。御門君が持っていた本当の正義感に、私は人として惚れていたんです。…それが変な方向に向いてしまってるみたいだけど。」
自分の正義に従って行動し、たとえどんな困難であっても怯まず進んでいく。彼のそんな所を尊敬していた。
「もう私の言うことは聞いてくれない。でも、きっとサキラさんが私よりもずっと上手に彼を導いてくれるはずだから。私は彼らを応援しようと思います。」
「殺されそうになっても?」
「はい。」
本当にもういいのだ。彼と過ごした数年間は大変だったけど幸せだった。それに。
「もう誰かのお世話をしなくていいんですから!!!」
大変だった。彼をサポートするのは。自分のことよりも彼のことが優先。さまざまなものをあきらめてきた。
「これからはわたしの好きなことを好きなようにするんです!誰かに依存して尽くす人生はもうやめます!男なんてこりごりさです!!!!」
どたらかと言うとこちらが本音だ。もう誰かに振り回されるのはごめんだ。私も自分の心に従って自由に生きるのだ。ラッキーなことに、ここは異世界。全て一から始められる。
「私はもう誰かのサポートをするのはごめんなんです!!!」
ライヤードさんの目を見て宣言してやった。
「はぁ、強いアヅキもとっても素敵だ。惚れ直したよ。もちろん、アヅキの好きなようにいきてくれていい。今度は振り回されるんじゃなくて僕を振り回してくれ。振り回す恋を僕としてくれないかな?」
「人の話聞いてます?私はもう恋愛はしないって言ってるんです!好きに生きるんです!」
「うんうん、アヅキの好きにしてくれていいよ。んで僕も僕の好きなようにするから。」
魔王の執着、舐めないでよね?
ペロリと唇を舐めるライヤードさんの姿に頭がクラクラしてしまった。
「待たない。」
「ひゃっ!」
ライヤードさんに押し倒されて、こめかみに優しくキスを落とされる。抵抗しようにも両手はベッドに縫い付けられてしまっていて、満足に体を動かすこともできない。それに加えて、甘い甘い言葉が私の耳に囁かれる。
「可愛いね、アヅキ。本当のことを言うとね、僕は良いやつなんかじゃないよ。聖女の部屋で君を初めて見た時からずっと僕のものにしたいと思ってたんだ。」
「あ…。」
今度は頬にキス。
「君が聖女だと思った時には絶望したよ。勇者と聖女は恋仲だって聞いてたからね。でも、アヅキは聖女じゃなかった。まぁ、勇者とは付き合っていたのかもしれないけど、あいつは君を殺そうとした。…そんな男にもう未練はないだろ?」
「ひゃん!」
今度は首筋に。
「アヅキがあいつらの攻撃で傷付いた時、初めて聖女たちを殺してやりたいと思ったよ。アヅキの治療が優先だったからやめたけどね。…勇者より僕の方がずっと男前だろ?」
「そ、それは…!」
即座に反論するできなかった。確かにかっこよさならライヤードさんの方が絶対に勝っている。そんな私の迷いを感じたのか、ライヤードさんはにっこりと笑う。
「ふふ、僕のことかっこいいと思っているくれてるんだね?…今はそれだけでいいよ。すぐに僕のことを好きになってくれるとも、奥さんになってくれるとも思ってないからね。この魔王城でアヅキをドロドロに甘やかして、僕だけしか見えないようにしてやるから覚悟してね。」
「ん!」
最後に額へのキス。ライヤードさんのせいで私の体はすっかりグズグズにとろけてしまった。
「ふふ、可愛いよアヅキ。とにかく少なくとも傷が治るまではこの部屋から出ることは禁止だ。僕の言うこと、聞けるよね?」
ライヤードさんが笑顔で念押ししてくる。その顔は笑っているのに有無を言わさぬ迫力があって、私は何度も頷いた。
「いい子だねアヅキ。…じゃあもっと僕と親睦を深めてもらおうかな。」
「あぅ…。」
至近距離で見つめられ、あと少しでお互いの唇が当たりそうになる。
「アヅキ…。」
ゆっくりと近付いてくるライヤードさんの整った顔。
「っ、だめぇーーー!」
「ぎゃっ!」
ギリギリで正気を取り戻し、私はライヤードさんの頬をベチンと叩いてキスを阻止した。頬から鈍い音をさせたライヤードさんは、ベッドに倒れ込んでしまう。
「わ、私は付き合ってもいない人とキスするような軽い女じゃないです!ばっ、馬鹿にしないで!」
拳を握りしめて訴える。ライヤードさんは叩かれた頬を抑えたながら、呆けた顔で私を見ていた。
「助けてくれたことは感謝してます。でもだからといってあなたのことをそんなに簡単に好きにはならないです!」
「…勇者なことがまだ好きなのかい?」
ボソリと小さな声で聞いてくるライヤードさんの言葉に首を横に振った。
「確かに御門君のことはまだ完全に吹っ切れた訳じゃないです。でも彼への恋心はもうなくなりました。…彼がサキラさんを選ぶと言うのなら、もう私が要らないと言うのなら受け入れます。」
「…どうしてそこまで彼のことを。」
「たとえ酷いことをされても、御門君が小さい頃に私を助けてくれたのは本当だから。御門君が持っていた本当の正義感に、私は人として惚れていたんです。…それが変な方向に向いてしまってるみたいだけど。」
自分の正義に従って行動し、たとえどんな困難であっても怯まず進んでいく。彼のそんな所を尊敬していた。
「もう私の言うことは聞いてくれない。でも、きっとサキラさんが私よりもずっと上手に彼を導いてくれるはずだから。私は彼らを応援しようと思います。」
「殺されそうになっても?」
「はい。」
本当にもういいのだ。彼と過ごした数年間は大変だったけど幸せだった。それに。
「もう誰かのお世話をしなくていいんですから!!!」
大変だった。彼をサポートするのは。自分のことよりも彼のことが優先。さまざまなものをあきらめてきた。
「これからはわたしの好きなことを好きなようにするんです!誰かに依存して尽くす人生はもうやめます!男なんてこりごりさです!!!!」
どたらかと言うとこちらが本音だ。もう誰かに振り回されるのはごめんだ。私も自分の心に従って自由に生きるのだ。ラッキーなことに、ここは異世界。全て一から始められる。
「私はもう誰かのサポートをするのはごめんなんです!!!」
ライヤードさんの目を見て宣言してやった。
「はぁ、強いアヅキもとっても素敵だ。惚れ直したよ。もちろん、アヅキの好きなようにいきてくれていい。今度は振り回されるんじゃなくて僕を振り回してくれ。振り回す恋を僕としてくれないかな?」
「人の話聞いてます?私はもう恋愛はしないって言ってるんです!好きに生きるんです!」
「うんうん、アヅキの好きにしてくれていいよ。んで僕も僕の好きなようにするから。」
魔王の執着、舐めないでよね?
ペロリと唇を舐めるライヤードさんの姿に頭がクラクラしてしまった。
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