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幼馴染襲来編④
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幼馴染襲来編④
「おい、勝手に食うな。」
「これ美味しいぞ、エールカ。一緒に食べよう。」
「話を聞け、話を。」
カイはアウラの話を無視しているのかそもそも聞いていないのか分からないが、エールカに食べ物を勧めてくる。自分の隣をポンポンとたたいて、座るように促してきた。起き立てでお腹も空いているので、エールカはありがたく座らせてもらうことにした。
エールカが隣に座ると、カイは嬉しそうにあれもこれもと取り分けてくれた。カイが人の話を聞かないのは前からのことなので、エールカは気にせずに食事に集中することにした。
「はぁ…どうなってんだ、うちの屋敷の警備はよぉ…。」
立膝をついて不機嫌そうに鼻を鳴らすアウラ。徳利を手に取って、中に入っている酒を杯に注ぐと、グイッと一気に飲み干した。スイもテーブルの前に座り、アウラとともに酒を飲み始める。エールカとカイは果実水を飲む。
「私が屋敷に入れるんだから、カイだって入れるに決まってるでしょ。というより、どうしてあなたがここにいるのかしら?あなたは村で大人しくしている約束だったはずよ?これだから人の言うことを聞けない躾のなってない畜生は困るのよね。」
「今すぐ殺してやってもいいんだぞ?」
カイが無表情のまま、スイに視線を向ける。「やれるものならやってみなさいよ」とスイが煽る。エールカは食事の手を止めて「やめなさい!」と一喝した。
アウラとスイと同様、スイとカイもよく喧嘩する。2人いわく「天敵」らしい。そして当然、アウラとカイもよく言い合いをしている。しかしよく喧嘩する割にはいざという時に抜群の連携で協力し合うので、正直エールカには仲がいいのか悪いのか分からない。きっと喧嘩するほど仲がいいというやつだろう。
「それで?何でエールカはそんなに痩せてるんだ?俺のエールカが少しでも減るなんてことは許されない。誰がエールカをそんなふうにしたんだ?大丈夫、心配するな、俺が殺してきてやる。」
「落ち着いて!」
手に肉を持ちながら、カイが息継ぎもなしに物騒なことを言ってくる。カイが1番のエールカ過激派であることを知っているアウラとスイは苦笑いしながら2人のやりとりを見守っている。
「エールカ。俺のエールカ。俺から離れたことさえ許し難いのに、どうしてそんなに傷ついている?やはり村から出すべきじゃなかったな。エールカはすぐに飛んでいってしまうから、囲っておくのがいいかもしれない。そうだ、そうしよう。」
「なかなかいい考えね。」
「同意しないで、スイ!」
にっこりと笑って頷くスイに、エールカは悲鳴をあげる。囲われるなんて冗談じゃない。
幼馴染に物騒なことを言われるのは、これで3回目なので少しは慣れたものの、1番過激なことを言われたので動揺してしまう。
「エールカがどうしても村を救いたいって言うから、俺頑張った。エールカが見つけた植物の文献、探し出して試験栽培まで漕ぎつけたし。だから、エールカ。ご褒美が欲しい。」
「え、あ、ご、ご褒美?」
カイがずいっとエールカの方へ擦り寄ってくる。あまりの近さにエールカが後ろに下がると、カイがさらに距離は詰めてくる。とうとう壁際まで追い込まれて逃げ場がなくなってしまった。
「エールカ…。」
「ひゃっ!」
カイがエールカの頭を囲うように両手を壁につく。お互いの鼻がつくような至近距離に、エールカは頬を赤くする。その様子を見て、カイが珍しくクスリと笑った。
「可愛いな、エールカ。照れてるのか?俺にこんなことされて照れてるんだな?可愛いな。エールカ、ご褒美だ。ご褒美はお前がいい。」
「私?」
「あぁ。お前を俺にくれ。前に約束してたのに、お前は結局先に行ってしまった。その約束を今こそ果たしてくれ。」
カイとそんな約束をしただろうか。全く身に覚えがないが、カイが嘘をついたことなどない。自分が忘れてしまっているのだろうか。
「なぁ、エールカぁ。頼む。」
「あ…。」
懇願するカイがまるで小動物のように見える。前に約束していたのであれば、それは守らないといけないのではないか。カイのものになるというのが、具体的にどういうことかはよく分からないが、頷いておいた方がいいのかもしれない。
「おおっと。頷くなよ、エールカ。縛りになる。カイ、お前も抜け駆けするんじゃねーよ、殺されたいのか?」
「チッ。邪魔するな、龍風情が。皮を剥いで剥製にしてやろうか?」
カイの頭にアウラによる強烈な手刀が振り下ろされるが、カイはギリギリでそれを避ける。またも大変険悪なムードになりそうだったので、エールカはその場から逃げ出して、スイの隣へと収まった。
「あの馬鹿2人は放っておいて、美味しいご飯いっぱい食べましょ。今日は飲みまくるわよー!」
「おー!」
ガルガルと威嚇しあっているアウラとカイを置いて、2人は美味しい食事に舌鼓を打つのだった。
幼馴染side
「エールカは寝たのか?」
「えぇ。いっぱいはしゃいでもうぐっすりよ。可愛らしい…。」
布団で可愛らしい寝息を立てているエールカの頭を優しく撫でると、スイは立ち上がってテーブルで酒を飲んでいるアウラとカイのもとに戻った。エールカといる時は合わせて果実水を飲んでいるカイは、すでに酒に切り替えている。
「それで?調べてあるんでしょう?」
カイに酒をついでもらったスイがそれをあおった後、目を細めてアウラに尋ねる。アウラはカカッと笑った後、「当たり前だ」と真顔になってテーブルに束ねた書類を放り投げる。そこには、学校でエールカに起こったこと、そして、エールカにいじめを行った生徒の情報が事細かに記されていた。
「国1番のエリート校っていうから、ある程度は大丈夫かと思って送り出したんだけどなぁ。こんなに治安が悪いとは。」
「もう必要ないだろう?俺がぶっ壊していいか?」
カイの瞳孔が縦に伸び、真紅に染まる。今にも外に出ていきそうなカイをアウラが半笑いで止めた。
「ちょっと面白いことになってきやがった。もうちょっと調べた方がいい。もしかしたら、前世の因縁まで解消できるかもしれねーぞぉ?」
「あぁ?なんだと?」
アウラの言葉に、カイが苛立たしげに声をあげる。
「エールカを虐めてた雑魚どもは、まぁどうでもいい。お前らの好きなようにやれ。俺はエールカに酷いことするなって言われてるから社会的に殺すだけで済ませてやるけどな。」
「私はまぁ、いろいろやりようはあるわ。」
酒をガバガバ飲みながら、スイが妖艶に微笑む。カイは「早く続きを話せ、木偶の棒!」とテーブルをコツコツと指で叩いている。エールカの前では決して見せない凶悪な雰囲気に、アウラはカラカラと笑う。
「公爵の女の動きがおかしい。気持ち悪いぐらい賢く、スムーズに暗躍してやがる。エールカを追い詰めたのはこいつだ。」
「殺してくる。」
「待て待て待て!」
立ち上がったカイをアウラが無理やり座らせる。
「人の話を最後まで聞け。名前はミシュレオン・アグノス。全く目立つ娘ではなかったが、ここ数年、動きが派手になり、時期国王の婚約者にまで上り詰めた。調べたところによると、前は随分と地味でおとなしい女だったらしい。近しいものは人が変わったようだと恐れてるものもいるそうだ。」
「ほぉ。続けろ。」
カイがニヤリと笑う。
「何でも1人でブツブツと『邪魔な光だ』とかなんとか呟いている姿も目撃されている。調べてみる価値はあるだろう?」
ミシュレオンの情報が記された書類をアウラはカイに投げ渡す。受け取ったカイは目を通すと、手のひらから炎を出して一瞬で燃やし尽くした。
「俺が調べる。お前らは好きにしてろ。」
「へぇ、珍しいわね。あなたがエールカのそばにいないなんて。明日は嵐でも来るのかしら?」
「黙ってろ男女。エールカからのご褒美のためだ。今度は絶対に俺のものになってもらう。」
「誰があんたのものになるのよ。」とスイが反論するも、カイの姿は煙のように掻き消えてしまった。小さく舌打ちをしたスイは杯に残った酒を飲み干すと、グンと伸びをして立ち上がる。
「行くのか?」
ゆっくり酒を飲み続けているアウラが聞くと、スイが頷く。
「雑魚どもを掃除してくるわ。あとで邪魔になっても面倒臭いし。朝には戻ってくるから朝食は用意しといて。」
カイと同様にスイの姿が掻き消える。
「やりすぎねーといいがなぁ。」
アウラが喉を鳴らした。
「あれ?カイは?」
翌朝、起きて朝食を食べようとすると、エールカはカイだけがいないことに気付いた。くあっと大きなあくびをしたアウラが「あいつは急用で村に戻った」と教えてくれた。久しぶりに3人と一緒にいられると思ったので、少し残念だったが「用事が終わればすぐに戻ってくる」と言われ、安心した。
「カイの心配をしている場合じゃないわよ?エールカにはしばらくこっちで療養してもらうことになってるんだから。さんざん可愛がって甘やかしてあげるんだから覚悟しなさいね?」
朝から輝かんばかりに美しいスイに至近距離で甘く囁かれると、なんだか変な気持ちになってくる。慌てて顔を押しやって「早く村に帰らないと父さんと母さんも心配するし!」と主張した。しかし、「それならエールカの両親に許可はとってある。疲れてるだろうからしばらく、ゆっくりしてこいってな。」
アウラがニヤリと笑う。
「そうよ。しばらくはこの屋敷で私たちと過ごしましょうね。元のエールカの体重に戻るまでは、屋敷から出られないと思ってちょうだい。」
「ひぇ…。」
にっこりと笑うスイが恐ろしい。しかし、こうなっては絶対に幼馴染たちが言うことを曲げないということも分かっているので、エールカは大人しく頷く。
「いい子…。さぁ、朝ご飯もしっかり食べてちょうだい。お昼は外の庭園でお弁当を食べましょうね。夜は庭園を見ながら色々つまめるものを用意するわ。」
スイがウキウキと楽しそうに話しながら、エールカの頭を優しく撫で続ける。その気持ちよさに、エールカは思わずスイの手に頬をスリっと寄せた。スイの動きがピタリと止まったかと思うと、突然ぎゅっと抱き寄せられる。
「…そんな可愛いことしないでちょうだい。これでも我慢してるのよ、エールカ。」
「ひゃあ!」
耳元で囁かれて、ビクッと身体が震える。
「あーもう!このままベッドに連れ込んじゃおうかしら!大丈夫、私に任せてくれれば天国に連れてってあげるから!」
「黙れ、淫獣。」
「きゃあ!」
アウラの手刀が、スイの頭に綺麗に決まった。痛い痛いとうめいて床を転がっているスイを尻目に、アウラがエールカの頭を撫でる。
「気をつけろ、エールカ。スイもカイも隙あらばお前を狙ってるからな。気を抜かずに、変なことをされそうになったら股間を蹴り上げろ。…俺たちはお前が大人になるまでは手を出さないようしようって決めてたからな。あと少しで大人になるお前に、2人ともセーブが効かなくなってんだよ。」
「自分は関係ありませんって顔してるんじゃないわよ!あんただって今すぐものにしたいくせに!」
「まぁ、否定はしねーよ。でも、エールカ小せえからなぁ。もう少し大きくなってくれた方が俺としても安心なんだ。せめて体重ぐらいは元に戻せよ。」
俺はやることがあるから、あんまり一緒にいられねーけど、夜には必ず帰ってくる。そう言ってアウラは立ち上がる。そうか、カイに続いてアウラまでいなくなってしまうのか。そう思うと少し寂しくなってしまい、エールカは眉を下げた。それに気づいたアウラは、エールカの所まで引き返し、そのつむじに優しくキスをする。
「あー、行きたくねぇなぁ。スイ、変われよ。」
「お断りよ。さぁ、エールカ。屋敷にいるうちにピッカピカに磨き上げるわよ。覚悟してちょうだいね!」
鼻息荒く迫ってくるスイに、エールカは引き気味に笑う。そんな2人を見て微笑んだアウラは「いい子で待ってろよ」とエールカに告げ、今度こそ部屋から出て行ったのだった。
「おい、勝手に食うな。」
「これ美味しいぞ、エールカ。一緒に食べよう。」
「話を聞け、話を。」
カイはアウラの話を無視しているのかそもそも聞いていないのか分からないが、エールカに食べ物を勧めてくる。自分の隣をポンポンとたたいて、座るように促してきた。起き立てでお腹も空いているので、エールカはありがたく座らせてもらうことにした。
エールカが隣に座ると、カイは嬉しそうにあれもこれもと取り分けてくれた。カイが人の話を聞かないのは前からのことなので、エールカは気にせずに食事に集中することにした。
「はぁ…どうなってんだ、うちの屋敷の警備はよぉ…。」
立膝をついて不機嫌そうに鼻を鳴らすアウラ。徳利を手に取って、中に入っている酒を杯に注ぐと、グイッと一気に飲み干した。スイもテーブルの前に座り、アウラとともに酒を飲み始める。エールカとカイは果実水を飲む。
「私が屋敷に入れるんだから、カイだって入れるに決まってるでしょ。というより、どうしてあなたがここにいるのかしら?あなたは村で大人しくしている約束だったはずよ?これだから人の言うことを聞けない躾のなってない畜生は困るのよね。」
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カイが無表情のまま、スイに視線を向ける。「やれるものならやってみなさいよ」とスイが煽る。エールカは食事の手を止めて「やめなさい!」と一喝した。
アウラとスイと同様、スイとカイもよく喧嘩する。2人いわく「天敵」らしい。そして当然、アウラとカイもよく言い合いをしている。しかしよく喧嘩する割にはいざという時に抜群の連携で協力し合うので、正直エールカには仲がいいのか悪いのか分からない。きっと喧嘩するほど仲がいいというやつだろう。
「それで?何でエールカはそんなに痩せてるんだ?俺のエールカが少しでも減るなんてことは許されない。誰がエールカをそんなふうにしたんだ?大丈夫、心配するな、俺が殺してきてやる。」
「落ち着いて!」
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「なかなかいい考えね。」
「同意しないで、スイ!」
にっこりと笑って頷くスイに、エールカは悲鳴をあげる。囲われるなんて冗談じゃない。
幼馴染に物騒なことを言われるのは、これで3回目なので少しは慣れたものの、1番過激なことを言われたので動揺してしまう。
「エールカがどうしても村を救いたいって言うから、俺頑張った。エールカが見つけた植物の文献、探し出して試験栽培まで漕ぎつけたし。だから、エールカ。ご褒美が欲しい。」
「え、あ、ご、ご褒美?」
カイがずいっとエールカの方へ擦り寄ってくる。あまりの近さにエールカが後ろに下がると、カイがさらに距離は詰めてくる。とうとう壁際まで追い込まれて逃げ場がなくなってしまった。
「エールカ…。」
「ひゃっ!」
カイがエールカの頭を囲うように両手を壁につく。お互いの鼻がつくような至近距離に、エールカは頬を赤くする。その様子を見て、カイが珍しくクスリと笑った。
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「チッ。邪魔するな、龍風情が。皮を剥いで剥製にしてやろうか?」
カイの頭にアウラによる強烈な手刀が振り下ろされるが、カイはギリギリでそれを避ける。またも大変険悪なムードになりそうだったので、エールカはその場から逃げ出して、スイの隣へと収まった。
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「おー!」
ガルガルと威嚇しあっているアウラとカイを置いて、2人は美味しい食事に舌鼓を打つのだった。
幼馴染side
「エールカは寝たのか?」
「えぇ。いっぱいはしゃいでもうぐっすりよ。可愛らしい…。」
布団で可愛らしい寝息を立てているエールカの頭を優しく撫でると、スイは立ち上がってテーブルで酒を飲んでいるアウラとカイのもとに戻った。エールカといる時は合わせて果実水を飲んでいるカイは、すでに酒に切り替えている。
「それで?調べてあるんでしょう?」
カイに酒をついでもらったスイがそれをあおった後、目を細めてアウラに尋ねる。アウラはカカッと笑った後、「当たり前だ」と真顔になってテーブルに束ねた書類を放り投げる。そこには、学校でエールカに起こったこと、そして、エールカにいじめを行った生徒の情報が事細かに記されていた。
「国1番のエリート校っていうから、ある程度は大丈夫かと思って送り出したんだけどなぁ。こんなに治安が悪いとは。」
「もう必要ないだろう?俺がぶっ壊していいか?」
カイの瞳孔が縦に伸び、真紅に染まる。今にも外に出ていきそうなカイをアウラが半笑いで止めた。
「ちょっと面白いことになってきやがった。もうちょっと調べた方がいい。もしかしたら、前世の因縁まで解消できるかもしれねーぞぉ?」
「あぁ?なんだと?」
アウラの言葉に、カイが苛立たしげに声をあげる。
「エールカを虐めてた雑魚どもは、まぁどうでもいい。お前らの好きなようにやれ。俺はエールカに酷いことするなって言われてるから社会的に殺すだけで済ませてやるけどな。」
「私はまぁ、いろいろやりようはあるわ。」
酒をガバガバ飲みながら、スイが妖艶に微笑む。カイは「早く続きを話せ、木偶の棒!」とテーブルをコツコツと指で叩いている。エールカの前では決して見せない凶悪な雰囲気に、アウラはカラカラと笑う。
「公爵の女の動きがおかしい。気持ち悪いぐらい賢く、スムーズに暗躍してやがる。エールカを追い詰めたのはこいつだ。」
「殺してくる。」
「待て待て待て!」
立ち上がったカイをアウラが無理やり座らせる。
「人の話を最後まで聞け。名前はミシュレオン・アグノス。全く目立つ娘ではなかったが、ここ数年、動きが派手になり、時期国王の婚約者にまで上り詰めた。調べたところによると、前は随分と地味でおとなしい女だったらしい。近しいものは人が変わったようだと恐れてるものもいるそうだ。」
「ほぉ。続けろ。」
カイがニヤリと笑う。
「何でも1人でブツブツと『邪魔な光だ』とかなんとか呟いている姿も目撃されている。調べてみる価値はあるだろう?」
ミシュレオンの情報が記された書類をアウラはカイに投げ渡す。受け取ったカイは目を通すと、手のひらから炎を出して一瞬で燃やし尽くした。
「俺が調べる。お前らは好きにしてろ。」
「へぇ、珍しいわね。あなたがエールカのそばにいないなんて。明日は嵐でも来るのかしら?」
「黙ってろ男女。エールカからのご褒美のためだ。今度は絶対に俺のものになってもらう。」
「誰があんたのものになるのよ。」とスイが反論するも、カイの姿は煙のように掻き消えてしまった。小さく舌打ちをしたスイは杯に残った酒を飲み干すと、グンと伸びをして立ち上がる。
「行くのか?」
ゆっくり酒を飲み続けているアウラが聞くと、スイが頷く。
「雑魚どもを掃除してくるわ。あとで邪魔になっても面倒臭いし。朝には戻ってくるから朝食は用意しといて。」
カイと同様にスイの姿が掻き消える。
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翌朝、起きて朝食を食べようとすると、エールカはカイだけがいないことに気付いた。くあっと大きなあくびをしたアウラが「あいつは急用で村に戻った」と教えてくれた。久しぶりに3人と一緒にいられると思ったので、少し残念だったが「用事が終わればすぐに戻ってくる」と言われ、安心した。
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「気をつけろ、エールカ。スイもカイも隙あらばお前を狙ってるからな。気を抜かずに、変なことをされそうになったら股間を蹴り上げろ。…俺たちはお前が大人になるまでは手を出さないようしようって決めてたからな。あと少しで大人になるお前に、2人ともセーブが効かなくなってんだよ。」
「自分は関係ありませんって顔してるんじゃないわよ!あんただって今すぐものにしたいくせに!」
「まぁ、否定はしねーよ。でも、エールカ小せえからなぁ。もう少し大きくなってくれた方が俺としても安心なんだ。せめて体重ぐらいは元に戻せよ。」
俺はやることがあるから、あんまり一緒にいられねーけど、夜には必ず帰ってくる。そう言ってアウラは立ち上がる。そうか、カイに続いてアウラまでいなくなってしまうのか。そう思うと少し寂しくなってしまい、エールカは眉を下げた。それに気づいたアウラは、エールカの所まで引き返し、そのつむじに優しくキスをする。
「あー、行きたくねぇなぁ。スイ、変われよ。」
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