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第二部

第17話

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「小鳥遊は俺が責任を持って家まで送る。…山口はそのひっつき虫2人をなんとかしてやってくれ。」

「…分かりました。」

 四宮部長がクスッと笑いながら小鳥遊君とともにタクシーに乗り込む。小鳥遊君も「またお礼させてください!」と言って四宮部長の隣に座った。
 手を振って2人を見送った後、右と左にそれぞれくっついている瀬尾君と三目君を眺めた。

「えーっと、ちょっと恥ずかしいんだけど離れてくれる?」

「「…。」」

 2人ともだんまりを決め込んでいるようだ。

「えーっと、どっかお店でも入る?三目君お腹減ってるんじゃない?確かこの近くにおすすめの居酒屋が…。」

「飯じゃなくて幸尚さんがいい。」

「へ?」

 三目君がガバッと顔を上げる。

「ひっ!」

「幸尚さん食べたい。かっこよすぎて惚れ直した。幸尚さんをいっぱい感じたい。」

「ちょ、ちょっと三目君。」

「ホテル行きましょう、幸尚さん。俺、もう我慢できない。」

「ひゃあ!」

 腰を抱かれて口説かれ、悲鳴を上げてしまう。右を見ると、そこには獣のような目をした瀬尾君が息を荒くしていた。

「な、なんで興奮してるんだ!抑制剤飲んだだろ!」

「Ωのフェロモンの抑制剤でしょ?俺は今あんたに欲情してるんだ。…今すぐヤりたい。」

「ひぃん!」

 耳元で甘く囁かれて体が震える。

「ね?いいでしょ、幸尚さん。」

「お願いします。…あなただけの俺になりますから。もうほかのΩなんかに目移りしません。あんなこと言われたら、もう我慢なんかできませんよ!」

「わ、分かった。分かったら!とりあえずここから離れよう。みんな、見てるからぁ!」

「瀬尾、タクシー呼べ。」

「もう呼んでる。」

 2人からのいやらしい視線に体が熱くなってしまう。簡単な自分の体が嫌になるが、仕方ない。こんな極上の男たちに求められて体が喜ばない訳がないのだ。

「ほら、タクシー来ました。乗りますよ、幸尚さん。」

「ん。」

 2人に手を引かれてタクシーに乗り込む。瀬尾君が有名なホテルの名前を運転手に告げ、車は動き出す。

「や、やだぁ!」

「ほら、大きい声出すと運転手に聞こえますよ?それとも見られたい?」

「ち、違う!」

 そしてホテルに着く間、ずっと2人に耳元で甘く責められ続けた。





「ま、待って!シャワーを!」

「待てない。」

「うわっ!」

 ホテルに着いて、躊躇いなくスイートをとってくれた2人は、部屋に入ってすぐに自分をベッドに押し倒す。

「んぅ!」

 そして瀬尾君が激しいキスをしかけてきた。

「はぁ…くそ…!あなたは、いつだって俺の先を行く!俺はいつだってあなたに敵わないんだ!」

「ひゃ!ま、待って!だめ!だめぇ!」

「んぅ!」

「きゃああ!」

 瀬尾君が早急にズボンと下着を脱がしてきて、すでに少し固くなっていた自分の陰茎を咥え込む。突然の快感に女のような悲鳴をあげてしまった。瀬尾君はジュブジュブと卑猥な音をたてながら、無茶苦茶に舌を動かし、先端を激しくほじくってくる。

「ひぃぁ!!た、だめぇ!やだ、やだ!」

「いつもはあんなかっこいいのに!俺たちの前だけ!こんな可愛くなって!くそ!!」

 余裕がないかのように乱暴に扱われる。でもそれが嫌ではない。それがもう答えだった。


 出会った時から惹かれていた瀬尾君。ずっと憧れていた瀬尾君。
 自分を好いてくれる三目君の気持ちはとても嬉しかったし、彼に惹かれていないといえば嘘になる。

 けれど、やっぱり瀬尾君なのだ。かっこよくて美しくてでも可愛らしくて。

 自分を無理やりΩにするような、自分勝手でわがままで、ダメな部分もある男だけれど。

 彼を小鳥遊君に取られたくなかった。誰にも取られたくないのだ。


 たとえ彼がΩの小鳥遊君といた方が幸せだとしても。自分のわがままだとしても。彼だけは手放せないのだ。



「や、時宗!イク!イクからぁ!」

「くそ!幸尚!」

「あぁぁ!!」

 時宗が何かを堪えるように顔をしかめ、ジュウッと強く吸い上げてくる。その刺激にあっけなくイッてしまった。瀬尾君はゴクっと喉を鳴らしながら自分のものを飲み込んだ。

「バカァ、き、汚いよ…。」

「幸尚さんに汚いところなんかないです。」

「幸尚さん、次は僕ですよ。」

「あひっ!」

 閉じていた足を開かれて、足の間に三目君が入ってくる。三目君はスラックスの前を広げて自分のものを曝け出す。

「入れませんから素股させてください。一緒に気持ちよくなりましょうね?」

「ふぅ…!」

 舌なめずりする雄に、頷くことしかできなかった。






「あ、あ、あ、あ!」

「あー、きもちぃ。くそ、入れたいなぁ。」

「や、やら!だめ!入れるのやぁ!」

「…分かってますよ。幸尚さんがどっちか選ぶまではね!!!」

 バチュンと激しく腰を叩きつけられて、三目君のものと自分のものが激しく擦り合わせられる。

「ひぃぃん!や、これ、おかしくなるからぁ!」

 バチュンバチュンとまるでセックスをしているかのような音が部屋に響く。

「っ、おかしくなれよ!僕に!僕に狂ってくださいよ!好き、好きなんですよ幸尚さん!僕を選んで!」

「あぁん、イク!イクからぁ!」

「くっ、僕も!」

「やぁぁん!」

 三目君とほぼ同時に果て、ガックリと体から力を抜く。三目君はフーフーと息を整えながら、自分の横にドサリと倒れ込んできた。そして自分たちの痴態を見ていた瀬尾君も反対側に倒れ込んでくる。

「…小鳥遊、あんなことがあったなんて。僕、自分もΩなのにあいつのことをちゃんと見てやれてなかったかもしれません。」

 休憩して息が整った三目君が小さな声で話し出す。

「僕もΩなんだから一生懸命仕事をする必要なんかないって言われたことあるんですよ。まぁ、僕は余計なお世話だ馬鹿野郎って返してやりましたけど。」

「三目君らしいね。」

 そういうと、三目君がにっこり笑う。

「僕、もう少しあいつのこと気にかけてやろうと思います。…瀬尾、ちょっとお茶買ってきてよ。」

「はぁ?なんで俺が。」

「いいから!幸尚さんも飲みたいですよね?」

「ま、まぁ。」

「ちっ。分かったよ。幸尚さん、すぐ帰ってきますから。」

 こめかみにキスをされて、瀬尾君が部屋を出ていく。すると三目君が体を起こしてじっと目を見てくる。

「…好きです、幸尚さん。僕を選んで。僕ならあなたを幸せにできる。βのあなたを愛してるんです。」

「みつ…め…君。」

 ぎゅうっと強く体を抱きしめられる。本当は抱きしめ返してやりたい。でもできない。自分は選んでしまった。もう答えが出てしまったのだから。

「ごめん、三目君。俺は…!」

「…あーあ、僕ってほんとにいい奴。愛してるから諦めますよ。あなたを困らせたくない。」

「三目君…。」

「…だから最後に名前を呼んで。」

 三目くんが頬を擦り寄せてくる。その目に涙が浮かんで見えたのは気のせいだろうか。



「ありがとう、海里。」

「いつか後悔しますよ。こんないい男を逃しちゃったって。」

 泣き笑いの表情の海里は今まで見た中で一番美しく見えた。
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