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第三章 幼女とイケメン
第三話
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「ん……。」
太陽の光を感じて、もう朝かと目を開ける。
「うわあっ!」
目を開けると、すやすやと眠る女の子の顔が目の前にあって、後ろへと飛び退いてしまった。ばくばくと急に上がってしまった心拍数を深呼吸で整えて、もう一度彼女の顔を覗き込む。
「ぐっすり寝てるなぁ……。」
僕の布団を勝手に使って、それはそれは気持ち良さそうに眠っている。枕を使って仰向けで眠っているとそのお団子は崩れてしまいそうだが、全く崩れている様子はない。
「ほんとに、なんなんだろうこの子……。」
ぷぴーと可愛らしい寝息を立てる彼女に笑ってしまい、そのまろい頬をつついてやろうと、指を伸ばす。
「んっ……。なんじゃ、そなた。起きるのが早いのぉ。」
「うわあっ!」
すると同時に彼女が目を開ける。何回かまばたきをした後、僕に視線を向けてニヤリと笑った。のけ反った僕を尻目に、布団の中からモソモソと這い出てきて立ちあがり、ぐんと伸びをした。
「ふわあっ!布団で眠るというのもやはりいいものだなぁ。」
「あ、あの。」
一人で勝手に悦に入っている彼女に声をかける。しかし、聞こえていないのか返事をしてくれない。
「それに、久しぶりに食べたからなぁ。微々たるものだが力が戻っているのぉ。」
「あのー、僕の話、ちゃんと聞いてる君?」
「そなたの話など聞いておらん!」
「えぇっ…。」
彼女は僕の方を見て輝くような笑顔を見せてくれた。その可愛らしさに一瞬許してしまいそうになるが、そうではないと頭を左右に振って正気に戻る。
「あ、あのねぇ!君、どこの子なの?勝手に人の家に入ったらダメだってご両親に教わらなかった?とにかく、どこに住んでるのかだけでも教えてくれないと、お父さんとお母さんが心配してるよ?」
「えぇい、うるさいのぉ!まるで母親のようだ!」
彼女に視線をあわせて説得してみたが、ぷいっと横を向かれてしまった。しかし、ここで諦める訳にはいかない。昨日の不思議な体験はきっと夢に違いない。寝ぼけてしまっていたのだ。そうに違いない!
「あのね?君がいないっていってお父さんとお母さんがすっごく心配して探してるんだよ?それに君もお母さんたちに会いたいでしょ?」
「何を言うておる!我に人間のような親などおらぬ。我々を生み出し、統べている神がおるだけだ!」
「神様?」
「そうだ!我も神の一員であるが、位というものがある。最も位の高い神が八百万の神々をまとめてくださっておるのだ。」
「へえぇ……。」
(変な子なんだなぁ。)
昨日の話を聞いても思ったが、思い込みの激しい子供なのだろう。それでこんな変わった格好をしているのかもしれない。とにかく、どこに住んでいるのかだけでも聞き出さないといけないと思った時。
「おぉーい、朝穂ぉ!起きてるかぁ?」
玄関の扉を叩く音がして、お祖父ちゃんの声が家に響いた。
「あ、お、起きてるよ!」
掛け時計の時計を見ると、時間は午前8時を回っている。
「悪いけど、爺ちゃん、緊急で村役場での会合が入ったとよ。んで、婆ちゃんは畑の作業に出てるから昼前に帰ってくるが。一人でおれるやろ?」
「大丈夫だよ、もう高校生なんだからさ!」
部屋から玄関の方に顔だけ出すと、お祖父ちゃんが玄関の扉を開けてこちらにヒラヒラと手を振っている。
「そういうと思った。ちょっと行ってくるから、ゆっくりしちょれよ。朝穂が食べられるもん、うちの冷蔵庫ん中に入っとるから好きに食べろやー。」
「いってらっしゃい。」
お祖父ちゃんはにっこりと笑って、扉を閉めた。
「ふむ。母屋の方に食べるものがあるのか?なら我も行くぞ?」
「あっ……。」
すっかり彼女のことを忘れてしまっていた。慌てて部屋を出て、靴を履いて蘇とに飛び出す。
「お祖父ちゃん!!」
大声で呼んでみたが、お祖父ちゃんは軽トラに乗って道路に出ていってしまうところだった。
「あぁ……。」
お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも「使い方が分からん」と言って携帯電話は持っていない。彼女のことをすぐに相談したかったのだが、話は昼御飯の時になりそうだ。
「腹が減ったぞ!早く、御飯じゃ!」
僕は家から出てきて駄々をこねる彼女を見てため息をついた。
太陽の光を感じて、もう朝かと目を開ける。
「うわあっ!」
目を開けると、すやすやと眠る女の子の顔が目の前にあって、後ろへと飛び退いてしまった。ばくばくと急に上がってしまった心拍数を深呼吸で整えて、もう一度彼女の顔を覗き込む。
「ぐっすり寝てるなぁ……。」
僕の布団を勝手に使って、それはそれは気持ち良さそうに眠っている。枕を使って仰向けで眠っているとそのお団子は崩れてしまいそうだが、全く崩れている様子はない。
「ほんとに、なんなんだろうこの子……。」
ぷぴーと可愛らしい寝息を立てる彼女に笑ってしまい、そのまろい頬をつついてやろうと、指を伸ばす。
「んっ……。なんじゃ、そなた。起きるのが早いのぉ。」
「うわあっ!」
すると同時に彼女が目を開ける。何回かまばたきをした後、僕に視線を向けてニヤリと笑った。のけ反った僕を尻目に、布団の中からモソモソと這い出てきて立ちあがり、ぐんと伸びをした。
「ふわあっ!布団で眠るというのもやはりいいものだなぁ。」
「あ、あの。」
一人で勝手に悦に入っている彼女に声をかける。しかし、聞こえていないのか返事をしてくれない。
「それに、久しぶりに食べたからなぁ。微々たるものだが力が戻っているのぉ。」
「あのー、僕の話、ちゃんと聞いてる君?」
「そなたの話など聞いておらん!」
「えぇっ…。」
彼女は僕の方を見て輝くような笑顔を見せてくれた。その可愛らしさに一瞬許してしまいそうになるが、そうではないと頭を左右に振って正気に戻る。
「あ、あのねぇ!君、どこの子なの?勝手に人の家に入ったらダメだってご両親に教わらなかった?とにかく、どこに住んでるのかだけでも教えてくれないと、お父さんとお母さんが心配してるよ?」
「えぇい、うるさいのぉ!まるで母親のようだ!」
彼女に視線をあわせて説得してみたが、ぷいっと横を向かれてしまった。しかし、ここで諦める訳にはいかない。昨日の不思議な体験はきっと夢に違いない。寝ぼけてしまっていたのだ。そうに違いない!
「あのね?君がいないっていってお父さんとお母さんがすっごく心配して探してるんだよ?それに君もお母さんたちに会いたいでしょ?」
「何を言うておる!我に人間のような親などおらぬ。我々を生み出し、統べている神がおるだけだ!」
「神様?」
「そうだ!我も神の一員であるが、位というものがある。最も位の高い神が八百万の神々をまとめてくださっておるのだ。」
「へえぇ……。」
(変な子なんだなぁ。)
昨日の話を聞いても思ったが、思い込みの激しい子供なのだろう。それでこんな変わった格好をしているのかもしれない。とにかく、どこに住んでいるのかだけでも聞き出さないといけないと思った時。
「おぉーい、朝穂ぉ!起きてるかぁ?」
玄関の扉を叩く音がして、お祖父ちゃんの声が家に響いた。
「あ、お、起きてるよ!」
掛け時計の時計を見ると、時間は午前8時を回っている。
「悪いけど、爺ちゃん、緊急で村役場での会合が入ったとよ。んで、婆ちゃんは畑の作業に出てるから昼前に帰ってくるが。一人でおれるやろ?」
「大丈夫だよ、もう高校生なんだからさ!」
部屋から玄関の方に顔だけ出すと、お祖父ちゃんが玄関の扉を開けてこちらにヒラヒラと手を振っている。
「そういうと思った。ちょっと行ってくるから、ゆっくりしちょれよ。朝穂が食べられるもん、うちの冷蔵庫ん中に入っとるから好きに食べろやー。」
「いってらっしゃい。」
お祖父ちゃんはにっこりと笑って、扉を閉めた。
「ふむ。母屋の方に食べるものがあるのか?なら我も行くぞ?」
「あっ……。」
すっかり彼女のことを忘れてしまっていた。慌てて部屋を出て、靴を履いて蘇とに飛び出す。
「お祖父ちゃん!!」
大声で呼んでみたが、お祖父ちゃんは軽トラに乗って道路に出ていってしまうところだった。
「あぁ……。」
お祖父ちゃんもお祖母ちゃんも「使い方が分からん」と言って携帯電話は持っていない。彼女のことをすぐに相談したかったのだが、話は昼御飯の時になりそうだ。
「腹が減ったぞ!早く、御飯じゃ!」
僕は家から出てきて駄々をこねる彼女を見てため息をついた。
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