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第三章 幼女とイケメン
第二話
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(一体なんなんだ、この子。)
僕が寝るはずだった布団でスヤスヤと眠りについてる少女を見ながら大きなため息をついた。マドレーヌを食べた後、「食事をしたら眠ぅなってきた…。」と言って、勝手に僕の布団に潜り込んでしまったのだ。可愛らしい寝息をたて始めた彼女を起こすわけにもいかないし、布団はこれだけしかないし。結局布団の隣に腰を下ろして、彼女の寝顔を眺めているのだ。
「あれ、なんだったんだろう…。」
ぼーっとしながら、先程の彼女の行動を思い出す。簪を投げると出てきた本、光った彼女の体。
「あぁー、僕、夢でも見てるのかなぁ。」
こんなこと現実に起こるわけがない。だとすればこれは夢なんじゃないだろうか。
「これも夢かな?寝たら、いつも通りになってるのかな?」
布団の傍に横になって、毛布を少しだけかりて体を丸める。
「夢から…覚めますように…。」
そう願って、僕は目を閉じた。
頬を撫でる風を感じて、ゆっくりと目を開けると目の覚めるような真っ青な空が飛び込んでくる。両手を地面について、上半身を持ち上げると、僕は自分が黄金色に輝く稲が実った田んぼの中で眠ったいたことに気付いた。さっきまで部屋の中で寝ていたはずなのに、どうしてこんな所にいるのか全く分からない。
「ほほぉ。そなた、以前迷い混んできた童であったか。」
背後から鈴のなるような美しい声が聞こえてきた。僕が慌てて振り向くと、そこにはふわふわとウェーブを描く黒髪が腰の辺りまで伸びた僕と同じぐらいの年齢の女性がいた。その瞳はあの少女のように茜色に染まっているが、服装は彼女と比べてだいぶ立派だ。何枚も淡い色合いの薄い着物を重ねて、一番上には瞳と同じ色の打ち掛けを羽織っている。その衣には金と銀で美しい刺繍が施されていて、彼女の輝くような美貌に負けず劣らずの出来だ。
「そなた!我の話を聞いておるのか?」
その美しさに見とれてしまっている僕を鼻で笑い、彼女が至近距離まで近づいてきた。思わず顔を赤くして、後ろに下がり、彼女から距離を取ると、ケラケラと愉快そうに高笑いし始めた。
「そなた、我の美しさに恐れをなしたのか?それでよいのだ!私を敬ってこそ、神使としての役割も果たせるというものだからな!」
はっーはっはっはっ!と悪役のような笑い声を響かせる彼女を見ていると、どんどんその身長が縮んでいっていることに気付いてしまった。
「あぁ!なんと言うことだ!嫌だ、戻りたくない!」
自分が縮んでいることに気付いた彼女は、頭を左右に激しく降るがら結局止まらず、最後には見覚えのある少女の姿へと戻ってしまった。
「あぁ!あぁ!なんと言うことだ!あんなものでは、私の本来の姿を取り戻すには全く足りぬということか!あぁ……口押しや!」
彼女は悲鳴のように言葉を吐き出した後、両手で顔を覆って駆け出してしまう。
「あ、待って!」
慌ててその後を追うも、いつまでたっても追い付けない。そしてどんどんと彼女の背中は遠くなっていき、終いには消えてしまった。
「あっ……。」
彼女の姿が消えた瞬間、青い空に鈍色の雲がかかり始めた。あんなにずっしりと実っていた稲穂からは、ポロポロと実が落ち始め、茶色く枯れてしまった。頬を撫でた心地のよい風はピタリと止まり、周囲を淀んだ空気がおおう。
「ここから、出ないと……。」
このままらここにいては良くない気がする。僕は彼女が駆けた方向へと歩き出す。しかし、いつまでたっても田んぼの終わりは見えてこない。悪いことに、息はどんどん苦しくなってきて、僕はとうとう地面に膝をついてしまった。
「もう……だ、め……。」
そう思った時。遠くで眩しく光る何かが目に入った。
「どう……か、あ……子を……ってくだ…さい。」
(ダメだ、全然聞こえないよ。)
「どうか……あの子……を……。」
中途半端に聞き取れる声を聞きながら、僕を意識を失ったのだった。
僕が寝るはずだった布団でスヤスヤと眠りについてる少女を見ながら大きなため息をついた。マドレーヌを食べた後、「食事をしたら眠ぅなってきた…。」と言って、勝手に僕の布団に潜り込んでしまったのだ。可愛らしい寝息をたて始めた彼女を起こすわけにもいかないし、布団はこれだけしかないし。結局布団の隣に腰を下ろして、彼女の寝顔を眺めているのだ。
「あれ、なんだったんだろう…。」
ぼーっとしながら、先程の彼女の行動を思い出す。簪を投げると出てきた本、光った彼女の体。
「あぁー、僕、夢でも見てるのかなぁ。」
こんなこと現実に起こるわけがない。だとすればこれは夢なんじゃないだろうか。
「これも夢かな?寝たら、いつも通りになってるのかな?」
布団の傍に横になって、毛布を少しだけかりて体を丸める。
「夢から…覚めますように…。」
そう願って、僕は目を閉じた。
頬を撫でる風を感じて、ゆっくりと目を開けると目の覚めるような真っ青な空が飛び込んでくる。両手を地面について、上半身を持ち上げると、僕は自分が黄金色に輝く稲が実った田んぼの中で眠ったいたことに気付いた。さっきまで部屋の中で寝ていたはずなのに、どうしてこんな所にいるのか全く分からない。
「ほほぉ。そなた、以前迷い混んできた童であったか。」
背後から鈴のなるような美しい声が聞こえてきた。僕が慌てて振り向くと、そこにはふわふわとウェーブを描く黒髪が腰の辺りまで伸びた僕と同じぐらいの年齢の女性がいた。その瞳はあの少女のように茜色に染まっているが、服装は彼女と比べてだいぶ立派だ。何枚も淡い色合いの薄い着物を重ねて、一番上には瞳と同じ色の打ち掛けを羽織っている。その衣には金と銀で美しい刺繍が施されていて、彼女の輝くような美貌に負けず劣らずの出来だ。
「そなた!我の話を聞いておるのか?」
その美しさに見とれてしまっている僕を鼻で笑い、彼女が至近距離まで近づいてきた。思わず顔を赤くして、後ろに下がり、彼女から距離を取ると、ケラケラと愉快そうに高笑いし始めた。
「そなた、我の美しさに恐れをなしたのか?それでよいのだ!私を敬ってこそ、神使としての役割も果たせるというものだからな!」
はっーはっはっはっ!と悪役のような笑い声を響かせる彼女を見ていると、どんどんその身長が縮んでいっていることに気付いてしまった。
「あぁ!なんと言うことだ!嫌だ、戻りたくない!」
自分が縮んでいることに気付いた彼女は、頭を左右に激しく降るがら結局止まらず、最後には見覚えのある少女の姿へと戻ってしまった。
「あぁ!あぁ!なんと言うことだ!あんなものでは、私の本来の姿を取り戻すには全く足りぬということか!あぁ……口押しや!」
彼女は悲鳴のように言葉を吐き出した後、両手で顔を覆って駆け出してしまう。
「あ、待って!」
慌ててその後を追うも、いつまでたっても追い付けない。そしてどんどんと彼女の背中は遠くなっていき、終いには消えてしまった。
「あっ……。」
彼女の姿が消えた瞬間、青い空に鈍色の雲がかかり始めた。あんなにずっしりと実っていた稲穂からは、ポロポロと実が落ち始め、茶色く枯れてしまった。頬を撫でた心地のよい風はピタリと止まり、周囲を淀んだ空気がおおう。
「ここから、出ないと……。」
このままらここにいては良くない気がする。僕は彼女が駆けた方向へと歩き出す。しかし、いつまでたっても田んぼの終わりは見えてこない。悪いことに、息はどんどん苦しくなってきて、僕はとうとう地面に膝をついてしまった。
「もう……だ、め……。」
そう思った時。遠くで眩しく光る何かが目に入った。
「どう……か、あ……子を……ってくだ…さい。」
(ダメだ、全然聞こえないよ。)
「どうか……あの子……を……。」
中途半端に聞き取れる声を聞きながら、僕を意識を失ったのだった。
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