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第一章
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「あ、あの、もうここでいいですから。」
ホテルを出て、すこし歩いた後、不破さんが「まだ時間はあるか?」と尋ねてきた。本当は何も予定もないし、元気だったのだが、これ以上一緒にいると恥ずかしいことをたくさん言われて、心臓が爆発しそうになりそうだったので、もう帰宅したい旨を告げた。
すると、すぐにタクシーを止めてくれてた。強引に次に連れていかない姿勢に感心しつつ「今日はありがとうございました。」と感謝の言葉を伸べようとした時、なぜだか不破さんが隣に滑り込んできた。
「えっ?あの?」
「ほら、千佳子。早く住所を言わないと運転手さんが困ってるぞ? 」
「何で不破さんも乗ってくるんですか?」
「何でって……。家まで送らないと千佳子が無事に帰ったか不安になるだろ?」
「子供じゃないんだから、家ぐらいちゃんと帰れますよ!」
「途中で変な男に襲われたらどうするんな?」
「家の前までタクシーで行くのに襲われる訳ないでしょう!」
「お客さん、どちらまで?」
言い争いをしている私たちに業を煮やしたのか、運転手がこちらを向いて尋ねてくる。そのせいで慌てて自分の住所を告げてしまった。ゆっくりとタクシーが動き出す。
「千佳子はそんなところに住んでるんだな。」
不破さんがにっこりと笑う。この男に自宅の住所を知られてしまった。その事実に私はがっくりと肩を落としたのだった。
20分ほどで自宅のアパーと到着した。お金は当たり前のように不破さんが黒いカードで払ってくれた。もちろんお金を出そうとしたのだが、不破さんが断固として受け取ってくれなかったのだ。
「それじゃあ、不破さん今日はありがとうございました。」
アパートの入り口の前でペコリと頭を下げる。
「いや、こちらこそ楽しかったよ。」
不破さんがにこりと笑ってくれるが、なぜだがその表情が少しだけ強張っているようにも見える。
「あの、不破さん?どうかしましたか?」
具合でも悪くなってしまったのかと不安に思い、その顔を覗きこんでみると、驚いたように後ろに下がってしまった。不破さんはばつが悪そうに黙りこんでしまい、嫌な雰囲気が流れる。
「あ、あの!じゃあ失礼しますね!今日はありがとうございました!」
早口で言い切った後、素早く後ろを向いてアパートのエントランスへと駆け出す。
どうせ我にかえったのだろう。どうして自分はこんな可愛くもないし、面白い訳でもない女と食事なんかしてしまったのだろうかと。もっと他に一緒にいて楽しい女性がいることに気づいたんだろう。でも最後の最後にそんな態度を取らなくてもいいんじゃないだろうか。せめて私が部屋に戻るまではシンデレラでいさせて欲しかった。何もここで魔法を解く必要はないのに!
「きゃあっ!」
怒りと悲しみで心がぐちゃぐちゃになっていた時。突然右腕を掴まれた。そして無理やり振り向かされる。
「ちょ!なんですか、不破さん!離して!」
私の手をつかんだ張本人である不破さんは、無言のままアパートの隣に併設されている小さな公園へと足を進める。そして暗がりにあるベンチに私を座らせて、自分は立ったまま、ベンチの背もたれに両手をついて、さっきのエレベーターの時のように私を腕の中に囲ってしまった。
「千佳子、ダメだ。我慢できない。頼む、キスさせてくれないか?」
「はぁ!?な、何を言ってるんですか!さっき私から距離とってたくせに!」
「距離?あぁ、近くに寄られると千佳子の香りを感じて興奮するから後ろに下がった。」
(なんじゃそりゃあ!)
一瞬でと悲しくなった自分が嫌になる。「帰りますから離して!」と怒鳴るが、不破さんがどいてくれる気配はない。
「頼む。千佳子。頼むよ?」
「顔が近いからぁ!」
「千佳子……。」
「んんっ……。」
不破さんが顔を私の首筋にすりよせてくる。勝手に私の体に触らないということは守っているのか、荒い息だけが首筋に当たる。顔をすりよせるのは体の接触に当たらないのかとも思うが、彼的にはセーフなのだろう。それに、私も考えに集中できるような状態ではなくなってきた。
「千佳子……。」
「やぁ!耳やだぁ!」
「何もしてないぞ、千佳子。ただ、お願いしてるだけだ……。」
「んんぅっ!」
耳の中に息を吹き掛けられて、体が大きく跳ね上がる。
「千佳子。口の中、可愛がらせて?」
「やだぁ!」
「ちーか?早くしないと誰か来ちゃうかもしれないぞ?それとも誰かに見られる方が興奮する?」
「ちっ、ちがう!あうっ!」
「あぁ、ごめんごめん。わざとじゃないからな?」
不破さんの膝が一瞬だけ私の足の間を刺激した。涙目で睨み付けてみたものの不破さんは「可愛いなぁ」と笑うだけだ。
「千佳子、頼むよ。キスだけだから……。なっ?」
「っ~!キスだけですから!それで終わらせて…んんっ!」
了承した途端、不破さんの体が覆い被さってきて激しく唇を奪われる。口を開けてというように、舌で唇をノックされ、恐る恐る開くと、チュルっと熱いそれがねじ込まれる。
「んんっ…ふぁ…ん…。」
不破さんの舌が自分のに巻き付き、唾液をすすられる。そして、いつの間にか不破さんに強く抱き締められていた。
「千佳子…んっ……気持ちいいか…?」
「ふぁ…んんっ……不破さんのばかぁ……はうっ…!」
「可愛い……、俺の…ちか。」
頭は優しく撫でてくれるのに、キスは全く優しくない。熱い舌で口内を蹂躙され、不破さんの体が離れたときには息も絶え絶えになってしまっていた。
「千佳子、大丈夫か?」
「んんっ、ふぅ……。」
頭がぼっーとしてしまい、まともに体を支えることもできない。いつの間にか隣に座っている不破さんからいい匂いがしてきて、思わず先程の不破さんのように顔をその胸にすりよせてしまった。するとクスッと笑って不破さんが抱き締めてくれる。
「千佳子、いい子だ。」
「子供扱いしないでください……。」
上機嫌に頬笑む不破さんの頬を人差し指でつついてやったのだった。
ホテルを出て、すこし歩いた後、不破さんが「まだ時間はあるか?」と尋ねてきた。本当は何も予定もないし、元気だったのだが、これ以上一緒にいると恥ずかしいことをたくさん言われて、心臓が爆発しそうになりそうだったので、もう帰宅したい旨を告げた。
すると、すぐにタクシーを止めてくれてた。強引に次に連れていかない姿勢に感心しつつ「今日はありがとうございました。」と感謝の言葉を伸べようとした時、なぜだか不破さんが隣に滑り込んできた。
「えっ?あの?」
「ほら、千佳子。早く住所を言わないと運転手さんが困ってるぞ? 」
「何で不破さんも乗ってくるんですか?」
「何でって……。家まで送らないと千佳子が無事に帰ったか不安になるだろ?」
「子供じゃないんだから、家ぐらいちゃんと帰れますよ!」
「途中で変な男に襲われたらどうするんな?」
「家の前までタクシーで行くのに襲われる訳ないでしょう!」
「お客さん、どちらまで?」
言い争いをしている私たちに業を煮やしたのか、運転手がこちらを向いて尋ねてくる。そのせいで慌てて自分の住所を告げてしまった。ゆっくりとタクシーが動き出す。
「千佳子はそんなところに住んでるんだな。」
不破さんがにっこりと笑う。この男に自宅の住所を知られてしまった。その事実に私はがっくりと肩を落としたのだった。
20分ほどで自宅のアパーと到着した。お金は当たり前のように不破さんが黒いカードで払ってくれた。もちろんお金を出そうとしたのだが、不破さんが断固として受け取ってくれなかったのだ。
「それじゃあ、不破さん今日はありがとうございました。」
アパートの入り口の前でペコリと頭を下げる。
「いや、こちらこそ楽しかったよ。」
不破さんがにこりと笑ってくれるが、なぜだがその表情が少しだけ強張っているようにも見える。
「あの、不破さん?どうかしましたか?」
具合でも悪くなってしまったのかと不安に思い、その顔を覗きこんでみると、驚いたように後ろに下がってしまった。不破さんはばつが悪そうに黙りこんでしまい、嫌な雰囲気が流れる。
「あ、あの!じゃあ失礼しますね!今日はありがとうございました!」
早口で言い切った後、素早く後ろを向いてアパートのエントランスへと駆け出す。
どうせ我にかえったのだろう。どうして自分はこんな可愛くもないし、面白い訳でもない女と食事なんかしてしまったのだろうかと。もっと他に一緒にいて楽しい女性がいることに気づいたんだろう。でも最後の最後にそんな態度を取らなくてもいいんじゃないだろうか。せめて私が部屋に戻るまではシンデレラでいさせて欲しかった。何もここで魔法を解く必要はないのに!
「きゃあっ!」
怒りと悲しみで心がぐちゃぐちゃになっていた時。突然右腕を掴まれた。そして無理やり振り向かされる。
「ちょ!なんですか、不破さん!離して!」
私の手をつかんだ張本人である不破さんは、無言のままアパートの隣に併設されている小さな公園へと足を進める。そして暗がりにあるベンチに私を座らせて、自分は立ったまま、ベンチの背もたれに両手をついて、さっきのエレベーターの時のように私を腕の中に囲ってしまった。
「千佳子、ダメだ。我慢できない。頼む、キスさせてくれないか?」
「はぁ!?な、何を言ってるんですか!さっき私から距離とってたくせに!」
「距離?あぁ、近くに寄られると千佳子の香りを感じて興奮するから後ろに下がった。」
(なんじゃそりゃあ!)
一瞬でと悲しくなった自分が嫌になる。「帰りますから離して!」と怒鳴るが、不破さんがどいてくれる気配はない。
「頼む。千佳子。頼むよ?」
「顔が近いからぁ!」
「千佳子……。」
「んんっ……。」
不破さんが顔を私の首筋にすりよせてくる。勝手に私の体に触らないということは守っているのか、荒い息だけが首筋に当たる。顔をすりよせるのは体の接触に当たらないのかとも思うが、彼的にはセーフなのだろう。それに、私も考えに集中できるような状態ではなくなってきた。
「千佳子……。」
「やぁ!耳やだぁ!」
「何もしてないぞ、千佳子。ただ、お願いしてるだけだ……。」
「んんぅっ!」
耳の中に息を吹き掛けられて、体が大きく跳ね上がる。
「千佳子。口の中、可愛がらせて?」
「やだぁ!」
「ちーか?早くしないと誰か来ちゃうかもしれないぞ?それとも誰かに見られる方が興奮する?」
「ちっ、ちがう!あうっ!」
「あぁ、ごめんごめん。わざとじゃないからな?」
不破さんの膝が一瞬だけ私の足の間を刺激した。涙目で睨み付けてみたものの不破さんは「可愛いなぁ」と笑うだけだ。
「千佳子、頼むよ。キスだけだから……。なっ?」
「っ~!キスだけですから!それで終わらせて…んんっ!」
了承した途端、不破さんの体が覆い被さってきて激しく唇を奪われる。口を開けてというように、舌で唇をノックされ、恐る恐る開くと、チュルっと熱いそれがねじ込まれる。
「んんっ…ふぁ…ん…。」
不破さんの舌が自分のに巻き付き、唾液をすすられる。そして、いつの間にか不破さんに強く抱き締められていた。
「千佳子…んっ……気持ちいいか…?」
「ふぁ…んんっ……不破さんのばかぁ……はうっ…!」
「可愛い……、俺の…ちか。」
頭は優しく撫でてくれるのに、キスは全く優しくない。熱い舌で口内を蹂躙され、不破さんの体が離れたときには息も絶え絶えになってしまっていた。
「千佳子、大丈夫か?」
「んんっ、ふぅ……。」
頭がぼっーとしてしまい、まともに体を支えることもできない。いつの間にか隣に座っている不破さんからいい匂いがしてきて、思わず先程の不破さんのように顔をその胸にすりよせてしまった。するとクスッと笑って不破さんが抱き締めてくれる。
「千佳子、いい子だ。」
「子供扱いしないでください……。」
上機嫌に頬笑む不破さんの頬を人差し指でつついてやったのだった。
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