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第一章
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しおりを挟む「千佳子…、少し細すぎる。仕事が忙しくて、あんまり食べられなかったんだな。これからは一緒いいっぱい美味しいものたべような?」
「はぁ、そんなに痩せてないと思ったんですけど。」
「痩せてるよ…。ふくらはぎもこんなに細くて…。」
「んっ!ちょ!」
「足もちっちゃくて…かわいい。」
「んあ!」
私の靴を脱がしていたはずの不破さんが、いつのまにか私のふくらはぎを指先でなぞり始める。
「ちょ、やめて!」
「ちょっとだけだから…。痛いことはしない。」
「ひぅ!」
(う、嘘!こんなこと!)
ジュと不破さんが私の足の親指を口に含んでしまった。
「や、やだ!汗かいてるし!ストッキングも履いてるのに!」
「んっ…おいしい。」
「はうぅ!」
指を口に含んだまま、不破さんの手が私の膝の裏をクリクリと刺激してくる。
「あぁぁ!」
「…男と部屋で二人きりになったらこんなことされるなんて分かってるだろう?」
「きゃぁあん!」
指から口を離した不破さんが、私の太ももに下を這わす。
「男が女性に服を送るのはな?その服を脱がしてむしゃぶりつきたいってことなんだ。いい年なんだから知ってるだろ?」
(そんな!リア充なこと知ってる訳ないでしょ!)
言い返したいが、口から出てくるのは甘い嬌声だけだ。
「千佳子…、千佳子の太もも、もっと舐めたい。ドレス、自分で上げてみて?」
「い、いやぁ!」
「頼む。今日は舐めるだけで我慢するから…。」
「あっ…っあん!」
イケメンがそんなチワワのような顔をするのは本当にやめてほしい。こっちが悪いことをしているような気持ちになってくるから。というか、どうしてこんな状況になっているのかも分からない。私は不破さんに誘われて食事をしに来ただけなのに。
(何?適当にヤラセてくれそうな女とでも思われた?)
「なぁ、千佳子…。」
(ふざけるな!)
「離せ!!」
「え?ちょ!」
ソファに座っている自分の前に膝まづいている不破さんの胸を足で蹴り上げる。イケメンは運動神経もいいのか、軽々と避けられてしまったのが悔しい。
「馬鹿にしないで!かっこいいからって、誰でもあんたに股を開くと思わないでよ!性欲処理が欲しいんだったら、他の女にでも頼んで!」
(馬鹿だ!私はとんでもない馬鹿だ!)
この男は最初からそういうつもりだったんだ。死にそうになっていた女にちょっと優しくすれば何でも言うことをきくだろうと。自分の整った見た目を使えば、女なんてすぐ落ちるだろうと。冷静な時なら判断できたのかもしれない。思ったより、自分はまだ混乱しているのだろう。こんなバレバレの手に引っかかるなんて。
ソファから急いで立ち上がり、地面に置いていた自分のバックを広い、出口へと向かう。
(そういえば、このドレス、この男からもらったやつだった。)
「こんなドレスも!いらないわよ!」
高い洋服でも与えてればいいだろうと思われたのなら癪だ。チャックは自分でできる範囲の肩甲骨にあたりまで上げていたので、すぐに一番下まで下ろす。すると、ずるりとドレスが床に落ちて、下着姿になってしまうがこの際どうでもいい。不破さんからもらったドレスを身に着けている方が腹が立つ。
「こんなドレスねぇ!!」
床に落ちたドレスを拾い上げようとした時だった。
「失礼します、そろそろご準備は…っあ!!」
「ひっ!」
コンコンと扉がノックされて、先ほど不破さんと受付で話をしていた男性が入ってくる。そして、下着姿の私を見てがちっと固まってしまった。
「きゃあ!」
自分の体を隠すものがなく、小さく悲鳴を上げてその場にしゃがみ込んだ。
(こんな貧相な体をさらしてしまうなんて!見られた!見られちゃった!)
どうしてこんなことになったのか。これも全部、不破さんのせいだ。また文句でも言ってやろうと顔を上げたが、ソファの近くに不破さんはいない。
「あ、あれ?きゃあ!」
すると、自分の体が真っ白なシーツでぐるぐる巻きにされてしまった。そしてその上からぎゅうっとたくましい体に抱きしめられる。
「今すぐ出ていけ!」
「し、失礼しました!!」
今のところ、ほとんどへらへらと笑っている表情しか見たことのない不破さんが、怒りを全面に出した恐ろしい表情で男性を怒鳴りつける。その声で我に返ったのか、男性はすぐに扉の向こうへと消えて行った。
「離してください。」
また二人きりになるが、不破さんが離れる気配がない。声をかけてみたものの、逆にさらに強く抱きしめられてしまった。
「なんなんですか?離してくださいって言ってるんですよ!」
「すまん。千佳子を怒らせたかったんじゃないし、からかってもいない。ましてや性欲処理に使おうなんてことは思ってない。」
「…じゃあ、なんであんなこと!」
「本当にすまない。年甲斐もなく暴走したんだ。千佳子が可愛すぎて。最初のワンピース姿を見たときもだいぶキてたんだけど。自分がプレゼントしたドレス着て笑ってるの見たら、もう堪らなくなった。」
(ほんとにこの人は…。)
口がうまい男だと思う。そうやって女の人を丸め込んできたんでしょ!と言いたいのに、今にも泣きだしそうな顔で謝罪されるとこちらの勢いもそがれてしまう。
「頼む、まだ帰るな。千佳子に喜んでもらえるようにずっとデートのこと考えてたんだ。」
ぎゅうぎゅうと不破の腕の力が増していく。振り払わないといけないなに、なぜだかそれができない。
「仕方ありません。命の恩人っていうことで今回は許してあげます。ただ!もうああいうことはしないって誓ってください。」
「分かった。千佳子からのお許しが出ない限りは絶対にしない。…これで俺とデートしてくれるか?」
「分かりましたよ。分かりましたから、とにかく離れてください!」
いつまでもイケメンの腕の中にいたら、恥ずかしくて敵わないのだ。
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