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決戦

第11話

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「ここから出して!出しなさいよ!!!」

 バライカが地下牢までの階段を降りていると、下から怒声が響いてくる。小さくため息をついて歩みを早め、牢の前に行くと、監視役の妖精がアワアワと慌てていた。

「何をしているんだ。」

「バ、バライカ様。ファニアをこんなところに閉じ込めるなんて私は反対です!だってファニアは本当にいい子で!」

「…君にはこの仕事向いていないようだ。ここから出ていけ。」

「しかし!」

「聞こえなかったのかい?僕は出ていけと言ったんだ。それとも少し痛い目にあいたいのかな?」

「っ!…分かりました。」

 監視役の妖精が階段を上がっていくのを確認すると、バライカは地下牢へと視線を向ける。そこにいたのは怒りで目を吊り上げたファニアだった。

「バライカ!ここから出してちょうだい!こんなことするなんてひどいわ!今すぐにでも人間界に戻ってビルの看病をしないといけないのに!」

 檻を掴んでガチャガチャと揺らすファニアを無視して、バライカは牢の前にある椅子に座り込む。地下牢の中にある豪華な食事にファニアが手をつけていないことに気が付いたバライカは、今度は大きなため息をついた。

「ちゃんと食事をしないと倒れてしまうだろう。君の好物ばかり用意したんだ。」

「うるさい!こんなものいらないわ!!」

 ボロボロと泣きながらファニアが食事を蹴り飛ばす。ガチャンと嫌な音がして床に食事が散らばった。

「どうして!どうしてなの、バライカ!私、あなたのことが好きだったのに!あなたと一緒にいるととても楽しかった。あなたなら妖精界をいい方向に導いてくれると思ったのに!こんなことってないわ!あなたは悪魔よ!人間と妖精が戦争をしたら妖精だって無事ではいられないわ!たくさんの人間と妖精が死ぬのよ!そんなひどいことをあなたはできるっていうの!!」



「できるさ。僕は妖精王だからね。妖精たちは僕に従うしかないのさ。弱いものは強いものに服従する。それがは妖精王が作ったルールだ。」

 項垂れてヒックヒックと嗚咽を漏らすファニアを、バライカは悲痛な表情で見つめる。

 こんなはずじゃなかった。

 幸せになるはずだったのに。

 妖精たちに囲まれて。隣には愛しいファニアが寄り添っている。


 そんな未来を夢見ていたのに。




「それなら私が妖精王になる!そしてそんなふざけたルールをなくしてあげるわ!力で弱いものを従えようとするなんて間違ってる!私が妖精たちが幸せに暮らせる世界を作るのよ!!!」

 ファニアへ伸ばしかけた手をバライカは引っ込める。キラキラと輝くファニアの瞳。それを手に入れることは一生敵わなくなってしまった。


 全てはビルハウンド。人間のせいで。
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