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決戦

第6話

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 バライカは妖精として生まれ落ちた時から強者だった。妖精界でもその力に敵うものはおらず、バライカの姿を見ると誰もが頭を下げたり、そそくさとその場から逃げることが当たり前だった。

 バライカもそれを受け入れて、かしずかれるのは当たり前のことだと思っていた。妖精界を統べていた当時の妖精王を打ち倒し、自分が王になった時もその考えは変わらなかった。

 王である自分に全ての妖精が頭を下げるべきだと思っていた。何者も自分に意見することは許されないと。







「バッカじゃないの!あんな性格悪い奴に頭下げるなんてほんとにバカみたい!戦いなさいよ!」




 初めて見た時はなんてバカな奴だと思っていた。ほかの妖精よりは力はあるようだったが、自分には敵わない。膨大な力をぶつけてやれば、あっという間に地に倒れ伏した。いつものことだと城に戻ろうとした。


「くそぉ!あなたなんかに負けないわよ!あんたが王になってから、平和な妖精たちが力こそが一番大事だって思うようになっちゃったんだから!妖精は自然とともに幸せに生きる存在なの!心優しい妖精たちは私が守るわ!あんたみたいに冷たい男に負けないわよ!!!」




 その魂の輝きが眩しかった。生まれた時から自分のためだけに生きてきた自分とは真逆の女。血だらけになりながらも、自分の足元に縋り付いてくる無様な女のはずなのに。

 それなのに今まで動いていなかったのではないかと思うほどに、心臓が高鳴ってしまったのだ。




「お前、名前は?」



「ファニア!ファニアスタスよ!」


 強い意志を感じる瞳に見惚れる。



「僕は妖精のことなんて分からない。今までずっと1人で生きてきたからね。だから君が僕に妖精のことを教えてよ。」

 地面に倒れ込むファニアの前にしゃがみ込む。バライカの申し出を聞いたファニアはしばしポカンとしていたが、すぐに自信満々とでも言うように立ち上がった。



「なによ、あなた王様のくせに妖精のこと知らないの?田舎で生まれ育った何よりも平和を愛する妖精のこの私があなたに妖精とは何かを教えてあげるわ!」

 ファニアがその手を差し出してくる。日の光に照らされたファニアの髪がキラキラと光る。それは今まで見たどの風景よりも美しく思えた。


「田舎妖精がどれだけ僕に教えられるか見ものだね。」

 そう言ってファニアの手を取る。

 ファニアは「ほんとに性格悪いわね!」と喚いているが、そんな姿もバライカには可愛らしく見えた。



 孤独な妖精王が田舎妖精に恋をした瞬間だった。
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