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マゴテリアへ
第15話
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「疲れたー!うわっ、すっごいふかふかですよ、このソファ!」
騎士団員がいなくなると同時にソファに腰を下ろしたロヴェルが驚く。
「はしたないぞ、ロヴェル。」
キウラが注意しながらその隣に座る。アリアネス達も続いて腰を下ろした。
「…ロヴェル、頼む。」
「分かりました。」
アルフォンソに何かを頼まれたロヴェルが目をつむり、ぼそぼそと何かを唱える。するとキーンという高い音が部屋に響き渡った。
「はい、大丈夫ですよ。でもこれ結構きついですから早めに終わらせてください。」
ロヴェルが疲れた顔で息を吐く。
「いったい何なのですか?」
アリアネスが尋ねるとアルフォンソがロヴェルに礼を言った後、アリアネスの方を向いた。
「俺たちの話を妖精たちに聞かれないように結界を張った。ただ、ロヴェルにはお前たちの気配を常時消してもらってるから、かなり負担をかけてる状態になってる。さっさと説明するからよく聞け。」
アルフォンソが身を乗り出したので、アリアネス達も顔を寄せる。
「騎士団の奴らがいるのはこの建物の東側にある騎士団専用の建物だ。ロヴェルに頑張ってもらってアリアネスとセレーナの気配を完全に消してもらうようにする。ただしゃべっちまったら気配がばれちまうから絶対にしゃべるな。」
「分かりましたわ。」
「俺とキウラとザガルードの小僧は王女に面会だ。アリアネスとセレーナも途中までついてきて、こっそり抜け出せ。分かったな。」
「かしこまりました。」
セレーナが頷くと同時に部屋の扉がたたかれる。
「皆様、王女の支度が整いましたのでご案内いたします。」
「よし、行くぞ。」
全員が気を引き締めている中、ロヴェルだけが「えー、まだ何も食べてない。」と不満を口にしていた。
キウラside
案内をしてくれる女性騎士の後ろをアルフォンソ様とザガルード、ロヴェルとともについて行く。部屋を出て少し歩いたところでアリアネスとセレーナの気配が消えたことが分かった。アルフォンソ様の方を見ると、無言で頷いてきたので、同じく頷きで返す。
「王女様は行方不明になっていた弟君が見つかったかもしれないと聞いて大変お喜びです。」
「そうですか。それは光栄です。」
ザガルードを見ながらニコニコと笑う騎士団員に目もくれず、ザガルードは勝手知ったかのようにすたすたと歩く。
「…王女様はどんな方なのですか?」
キウラが聞くと、騎士団員は目を輝かせる。
「王女様は本当にお美しくて、聡明な方です。この国の民のことを一番に考えてくださっています。」
「そんな人が戦争なんて起こしますかねー。」
ロヴェルが笑いながら言うのをキウラが「こら!」とたしなめる。
「…すべては王女様の御心のままに。何か考えがあってのこと。申し訳ありませんが、王女のためなら私はオルドネアと戦います。」
騎士団員のまっすぐな視線を受け止めるアルフォンソ様がにやりと笑う。
「それはこちらのセリフです。」
「…そうですね。お互いの国のため、どちらかが犠牲になるのは仕方ありません。…到着いたしました。少々お待ちください。」
着いたのは巨大な扉の前だった。材質は分からないが、漆黒の扉だ。白い大理石とのコントラストで、その黒味はさら強く見える。
「ミリアンネ様。先ほどお伝えいたしました方々からをお連れしました。」
騎士団員が扉を叩く。
「…通せ。」
扉の向こうから聞こえたのは、少し低めだが高貴さを感じられる女性の声だった。
「私はここまでです。どうぞお入りください。」
騎士団員は扉を開けて、その場で礼をする。
「失礼いたします。」
ザガルードを先頭にアルフォンソ様、私、ロヴェルの順番で部屋に入る。そこは広い部屋で、奥に玉座が鎮座している。
「よく来たな、ザガルダント。」
「っ!姉さま。」
豪華な玉座に優雅に腰を掛けているのは、ザガルードと同じエメラルドの髪と瞳を持った長身の女性だった。髪をシルバーの髪飾りで高めの位置で結わえている。肌は真っ白で、体のラインが強調された真っ黒なマーメイドドレスを着ていた。意思の強そうな釣り目だが、今は愉快そうに細められている。
「生きていてくれてとてもうれしい。お前が行方不明になった時、私は胸が張り裂けそうだったぞ!」
玉座から立ち上がった王女は高らかに笑い出した。
「あはははは!愚か者め!どうしてきたのだ!あははは!」
狂ったように笑い続ける王女にザガルードが歩み寄ろうとするが、危険を感じ、その体を押しとどめる。
「っ!キウラ、気をつけろ!!」
アルフォンソ様の鋭い声が聞こえた。
「あはは!やっぱり来たんだー。」
瞬きをしたその一瞬の間。気づけば王女の肩に頭を乗せてしなだれかかるようにして笑うバライカがそこにいた。
騎士団員がいなくなると同時にソファに腰を下ろしたロヴェルが驚く。
「はしたないぞ、ロヴェル。」
キウラが注意しながらその隣に座る。アリアネス達も続いて腰を下ろした。
「…ロヴェル、頼む。」
「分かりました。」
アルフォンソに何かを頼まれたロヴェルが目をつむり、ぼそぼそと何かを唱える。するとキーンという高い音が部屋に響き渡った。
「はい、大丈夫ですよ。でもこれ結構きついですから早めに終わらせてください。」
ロヴェルが疲れた顔で息を吐く。
「いったい何なのですか?」
アリアネスが尋ねるとアルフォンソがロヴェルに礼を言った後、アリアネスの方を向いた。
「俺たちの話を妖精たちに聞かれないように結界を張った。ただ、ロヴェルにはお前たちの気配を常時消してもらってるから、かなり負担をかけてる状態になってる。さっさと説明するからよく聞け。」
アルフォンソが身を乗り出したので、アリアネス達も顔を寄せる。
「騎士団の奴らがいるのはこの建物の東側にある騎士団専用の建物だ。ロヴェルに頑張ってもらってアリアネスとセレーナの気配を完全に消してもらうようにする。ただしゃべっちまったら気配がばれちまうから絶対にしゃべるな。」
「分かりましたわ。」
「俺とキウラとザガルードの小僧は王女に面会だ。アリアネスとセレーナも途中までついてきて、こっそり抜け出せ。分かったな。」
「かしこまりました。」
セレーナが頷くと同時に部屋の扉がたたかれる。
「皆様、王女の支度が整いましたのでご案内いたします。」
「よし、行くぞ。」
全員が気を引き締めている中、ロヴェルだけが「えー、まだ何も食べてない。」と不満を口にしていた。
キウラside
案内をしてくれる女性騎士の後ろをアルフォンソ様とザガルード、ロヴェルとともについて行く。部屋を出て少し歩いたところでアリアネスとセレーナの気配が消えたことが分かった。アルフォンソ様の方を見ると、無言で頷いてきたので、同じく頷きで返す。
「王女様は行方不明になっていた弟君が見つかったかもしれないと聞いて大変お喜びです。」
「そうですか。それは光栄です。」
ザガルードを見ながらニコニコと笑う騎士団員に目もくれず、ザガルードは勝手知ったかのようにすたすたと歩く。
「…王女様はどんな方なのですか?」
キウラが聞くと、騎士団員は目を輝かせる。
「王女様は本当にお美しくて、聡明な方です。この国の民のことを一番に考えてくださっています。」
「そんな人が戦争なんて起こしますかねー。」
ロヴェルが笑いながら言うのをキウラが「こら!」とたしなめる。
「…すべては王女様の御心のままに。何か考えがあってのこと。申し訳ありませんが、王女のためなら私はオルドネアと戦います。」
騎士団員のまっすぐな視線を受け止めるアルフォンソ様がにやりと笑う。
「それはこちらのセリフです。」
「…そうですね。お互いの国のため、どちらかが犠牲になるのは仕方ありません。…到着いたしました。少々お待ちください。」
着いたのは巨大な扉の前だった。材質は分からないが、漆黒の扉だ。白い大理石とのコントラストで、その黒味はさら強く見える。
「ミリアンネ様。先ほどお伝えいたしました方々からをお連れしました。」
騎士団員が扉を叩く。
「…通せ。」
扉の向こうから聞こえたのは、少し低めだが高貴さを感じられる女性の声だった。
「私はここまでです。どうぞお入りください。」
騎士団員は扉を開けて、その場で礼をする。
「失礼いたします。」
ザガルードを先頭にアルフォンソ様、私、ロヴェルの順番で部屋に入る。そこは広い部屋で、奥に玉座が鎮座している。
「よく来たな、ザガルダント。」
「っ!姉さま。」
豪華な玉座に優雅に腰を掛けているのは、ザガルードと同じエメラルドの髪と瞳を持った長身の女性だった。髪をシルバーの髪飾りで高めの位置で結わえている。肌は真っ白で、体のラインが強調された真っ黒なマーメイドドレスを着ていた。意思の強そうな釣り目だが、今は愉快そうに細められている。
「生きていてくれてとてもうれしい。お前が行方不明になった時、私は胸が張り裂けそうだったぞ!」
玉座から立ち上がった王女は高らかに笑い出した。
「あはははは!愚か者め!どうしてきたのだ!あははは!」
狂ったように笑い続ける王女にザガルードが歩み寄ろうとするが、危険を感じ、その体を押しとどめる。
「っ!キウラ、気をつけろ!!」
アルフォンソ様の鋭い声が聞こえた。
「あはは!やっぱり来たんだー。」
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