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第2章 世界の異変が大変編

異常スライムのち異常ゴブリン

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 どうにかあのスライムキングを倒さなければ……。
 じゃないとどんどんスライムが……ん?
 いや、このまま続ければ無限に経験値が……いやいや!!そう言っとる場合じゃない!

 まずはヤツを調べなければ。
 鑑定さんお願いします!

《インクリーススライム

レベル9

状態 健康

パッシブスキル

吸収
同族意思疎通
物理攻撃耐性

アクティブスキル

スライム増殖
自己再生


称号

同族を指揮する者

称号からの追加補正
無し



 ふむふむ、スライムキングって名前では無かったな。
 まぁどうでもいいんだけど。
 というかこやつ……中々やるな!
 レベル低いけど称号あるとか凄い!
 でもこれ勝つの難しくないか?

 物理攻撃に耐性を持ってて、更に自己再生も持ってるってことは攻撃してもダメージ全然入らないって事でしょ?
 しかもダメージが再生力を上回らないとすぐに全快されるっていうエンドレス!
 魔法なら何とかなるかもだけど2人とも使えないっていうね。
 しかも時間かけるとどんどんスライム生産されるし……。
 どうしよう。

「ユウト君下がってて!俺が相手するよ!」

 色々考えていると、カイルさんがそう言ってスライムキングの前に出る。
 カイルさんの攻撃力で倒せるのかな。
 まぁ俺とカイルさんじゃレベルも違うし、相手は物理攻撃耐性があるから俺のほうが不利だろう。
 うーん、ならあのデカイのはカイルさんに任せて俺は周りのスライムを倒そう!

「わかりました!俺は他のスライムを倒します!あとそのデカいスライムは物理攻撃に耐性があるみたいです!」

「そうか!わかったありがとう!」

 俺達はそう言ってそれぞれスライムに挑んでいった。

 俺はナイフを振り回して次々とスライムを倒していく。
 そうすれば目に見えてスライムは減っていった。
 デカいスライムは戦いに集中するとスライムを増やせないみたいで、そこはラッキーだ。
 頭に響くレベルアップの知らせも今は無視だ無視!

 そして、やっと残り数匹まで倒したところでカイルさんが戦っているほうから焦った声がした。

「くっ、やはりダメージが中々入らないか。このままだとこっちがやられそうだ……」

 カイルさんのほうを見てみると、カイルさんがスライムキングを斬りつけているのが見える。
 だけど、スライムキングは効かないとばかりに体当たりをしている。

「ぐあっ!」

「カイルさん!」

 そんな中、カイルさんの足元にスライムがぶつかり、体勢を崩されたところにスライムキングの体当たりがカイルさんに炸裂する。
 それだけでカイルさんは数メートル程飛ばされて木にぶつかり、そのまま動かなくなってしまった。

 ひぃぃ!!

「カイルさん!」

 駆け寄って見ると呼吸はしており、ただ気絶しているだけとわかった。
 ふぅ……マジで危なかった。
 回復魔法を使えるならともかく、今怪我なんてしたら助けられない。

 スライムキングのほうを見ると、カイルさんが飛ばされた時に落としてしまった剣にゆっくりと近づいていた。
 もしや剣を吸収するつもりか!させん!!

 俺は咄嗟に走ると剣を拾い上げ、スライムキングの前に出た。
 スライムキングは再び戦闘態勢に入ったようで威嚇するようにブルンブルンと揺れている。
 近くにはスライムが2匹……周りを見る限り多分最後のスライムだ。

 俺は剣とナイフを二刀流で持ち――剣は重くて地面に置いた。
 ……だって重いんだから仕方ないでしょ!

 今の俺のレベルはわからないけど、レベル2よりは上がってるはずだ。
 あとは攻撃が通るかの問題だけどやるしかない!
 と、気合いを入れた瞬間、スライムキングが俺に向かって体当たりしてきた。
 ひぃぃ!だが俺は負けん!

「うぉぉぉ!!」

 俺は叫びながら両手でナイフを持ちスライムキングに向かって走った。
 そして――


 ずぶ……。


 そんな音と共にナイフがスライムキングに刺さった。
 すると。


ブルンブルン!

 という感じにスライムキングが物凄く動いて後ろに下がった。
 ……あれ?もしかして効いてる?このナイフ攻撃力高いの?

 俺がナイフを見ていると、スライムキングがまたブルンブルン揺れ始めたので再びナイフを握りしめる……が。



「うわっぷ!」

 ぽよーん。

 という音と共に顔に小さいスライムがぶつかってきた。

 ぎゃぁぁ!またこのパターンか!!

 俺は顔に張り付いたスライムを剥がしたが、次の瞬間には体に強い衝撃が走った。

「うっ!?」

 俺は一瞬の浮遊感のあと地面に倒れていた。

 痛い!!なにこれ!?これがダメージなの!?めっちゃ痛い!

《スキル【痛覚軽減】を獲得しました》

 ええ!?今ので!?
 でも少し痛みが収まったような……?

 痛みを堪えながら俺が顔を上げてスライムキングのほうを見ると、ぶるんぶるん動きながら俺のナイフを吸収しようとしている所だった。

 やめい!!そのナイフはチートナイフなんや!主人公の武器なんや!!

 慌て過ぎて変な大阪弁で頭の中で叫ぶが、関係無いとばかりにスライムキングはナイフの上に乗っかり吸収しようとした。
 すると――

「あれ?」

 ナイフから何やら黒いモヤみたいな何かが出た。
 するとスライムキングが苦しむよう体をねじり始め……そして力尽きたように溶けていった。
 それを見ていると頭に響く声。


《…一定の経験値を取得しました。
それによりレベルが上がりました》


 え?勝ったの?なんで?
 俺、地面とキスしてただけだよ?
 もしかしてナイフがやったの?

 ひぃぃ!ナイフ怖っ!!
 これからはナイフ様と呼んだ方がいいのかも……?

 俺はゆっくり起き上がると、ナイフ様のところまで行く。
 そして恐る恐る手に取るが何もナイフ様は変化は無かった。
 変なモヤも出ておらず俺にダメージも無いので安堵の息を吐く。
 ふぅよかった……。

 俺はそのあと残っていた2匹のスライムを倒して、周囲に散らばったスライムの核を袋と特殊空間に入れていった。
 ……今回の討伐で出たアイテムは俺が貰うという約束なので別にネコババとかじゃないよ?

 スライムキングの核はスライムの核よりも濃い赤で大きかった。
 これも袋に回収っと……。

 そのあとカイルさんの剣を拾い、気配感知で周りの危険が無いことを確かめるとカイルさんの所に走っていった。

「カイルさん!」

 俺が呼びかけてもカイルさんは返事をしない。
 鑑定してみると予想通り気絶と出ていたので、怪我はしていないのだろう。
 あとは起きるまで待つしかない。
 俺はカイルさんを運べないからこのまま待つしかない。
 ……俺が力が無いからとかチビだからとかじゃないからね?ね?
 ほら、体格とか諸々違うし?ね?

 俺はカイルさんを地面に横にして、さて起きるのを待とうと立ち上がった時。
 俺の気配感知に反応があった。

「これは……」

 気配感知の範囲は半径100メートルからなのでまだ遠いが、次々と反応は増えていく。
 そしてその反応は真っ直ぐこちらに向かってくる。

 ……これやばくね?この気配が魔物なら50匹くらいいるぞ?
 スライムが相手でもカイルさんに手伝ってもらったのに、スライム以外の魔物だったらやばいじゃん。
 あ、でもまだ魔物と決まったわけではないか。
 50人の冒険者か、あるいは盗賊とか?あとは兵士……な訳が無い!!

 まず50人の冒険者がこっちに向かってくるって何!
 集団討伐なら有り得るかもしれないけど、少なくともあのギルドの掲示板にはそんな討伐依頼無かったし、盗賊でも50人以上いる盗賊団なんてまず無いでしょ!
 それにそんな盗賊団がいるなんて報告、ギルドに無かった!
 兵士なら数では有り得るかもしれないけど、気配感知で理解出来る限り、動きがバラバラというか……一体感が無いんだよね。
 まさにテキトーにこっちに向かってるって感じ……ってやばいじゃん!
 人とかなら話し合いとか出来るけど魔物はサーチアンドデストロイじゃん!やばいよ!
 いや盗賊も嫌だけどさ!

 この距離ならまだ逃げられるけど、それは2人とも動ける状態での話だ。
 今はカイルさんが気絶していて動くどころの話じゃない。
 ならどうするか……。


「戦うしかない、か……」

 俺の予想だと、森の奥から来ている事と統率のとれていない事からゴブリンとかじゃないかな。
 もしカイルさんを背負うなり引きずるなりしても町までは遠いし追いつかれてしまう。
 ならここで迎え撃つしかない。


 俺はそう決めるとカイルさんを出来るだけ目立たない所に移動させて上から土をかぶせる。
 テレビなんかのサバイバル特集とかで見たことがあるけど、土を被せると匂いなどで動物とかに気付かれにくくなるらしいのだ。
 この世界でもそれが通用するかわからないが、やらないよりマシだ。
 顔にも呼吸ができる程度に被せていく。
 イケメンが土まみれになったが致し方あるまい。

「よし……」

 俺はカイルさんが見つからないようにと祈ってからナイフを手に、気配感知で反応がある方へ向かった。




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