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第3章 魔導帝国ハビリオン編

現実逃避は失敗した!

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その後リュークさんの事を話すアルさんの話を聞くという一種の拷問を受けた…

…俺だって本当の事を言いたいよ…でも言い出せない…そのままズルズル先延ばしにしてしまう…いつか言わなければならないけどそれは今じゃない…

と言い訳を心の中でしているとハティオさんが戻ってきて拷問は終わった…精神がゴリゴリ削れた気がする…

「……行くぞ」

俺はアルさんや他の人達に挨拶してからハティオさんと再び1階に戻る…ちなみにさっきの場所は5階だったみたい

1階の部屋を歩きながらハティオさんが口を開く

「……これで用は終わった…本は後で届けよう」

俺はハティオさんにお礼を言う…大金貨なんて大金持ってないし譲ってくれるならありがたい…まぁ代わりに罪悪感の拷問があったけどね!あはは…!…つらい…

あれ?届けるって…俺の事知らないよね?

「……そうだ…お前…ユウトはどこに住んでいる?」


と思ったら忘れていたのかハティオさんが聞いてきた…もう!男前かと思ったらおっちょこちょいなんて女の子として完璧だー!

「えっと…ハビリオン学院の寮なんですけど…」

「……学院生か」

俺を見て頷くとちゃんと届けると言ってくれた…名前は知ってるから誰かに頼むのかね?まぁありがたいけど

お礼を言ってからハティオさんと塔の出入口の扉まで来た

「……寮まで馬車で送ろう」

そう言ってくれたのでその言葉に甘えることにした…俺だけだと迷子になりそうだし…あともうすぐ夕方だし暗くなったら余計に迷いそうだ…

そしてハティオさんが扉を開けると…

「……む…雨…か」

外は雨が降っていた…空には分厚い雲が浮かんでいて数時間は消えそうにない…どうしよう?傘は無いし…というかこの世界に傘ってあるのかね?見たことないけど…

「……馬車は無理…か」

ハティオさんの話だと弱い雨なら馬車は通常運転だけど目の前で降る雨はとても強く地面を打ち付けていてこういう時に馬車を出すとスリップしたり前が見えなくなって事故を起こす可能性があるから休みになるんだって…

こういう時に魔道具なり魔法の力を使えばいいのに…と思うのは俺だけじゃないよね?

「……仕方ない」

ハティオさんはそう言うと俺の方を向いて口を開く

「……俺の家がこの近くなんだ…雨が止むまで休んでいかないか?」

…え?そんなっ!デート初日に自分の家に招くの!?ちょっと恋愛初心者の俺には難易度高すぎるよ!

…あん?なんか言いたい事があるのか?現実逃避がまだ続いてるって?ナニソレ美味しいの?


「いいんですか?」

「……ああ…そもそも俺がここまで連れてきたんだ」

俺は再びハティオさんの言葉に甘えることにしてハティオさんの家に行くことになった

ハティオさんが上に着ていた服を俺の頭に掛けてくれた…男前だ!俺もしてみたいな…確実に風邪ひくだろうけどな

俺はハティオさんに連れられて急いで貴族地区の道を走る…道は不思議なことに水溜まりが出来ておらずもしかしたら風呂場と同じ素材の地面かもしれないと思った

「……ここだ」

ハティオさんの家は周りの家とは違って小さかった…まぁそれでも普通の一軒家くらいはあるけど…貴族地区にある家がみんなデカすぎるんだよ!

木などで出来た質素な扉を開けて家の中に入る…まず最初はリビングが出迎えてくれた…木で出来たテーブルとイス…そして暖炉だんろにはパチパチと音を出しながら温かな火が燃えている

…なんかホッとする家だな…暖炉なんて初めて見た…

「……少し待っていろ」

暖炉の火を見ているとハティオさんがそう言いながら2階に行ってしまう…ちょっ…どうすれば…座ってればいいのかな?

リビングの所で突っ立ったままになる…だって初めて入った家の中で1人にされるって…この気持ちわかる!?どうすりゃいいのさ!

そんな事を思っているとリビングから繋がる扉がガチャッと音と共にひらいてビクッとしてしまった…ひぃぃもしかして家族がいるの!?いるならいるって言っといてよ!!

「…んん…お兄ちゃん…帰って…きたの…?」

扉から現れたのは小さな子供だった…その子は扉に掴まりながら少しフラフラとした足取りでリビングを見回す…そして俺と目が合う

「お兄ちゃん…だれ?」

そう言いながら俺の事をジッと見てくる…こ…怖くないよ?不審者じゃないよ?…というかお兄ちゃんって誰のことだろう?

「えっと…俺の名前はユウトよろしくね」

名前を伝えて不審者じゃない事をアピールする…すると子供は黒目をキラキラとさせて笑顔を見せる

「…僕の…名前はパル…だよ…お兄ちゃん…よろしくね…」

パル君の自己紹介を聞きながら少しパル君を見る…口調はたどたどしいがそれは歳のせいではないように見える…息苦しいのかな?大丈夫かな?

「……お兄ちゃんは…帰ってきてるの…?」

はぁ…もうわかってますよ!お兄ちゃんってハティオさんのことでしょ!ハティオさんは男!やっと現実逃避から帰ってこれたわ…

再びリビングを見回しているパル君に男のハティオさんは今2階にいるよと伝えようとして…

「っ!!ゴホッ…!ゲホッ…!ゲホ…ッ!」

「!?大丈夫!?」

急に苦しげな咳をして崩れ落ちるようにうずくまったパル君に慌てて駆け寄る…胸の辺りをギュッと両手で掴んで苦しそうにするパル君に俺はどうしたらいいのかパニックになる

その時

「……パル…っ!」

ドタドタと階段を転げるような速さで1階に走ってきたハティオさんがパル君の体を支える

「ゴホッ…!お…兄ちゃゲホッ…!」

「…ッ!無理するなっ!」

さっきまでのポーカーフェイスが崩れて慌てているような表情になるハティオさん…俺が何も出来ずにいる間にポケットから袋を出してその中の飴玉のような物をパル君に飲ませる…

しばらくすると楽になったようで咳もしなくなり眠ってしまった…パル君…大丈夫かな?もしかして病気?

ハティオさんはさっきパル君が出てきた部屋に入ってそこにあったベッドへとパル君を寝かせて少し様子を見た後リビングに戻ってくる

「あの…俺…何も出来なくて…すみません」

目の前で苦しむ子供がいたのにパニックになって何も出来なかった事を謝る…すると少し表情を崩したハティオさんがイスを用意してくれて俺とハティオさんはテーブルを挟んで向かい合わせに座る

「……いや…ユウトは悪くない…驚いただろう?すまなかった」

いつの間にかテーブルの上にはお茶が2つ置いてありハティオさんはその1つに手を伸ばす…そしてパル君の話をしてくれた…

パル君はハティオさんの年の離れた兄弟で生まれつき心臓が悪くここ数年はずっと寝たきり状態らしい…さっきのような事がよく起こるらしく塔で貰った薬を飲ませて落ち着かせるらしい…

そういうことだったか…さっきの飴玉みたいなのは塔で貰った薬だったのね…

「…どんどん心臓は悪くなっていく一方で…このまま解決策が見つからなければ…あと数年で…」

そこまで言うとハティオさんは辛そうに俯いてしまう…ものすごく苦しそうな表情に俺も苦しくなりそうだ…でも

そんなハティオさんを見て俺は考える…これはあのチート魔法の出番なんじゃないか?…と









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