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:第1章 「令和のサムライと村娘、そしてとある村の運命」
・1-19 第34話 「放置された村」
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・1-19 第34話 「放置された村」
自分1人だけでは、野盗たちを倒せそうにない。
相手は、十数人しかいないとはいえ、元騎士に率いられている集団だ。
大半が武装しているだけのごろつきなのだとしても、その中にほんの数人、戦い方を心得ている者たちがいるだけで、その危険性は飛躍的に高まる。
加えて、弓まで装備しているという。
かの天下の副将軍のご隠居が諸国を漫遊する有名なドラマでも、飛び道具は厄介な存在だった。
杖や刀しか持っていないご隠居の一行では、飛び道具に対して反撃することは難しく、飛び道具を完全に防ぐこともできない。
悪人たちを成敗する殺陣の乱戦の中で、不意に狙って来る飛び道具には一騎当千の猛者でもなすすべがないのだ。
しかし、実際にご隠居たちが飛び道具にやられてしまうことはなかった。
ご隠居が鉄砲や弓で狙われる時は大抵、おつきの忍びの者がそれに気づき、発射を阻止していたからだ。
つまり、そういう飛び道具の発射を阻止してくれる忍びたちがいない源九郎は、野盗たちには勝つことはできないということになる。
(こんなことなら、チートとかギフトとか、神様からもらっておきゃよかったな……)
自分の力だけでサムライに、[立花 源九郎]になって見せる。
そういう決意で源九郎はこの異世界に転生して来たのだが、転生初日にして、神から特別な力をもらわなかったことを後悔してしまっていた。
(いやいや、いけねぇ、いけねぇ!
俺は、後悔しないって決めてんだ。そうだろ? )
その暗い気持ちを、源九郎は慌てて振り払う。
今さら悔いたところで、過去を変えられるわけではない。
それなら、過去の積み重ねの結果としての現在を気に病むよりも、現在の積み重ねの結果としての未来をより良いものにするにはどうするべきかを考えるべきなのだ。
「というか、長老さん。
そもそも、国とかはなんとかしてくれないんですか? 」
そこでふと、源九郎は公的機関や組織に頼らないのはなぜだろうと思い至り、そのことについてたずねていた。
長老との話の中では、領主とか、そういった単語が出てきている。
その領主は戦争に行ってしまって戦死し、放棄された領主の城に野盗たちが住み着いてしまったのだということだったが、領主の代わりに税を取り立てに来ている役人が別にいるのだという。
ならば、領主の上に国家が存在しているはずだ。
国家は普通、自国の安全を保つために、防衛力を備えている。
そうでなくとも、治安を保つための警察力を機能させるために、一定の武力を保有しているものだ。
その国家の力を行使すれば、野盗ぐらい、簡単に討伐できるに違いなかった。
「だめだっぺ。
税金の取り立てに来るお役人様に陳情はしてみたんだが、とんと、音沙汰がねぇ」
しかし、長老は力なく首を左右に振るだけだった。
「お役人様は、上に伝えてくださるとおっしゃったんだがな……
この辺りは、辺境で、中央からは外れとっからな。
オラたちにとっちゃ、この村しかねんだが、お偉いさんに取っちゃ、取るに足らねぇ、いくつもある土地の一つに過ぎねぇんさ。
おまけに、戦争が長く続いてるっていう話だんべ。
とっても、オラたちのところに兵隊を割くことなんざ、できねんだべ」
その長老の様子に、源九郎は憮然とした表情で押し黙った。
フィーナから、役人たちは税金だけはしっかりと取り立てていくと聞いている。
つまり、取る物は取っているのに、納税されている側は何もしてくれないというのだ。
中央から外れた辺境にある、名前も知られていないような村。
そんな小さな存在が困っていようと、中央にいて国家の全体を仕切っている者たちからすれば、それは些末(さまつ)なことに過ぎないということだ。
国家から放置され、村人たちは野盗たちの暴虐にひたすら耐えている。
(そんなのって……、あんまりじゃねぇか! )
源九郎は憤り、テーブルの下で両手の拳を固く握りしめる。
長老たち村人たちが、苦しい状況の中でも懸命に生きようとしているということは、彼らから話を聞かなくてもわかる。
若い労働力を取られ、大切な家畜も連れ去られて。
そんな中でも村人たちは懸命に畑を耕し、命をつなごうとしているのだ。
村に入る際に目にした畑の様子は、お世辞にも良いものではなかった。
耕し方が十分ではなく、あのままでは、よほど天候に恵まれでもしなければまともな収穫など得られないに違いない。
だが、それが村人たちの精一杯なのだ。
ふと、視線を窓に向ければ、その向こうで、夕暮れが迫る中で懸命に働いている村人たちの姿を目にすることができる。
彼らは朝から晩まで、少しでも良い収穫を得られるように働き続けているのだ。
努力は裏切らない。
源九郎は多くの人と同じように、そう信じている。
だが、村人たちがどれほど懸命に努力しようと、国家の中枢の無関心と、そして野盗たちによって、実ることはないのだ。
それは、理不尽なことだった。
(神様……。
どうして、俺をこの村に来させたんだよ!? )
源九郎は、神が言っていた「シナリオ」という言葉をまた思い出していた。
神が源九郎をこの世界に転生させ、そして、まず進むべき先としてこの村を指し示したのは、決して偶然ではないはずだ。
だが、源九郎にはこの村を救うのに十分な力がなかった。
RPGなどでは、主人公は多くの仲間と協力することで難敵を打ち破るものだったが、今の源九郎にはその仲間もいない。
あまりにも苦しい、村の現状。
それを理解した今、源九郎は、自分にできることと、自分がやりたいこととの間に存在する大きな乖離に、苦悩せざるを得なかった。
自分1人だけでは、野盗たちを倒せそうにない。
相手は、十数人しかいないとはいえ、元騎士に率いられている集団だ。
大半が武装しているだけのごろつきなのだとしても、その中にほんの数人、戦い方を心得ている者たちがいるだけで、その危険性は飛躍的に高まる。
加えて、弓まで装備しているという。
かの天下の副将軍のご隠居が諸国を漫遊する有名なドラマでも、飛び道具は厄介な存在だった。
杖や刀しか持っていないご隠居の一行では、飛び道具に対して反撃することは難しく、飛び道具を完全に防ぐこともできない。
悪人たちを成敗する殺陣の乱戦の中で、不意に狙って来る飛び道具には一騎当千の猛者でもなすすべがないのだ。
しかし、実際にご隠居たちが飛び道具にやられてしまうことはなかった。
ご隠居が鉄砲や弓で狙われる時は大抵、おつきの忍びの者がそれに気づき、発射を阻止していたからだ。
つまり、そういう飛び道具の発射を阻止してくれる忍びたちがいない源九郎は、野盗たちには勝つことはできないということになる。
(こんなことなら、チートとかギフトとか、神様からもらっておきゃよかったな……)
自分の力だけでサムライに、[立花 源九郎]になって見せる。
そういう決意で源九郎はこの異世界に転生して来たのだが、転生初日にして、神から特別な力をもらわなかったことを後悔してしまっていた。
(いやいや、いけねぇ、いけねぇ!
俺は、後悔しないって決めてんだ。そうだろ? )
その暗い気持ちを、源九郎は慌てて振り払う。
今さら悔いたところで、過去を変えられるわけではない。
それなら、過去の積み重ねの結果としての現在を気に病むよりも、現在の積み重ねの結果としての未来をより良いものにするにはどうするべきかを考えるべきなのだ。
「というか、長老さん。
そもそも、国とかはなんとかしてくれないんですか? 」
そこでふと、源九郎は公的機関や組織に頼らないのはなぜだろうと思い至り、そのことについてたずねていた。
長老との話の中では、領主とか、そういった単語が出てきている。
その領主は戦争に行ってしまって戦死し、放棄された領主の城に野盗たちが住み着いてしまったのだということだったが、領主の代わりに税を取り立てに来ている役人が別にいるのだという。
ならば、領主の上に国家が存在しているはずだ。
国家は普通、自国の安全を保つために、防衛力を備えている。
そうでなくとも、治安を保つための警察力を機能させるために、一定の武力を保有しているものだ。
その国家の力を行使すれば、野盗ぐらい、簡単に討伐できるに違いなかった。
「だめだっぺ。
税金の取り立てに来るお役人様に陳情はしてみたんだが、とんと、音沙汰がねぇ」
しかし、長老は力なく首を左右に振るだけだった。
「お役人様は、上に伝えてくださるとおっしゃったんだがな……
この辺りは、辺境で、中央からは外れとっからな。
オラたちにとっちゃ、この村しかねんだが、お偉いさんに取っちゃ、取るに足らねぇ、いくつもある土地の一つに過ぎねぇんさ。
おまけに、戦争が長く続いてるっていう話だんべ。
とっても、オラたちのところに兵隊を割くことなんざ、できねんだべ」
その長老の様子に、源九郎は憮然とした表情で押し黙った。
フィーナから、役人たちは税金だけはしっかりと取り立てていくと聞いている。
つまり、取る物は取っているのに、納税されている側は何もしてくれないというのだ。
中央から外れた辺境にある、名前も知られていないような村。
そんな小さな存在が困っていようと、中央にいて国家の全体を仕切っている者たちからすれば、それは些末(さまつ)なことに過ぎないということだ。
国家から放置され、村人たちは野盗たちの暴虐にひたすら耐えている。
(そんなのって……、あんまりじゃねぇか! )
源九郎は憤り、テーブルの下で両手の拳を固く握りしめる。
長老たち村人たちが、苦しい状況の中でも懸命に生きようとしているということは、彼らから話を聞かなくてもわかる。
若い労働力を取られ、大切な家畜も連れ去られて。
そんな中でも村人たちは懸命に畑を耕し、命をつなごうとしているのだ。
村に入る際に目にした畑の様子は、お世辞にも良いものではなかった。
耕し方が十分ではなく、あのままでは、よほど天候に恵まれでもしなければまともな収穫など得られないに違いない。
だが、それが村人たちの精一杯なのだ。
ふと、視線を窓に向ければ、その向こうで、夕暮れが迫る中で懸命に働いている村人たちの姿を目にすることができる。
彼らは朝から晩まで、少しでも良い収穫を得られるように働き続けているのだ。
努力は裏切らない。
源九郎は多くの人と同じように、そう信じている。
だが、村人たちがどれほど懸命に努力しようと、国家の中枢の無関心と、そして野盗たちによって、実ることはないのだ。
それは、理不尽なことだった。
(神様……。
どうして、俺をこの村に来させたんだよ!? )
源九郎は、神が言っていた「シナリオ」という言葉をまた思い出していた。
神が源九郎をこの世界に転生させ、そして、まず進むべき先としてこの村を指し示したのは、決して偶然ではないはずだ。
だが、源九郎にはこの村を救うのに十分な力がなかった。
RPGなどでは、主人公は多くの仲間と協力することで難敵を打ち破るものだったが、今の源九郎にはその仲間もいない。
あまりにも苦しい、村の現状。
それを理解した今、源九郎は、自分にできることと、自分がやりたいこととの間に存在する大きな乖離に、苦悩せざるを得なかった。
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これは、その疑問に答える物語。
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※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。
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