異世界に来た私のチートは、秩序ある混沌でした。

14．子供

「どうしてここにいるの？」
　じっとこっちを見ているが、口を開く気配はない。

「……。」
　暫く待ってみたけどやっぱり、応答はない。
動くのもおっくうな程、弱っているのだろうか？
またしても、鞄から取り出すふりをしつつ、綺麗な水の入ったグラスを呼び出す。
黄ニラの妖精、黄色いこみらっくまの絵が付いた小さめの可愛いグラスだ。
期間限定で、とあるコンビニで、ペットボトル30本買ったら貰えていたグラスだが、
今、その事はどうでも良い。

「水を飲む？」
　しかし子供は、グラスに手を伸ばさない。
可愛い耳がこちらを向いたので、聞こえてない訳ではない……と思う。
元の肌の色も解らないほど汚れた顔の中で、金色の綺麗な眼がギョロリとこちらを向いている。

「甘い水がいい？」
　少しでも回復させてあげたい。
付加を付けた、栄養ドリンクを少し混ぜて与えるだけでも、だいぶ違うはずだ。

その時、その子の耳がぴんと張って、何かと思えば、後ろのドアが開いた。
「なんだい？その子を買うのかい？」
　現れたのは、世界は違えど、悪そうな、おじさんとおじいさんの間くらいの男の人だった。
危ない、私が美少女ならさらわれてどこかに売られてしまう所だった……。

「でも、お高いんでしょう？」
　まさか、この子を売ってるとは思わなかった。
だって、人身売買についてどうこうと言う話もあるけど、
普通、売るなら、もっとこぎれいにして付加価値付けて売るよね？
……せめて商品だと言うのならば、もっと丁寧にきちんと管理をするべき。

「そうでもないさ、見ての通り、廃棄寸前だからな。」
　え？何それ怖い。
この子、廃棄されちゃうの？
だって子供だよ？
廃棄ってどういう事？
え？全然意味解んないんだけど。

「売られた先で、暴れて喉と脚を潰されたのさ。まだ喉だけなら需要もあったけど
　喉と脚の両方だともう使い道ないからな。処分するようにって返されたんだ。
　だから、後は病死・・するのを待つだけだ。」
　酷すぎる話だった。

と言うか、喉と脚を潰すの意味が解らない。
だってそれ、絶対痛い。

そして理解した。
喋らないのではなく、喋れないのだと。
だったら、動かないのではなく、動けないのではないか？

「すぐにでも買いたいけど、今は持ち合わせがない。いくら必要だろうか？」
　一秒でも早くしないとこの子供が死んでしまう様な気がした。