演じる家族

ことは

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 夕飯を食べ終わると、未来はリビングでゴロゴロしながらバラエティ番組を見ていた。

 暖かい部屋でうとうとし始めたが、テレビからどっと笑いが起きる度に目が覚めた。

 その度に、普段意識しない体の奥底に溜まった疲れが、波のように押し寄せてくるようだった。

 どうしてこんなにも疲れているのだろうか。眠くて眠くてたまらなかった。

「そんな所で寝ると、風邪ひくわよ」

 今日子の声が遠くで聞こえた。台所で水を流す音。返事をしようと思ったが、しつこい睡魔が襲ってきて声が出ない。

 未来がまどろんでいると、リビングの扉が開く音と、ただいま、という声がした。忠義が帰宅したのだろうか。

 薄目を開けると、今日子が冷めた餃子をレンジで温め、食事の支度を整えているのが見えた。

「もう、そろそろ、本当に起きてね。ハルちゃん、お風呂入れるの手伝ってくれないと」

 うーん、と未来は寝言のような返事をした。部屋が眩しくて、目を開けられない。

「ちょっと、ハルちゃんの様子見てくるから」

 今日子の足音が遠ざかっていく。忠義が缶ビールを開ける音がする。未来は再び目を閉じた。

 バタバタッとスリッパの音がしたかと思うと、扉が乱暴に開けられる音が聞こえた。

 何か嫌な空気を感じて、未来は目を覚ました。

 今日子がリビングを出て行ってから、おそらく1、2分のことだろうが、もう何時間も寝てしまったような気がした。

「あなた、すぐに来て」

 今日子の緊張した声が、未来の意識に鋭く切り込んできた。眠気が吹っ飛ぶ。今日子の顔は蒼白だった。

「どうかしたのか」

 忠義が箸を止めて、立ち上がった。

「ハルちゃんが、鏡を……」

 その後は言葉にならず、今日子は立ち尽くしている。

「やっぱりハルちゃん、持っていたんだ……」

 未来は、声にならない呟きをもらした。

 未来は、はっとした。

――大切な物は、枕の下に隠しておくの。

 春子の声が、頭の中に甦った。

 部屋中探しても、見つからないはずだった。

「取り乱しているのか?」

 忠義が、平静を装うようにして聞いた。

 今日子が口を開く前に、春子の部屋から悲鳴が聞こえてきた。

 忠義の後を、すぐに今日子と未来が追った。
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