27 / 45
3幼なじみ
3-9
しおりを挟む
未来は、三人を家の外まで見送りに出た。
「じゃ、またね。お先にー」
美波がチラっと翔太を見ると、恵理の腕を取って足早に帰っていく。
「美波、完全にハルちゃんの話、信じているよ。まったくもう」
未来は、大げさにため息を漏らした。
翔太がどんな顔をしているか気になったが、見ることができずに、帰っていく美波と恵理の後ろ姿を見つめる。
二人の姿が向こうの角に消えても、翔太が帰る気配はない。
沈黙に耐えられなくて、未来は何か話すことがないか探した。その時、はっと気がついた。
「そういえばさ。翔君は、昔からハルちゃんのこと、ハルちゃんって呼んでいるよね」
「あぁ、そうだね。おまえのじいちゃんが、ハルちゃんって呼んでいるの聞いて、真似してたんだ」
「またおまえに戻ってる」
未来がにらみつけると、
「何が?」
と、翔太は何のことか気がついていないようだ。
「じゃぁな」
もう少し話すかと思っていたのに、翔太が急に歩き出したので、未来はふいに寂しくなった。
行かないで。心で念じたら、本当に翔太が止まった。
前を向いたまま、翔太が、
「あの話」
と言った。
夕日が翔太の背中を染めあげている。
「何の話?」
「ハルちゃんが言ったこと、俺、覚えているからな」
「何のこと?」
未来は心臓が飛び出さないように、胸を押さえた。
トクトクトク、と手の平が音を感じる。
また自分だけ勘違い、だなんてことのないようにもう一度聞いた。
「何のこと?」
「あの約束、今でも有効だからな」
心臓が少し飛び出した。手の平で、ぐいっと胸を押し返す。
未来は何も答えられない。何と答えていいのかわからない。
「おまえだって、約束したんだからな。忘れんなよ」
翔太は、一度も振り返らずにそう言うと、まっすぐ歩き出した。
――わたしも、おおきくなったら翔君のお嫁さんになる!
まだ幼い自分の声が、耳の中でこだまする。
涙が、出そうだった。目を瞑って、堪えた。
「じゃ、またね。お先にー」
美波がチラっと翔太を見ると、恵理の腕を取って足早に帰っていく。
「美波、完全にハルちゃんの話、信じているよ。まったくもう」
未来は、大げさにため息を漏らした。
翔太がどんな顔をしているか気になったが、見ることができずに、帰っていく美波と恵理の後ろ姿を見つめる。
二人の姿が向こうの角に消えても、翔太が帰る気配はない。
沈黙に耐えられなくて、未来は何か話すことがないか探した。その時、はっと気がついた。
「そういえばさ。翔君は、昔からハルちゃんのこと、ハルちゃんって呼んでいるよね」
「あぁ、そうだね。おまえのじいちゃんが、ハルちゃんって呼んでいるの聞いて、真似してたんだ」
「またおまえに戻ってる」
未来がにらみつけると、
「何が?」
と、翔太は何のことか気がついていないようだ。
「じゃぁな」
もう少し話すかと思っていたのに、翔太が急に歩き出したので、未来はふいに寂しくなった。
行かないで。心で念じたら、本当に翔太が止まった。
前を向いたまま、翔太が、
「あの話」
と言った。
夕日が翔太の背中を染めあげている。
「何の話?」
「ハルちゃんが言ったこと、俺、覚えているからな」
「何のこと?」
未来は心臓が飛び出さないように、胸を押さえた。
トクトクトク、と手の平が音を感じる。
また自分だけ勘違い、だなんてことのないようにもう一度聞いた。
「何のこと?」
「あの約束、今でも有効だからな」
心臓が少し飛び出した。手の平で、ぐいっと胸を押し返す。
未来は何も答えられない。何と答えていいのかわからない。
「おまえだって、約束したんだからな。忘れんなよ」
翔太は、一度も振り返らずにそう言うと、まっすぐ歩き出した。
――わたしも、おおきくなったら翔君のお嫁さんになる!
まだ幼い自分の声が、耳の中でこだまする。
涙が、出そうだった。目を瞑って、堪えた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
あの日の後悔と懺悔とそれと
ばってんがー森
ライト文芸
普通の高校生「二木 真人(にき まこと)」が母親の病気により、日常生活が180°変わってしまう。そんな中、家に座敷童子と思われる女の子が現れる。名は「ザシコ」。彼女を中心に様々な人の心の闇を強制的に解決することになる。「介護への苦悩」、「自分の無力さ」、それらを経て「マコ」は成長していく。そして、「ザシコ」の秘密とは……?実体験と妄想を掛け合わせたごちゃ混ぜストーリーです!
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ときめきざかりの妻たちへ
まんまるムーン
ライト文芸
高校卒業後から20年が過ぎ、朋美は夫と共に「きさらぎヶ丘」へ引っ越してきた。
そこでかつての仲良しグループのメンバーだったモッコと再会する。
他の2人のメンバーは、偶然にも近くに住んでいた。
夫と妻の役割とは…
結婚すると恋をしてはいけないのか…
夫の浮気とどう立ち向かうのか…
女の人生にはいつも悩みが付きまとう。
地元屈指のお嬢様学校の仲良しグループだった妻たちは、彼女たちの人生をどう輝かせるのか?
ときめきざかりの妻たちが繰り広げる、ちょっぴり切ないラブストーリー。
※この作品は小説家になろうにも掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる