私のバラ色ではない人生

野村にれ

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満足

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 エミアンローズが帰国したクロンデール王国では、ソアリスがエミアンローズからの手紙に、満足そうに頷いていた。

 ソアリスもキリスとマルシャから聞いたサイラスから、どのような話をしたのか聞いていた。ララシャの言い分は概ね想定内の話で、エミアンローズが落ち着いていたことに驚いたくらいであった。

 サイラスにはソアリスのおかげだとは言われたが、何度言っても効果のないララシャの影響で、あの程度で変わるわけないと正直、思っていた。

「ララシャの姿が余程、堪えたのでしょうね」
「近くにいると、気付けないということはありませんよね?」
「ないわね。側にいたけど、ずっとおかしかったわよ」

 ララシャがおかしいのは、幼い頃からであった。

「そうですよね」
「まあでも、まだ19歳ですもの。やり直せるなら、やり直した方がいいわ。そういえば、ララシャの家、汚くて臭かったそうよ」
「まあ…」
「うわ…」

 今日の侍女であるポーリアとキャロラインは、思わず臭そうな顔をした。

「しかも、一気に体重が減るかと思ったらそうでもないみたい。お給料を食費に充てているんでしょうね。美味しい物は高いからってわけでもないものね」
「ええ、美味しい料理が王都でなくても、沢山ありますからね」
「屋台とか美味しいものね」

 ソアリスも孤児院の訪問の際などに、屋台を利用することはあり、とても気に入っている。

「はい…食べたくなります」
「よく分からないソースが美味しいのよね」
「はい、あれはいけません」
「無性に食べたくなることがあります」

 侍女たちも最初は抵抗があったが、ソアリスがとても美味しそうに食べる様に、すっかり抵抗をなくした。王妃なので毒見はされるが、皆もお気に入りである。

「今日のおやつは、あのソースではないけれど、粉もので何か作って貰おうかしら」
「それは良いですね」

 ドアを叩く音と、大きな声がした。

「ケイトでしゅ!」
「まあ、食べ物の話をしていたからかしら?」
「ぐ、偶然でしょう?さすがに…」
「そうかしら?」

 キャロラインが確認をし、ケイトが入室した。突っ込んで来なくなったことはいいのだが、ソアリスはケイトを常に怪しんでいる。

「しちゅれいします」
「何かご用事ですか?」
「なにやら、けいとのあんてなにぴぴぴとはんのうがありまちた」
「え?」
「なにかおいしいおはなしをしていたでしょう?」
「まあ…怖い」

 ソアリスは口を押え、ポーリアとキャロラインもまさかという顔をしている。

「あたりでしゅか?」
「そうね、当たりだわ。何なのよ、そのアンテナは」
「おかあしゃまから、もらいうけたあんてなでちょ?」
「え?違うわよ」
「きっとそうでしゅ」
「何てことを言うの?お母様が悪いみたいじゃない」
「さずけられし、あんてなでしゅ」

 ケイトの言葉にソアリスは白目を剥きそうになった、そんなもの授けていないし、授けられしとはなんだ。

「授けられしって…何?」
「えほんのけんをそういってまちた」

 ソアリスは絵本を読んであげることはないので、アンセムかきょうだいたちか、乳母が読んであげたのだろう。

「ああ…お母様はアンテナは授けていません」
「いいえ、きっとそうでしゅ」

 ソアリスも思い返しても、アンテナなど持っていない。断じて持っていない。

 その様子を見ていたポーリアとキャロラインが、悩ましい顔をしていた。

「確かにソアリス様も、鼻が利きますわね」
「ええ、この前も柔らかいパンにたっぷりクリームを入れて、シュークリームのようにしたら、きっと売れるわと言って、料理長の弟が経営するパン屋で販売したら、今や大人気ですよ?」
「そうでしたわね」

 もこもこパンという名前で販売されており、今や王都では大人気である。

 ポーリアとキャロラインは、あながち間違いではないのではないかという顔で、ソアリスを見つめ始めた。

「いやいや、持っていませんから」


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本日もお読みいただきありがとうございます。

本日、17時から新作となる、
「ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません」を投稿いたします。

そして「私のバラ色ではない人生」は、
そろそろ完結に向かおうと思っております。

11月もどうぞよろしくお願いいたします。
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