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母娘の再会3
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「でも、一人では心細かったでしょう?」
確かに最初はどうすればいいのか、分からなかった。でも、思い返せば王妃陛下に褒められることだけは、少しだけ嬉しかった。
「ロンド王国の王妃陛下が良くしてくださいましたから」
「そ、そうなの…」
ララシャはロンド王国の王妃陛下になど、会ったこともない。
「はい、厳しく指導していただきました」
「まあ、辛かったのではない?そんな怖い方だなんて…リベルは何をしているのよ」
「指導をして貰っただけです」
「でも厳しい方なら辛かったのでしょう?リベルに言えば良かったのに」
ララシャはまた頬に手を当て、まるで私がいなかったからとでも言いたそうな顔をしている。
「そんなことをしていたから、私は教育がなっていなかったのですから、仕方ありません。お母様もちゃんとしなさいって、おっしゃっていたではありませんか、嘘だったのですか?」
エミアンローズは気を付けて、丁寧な言葉で話すようにしていた。ララシャに成長を見て貰いたいのではない、ララシャとは違うと思いたいからであった。
「いえ、そうではないけど」
今はエミアンローズに頼られたい、味方だと思われたいララシャの欲しかった答えではなかった。
「辛くても当たり前だったと思います」
「でも、エミアンが辛い思いをしていたなんて、ママ、胸が痛いわ」
「教育を受けていたのに、胸が痛いのですか?それはおかしくないですか?」
「えっ、でも、エミアンには辛い思いをして欲しくないっていうママの気持ちよ」
優しさの押し売りをしたいのかと、エミアンローズは冷めた目で見ていた。
「そうですか」
「ええ、そうよ。ママの気持ち、分かってくれた?」
「ええ」
その言葉にララシャは、ぱああと笑顔を見せ、満足そうに微笑んだ。
そして、ようやくロアンスラー公爵邸に着き、応接室に案内された。邸で待っていたマルシャは、ララシャの姿に驚きはしたが、何も言う気はなかった。
応接室にはエミアンローズとララシャ、キリスとマルシャは離れたソファに座り、メイドと念のため、護衛も控えていた。
ララシャは出されたお茶をカチャカチャと音を立て、お菓子もこぼしながら食べており、エミアンローズはこれが他者から見た私なのだと思い知った。
「確かに、全く違うわ…」
ソアリスは動きは機敏であるのに、ティーカップの音が鳴ることはなく、お菓子も一口大に切って、こぼすことなく食べていた。
「え?何…?」
「ソアリス王妃陛下とは、全く違うと思っただけです」
「そんなの当たり前じゃない!何を言っているのよ、おっかしい」
ララシャはソアリスより自分が劣っていると言われているとは気づかず、ふふっと笑い、ワンピースにのったお菓子のカスを叩いていた。
「おかわりをいただける?」
メイドが追加のお茶を入れると、ララシャは久し振りの高級なお茶の味を、やっぱりこれよねと楽しんでいた。飲み終えて、ソーサーに戻そうとした時に、エミアンローズは冷静に言い放った。
「ティーカップ、カチャカチャ、音がしていますよね?」
「え?」
「お菓子もこぼして、今、カーペットに落としましたよね?」
「…え」
「ソーサーに戻してみてください」
カチャ、カチ、カチャカチャ…
「ほら、持ち方もおかしい」
ララシャは持ち手に指を入れており、エミアンローズも何度も注意されたことであった。今でもなかなか難しくて、入れてしまう。
ララシャも、おそらく同じなのだろう。
あまりに似ていて、エミアンローズはまたちゃんとしなければいけないと言う気持ちを追加した。
「そんなことないわ、気のせいよ」
「いいえ」
「細かいこと言わないでよ」
「私も完璧には出来ていません」
「そうでしょう?じゃあ、いいじゃない」
ララシャはその言葉に途端に機嫌が良くなり、また笑い始めた。
確かに最初はどうすればいいのか、分からなかった。でも、思い返せば王妃陛下に褒められることだけは、少しだけ嬉しかった。
「ロンド王国の王妃陛下が良くしてくださいましたから」
「そ、そうなの…」
ララシャはロンド王国の王妃陛下になど、会ったこともない。
「はい、厳しく指導していただきました」
「まあ、辛かったのではない?そんな怖い方だなんて…リベルは何をしているのよ」
「指導をして貰っただけです」
「でも厳しい方なら辛かったのでしょう?リベルに言えば良かったのに」
ララシャはまた頬に手を当て、まるで私がいなかったからとでも言いたそうな顔をしている。
「そんなことをしていたから、私は教育がなっていなかったのですから、仕方ありません。お母様もちゃんとしなさいって、おっしゃっていたではありませんか、嘘だったのですか?」
エミアンローズは気を付けて、丁寧な言葉で話すようにしていた。ララシャに成長を見て貰いたいのではない、ララシャとは違うと思いたいからであった。
「いえ、そうではないけど」
今はエミアンローズに頼られたい、味方だと思われたいララシャの欲しかった答えではなかった。
「辛くても当たり前だったと思います」
「でも、エミアンが辛い思いをしていたなんて、ママ、胸が痛いわ」
「教育を受けていたのに、胸が痛いのですか?それはおかしくないですか?」
「えっ、でも、エミアンには辛い思いをして欲しくないっていうママの気持ちよ」
優しさの押し売りをしたいのかと、エミアンローズは冷めた目で見ていた。
「そうですか」
「ええ、そうよ。ママの気持ち、分かってくれた?」
「ええ」
その言葉にララシャは、ぱああと笑顔を見せ、満足そうに微笑んだ。
そして、ようやくロアンスラー公爵邸に着き、応接室に案内された。邸で待っていたマルシャは、ララシャの姿に驚きはしたが、何も言う気はなかった。
応接室にはエミアンローズとララシャ、キリスとマルシャは離れたソファに座り、メイドと念のため、護衛も控えていた。
ララシャは出されたお茶をカチャカチャと音を立て、お菓子もこぼしながら食べており、エミアンローズはこれが他者から見た私なのだと思い知った。
「確かに、全く違うわ…」
ソアリスは動きは機敏であるのに、ティーカップの音が鳴ることはなく、お菓子も一口大に切って、こぼすことなく食べていた。
「え?何…?」
「ソアリス王妃陛下とは、全く違うと思っただけです」
「そんなの当たり前じゃない!何を言っているのよ、おっかしい」
ララシャはソアリスより自分が劣っていると言われているとは気づかず、ふふっと笑い、ワンピースにのったお菓子のカスを叩いていた。
「おかわりをいただける?」
メイドが追加のお茶を入れると、ララシャは久し振りの高級なお茶の味を、やっぱりこれよねと楽しんでいた。飲み終えて、ソーサーに戻そうとした時に、エミアンローズは冷静に言い放った。
「ティーカップ、カチャカチャ、音がしていますよね?」
「え?」
「お菓子もこぼして、今、カーペットに落としましたよね?」
「…え」
「ソーサーに戻してみてください」
カチャ、カチ、カチャカチャ…
「ほら、持ち方もおかしい」
ララシャは持ち手に指を入れており、エミアンローズも何度も注意されたことであった。今でもなかなか難しくて、入れてしまう。
ララシャも、おそらく同じなのだろう。
あまりに似ていて、エミアンローズはまたちゃんとしなければいけないと言う気持ちを追加した。
「そんなことないわ、気のせいよ」
「いいえ」
「細かいこと言わないでよ」
「私も完璧には出来ていません」
「そうでしょう?じゃあ、いいじゃない」
ララシャはその言葉に途端に機嫌が良くなり、また笑い始めた。
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