306 / 401
叱咤5
しおりを挟む
「あなたは両親には愛されたのだから、幸せだと言うべきじゃないかしら?」
「親なら子どもを愛するのは当たり前じゃないですか」
「当たり前ではないのよ、親でも子どもを愛せない人もいるの。物心ついて、家族から愛された記憶が一つもない人だっているの」
貴族と孤児院、正反対な場所のようで、同じ痛みを持った子どもがいる。
「そんなこと…」
「我儘だからという理由ならまだいい方で、本人にはどうにもならない、容姿が悪いという理由だったり、ただ苦手な祖父母に似ているからという理由の人だっているのよ…そんな理由でいない者として扱われたり、暴力を振るわれたり」
エミアンローズは、驚いて言葉を失った。
成長してからは頻繁には言わなくなったが、幼い頃は特に可愛い、可愛いと両親に愛されていたと思う。今もお父様は気に掛けてくれていることは伝わっている。
「でも、甘やかすだけなのも、ある意味、虐待なんでしょうね…」
「っ」
両親に甘やかされたララシャとエミアンローズ。生まれも育ち方も似てしまったからこそ、こうなってしまったのか。
ララシャはリベル殿下に見初められて、運が良かったと言えるだろう。
もし、アンセム陛下と結婚していたら、色んな意味で持たなかっただろう。でもどちらにしても、ララシャは自分の手で自分の未来を失うことになった。
惚れた方が負けと言われているが、それも一生続くという保証がないことに、気付かなかったのだろうか。
「ララシャにそんな風に言われたの?」
「…はい」
「あなたは素敵な方に見初められて、皆に羨ましがられる結婚をするの。だって私の娘なのだからとでも言われた?」
「お母様から、聞いていたのですか?」
「いいえ、ララシャの言いそうなことよ。何の努力もしていなかったのに、私に努力が足りないと言っていたのですからね。あなたもさすがに、ララシャが共通語が出来ないことは知っているのでしょう?」
「はい…」
そのことがエミアンローズの共通語を学ぶ気持ちを失わせたと言ってもいい。お母様は使うこともないんだから、覚えなくても困らないと言っていた。
お母様が王家で何をしていたのか、聞かれてもエミアンローズも答えられない。
「ララシャの言うように、何もしなくても、婚約者が出来て、結婚して、あなたの思う幸せが必ず訪れると、本当に思っていたの?」
「でも、いとこだって」
ソアリスは幼い頃は信じても、現実を知る時があったのではないかと思った。だが、いとこも自分と同じ条件で、結婚が出来たと思っていたのかと、理解した。
「もし結婚しても、何とかなるなんて思っていたら、同じことを繰り返すことになるわ。ララシャのように離縁だってあり得るのよ?結婚しなくても、まず王女として出来ること、目の前にやれることがあるなら、何が役に立つか分からないと思ってやろうとは思えない?」
冷静になりつつあったエミアンローズは、生まれた時からララシャは太っていたので、体形の差もあり、色味は似ていても、ソアリスと似ているとは思うことはなかったが、本当に全く違うのだと思った。
お母様から二歳しか違わないと聞いていたが、おそらく努力をしていることで、ここまで若くハツラツとしているのだと身を持って感じていた。
お母様は理想を言うことはあっても、口に出すだけで、お父様に頼むだけで、自分で何かしてくれることはなかった。何度か怒ったりすることはあったが、どうしたらいいか、導いてくれるようなことはしてくれなかったことに気付いた。
「王妃陛下が母親だったら、違ったのでしょうか…」
「そうね、まずそんな体形は絶対に許さないわね」
「え?」
またその話に戻るのかと、エミアンローズは思ったが聞くことにした。
「親なら子どもを愛するのは当たり前じゃないですか」
「当たり前ではないのよ、親でも子どもを愛せない人もいるの。物心ついて、家族から愛された記憶が一つもない人だっているの」
貴族と孤児院、正反対な場所のようで、同じ痛みを持った子どもがいる。
「そんなこと…」
「我儘だからという理由ならまだいい方で、本人にはどうにもならない、容姿が悪いという理由だったり、ただ苦手な祖父母に似ているからという理由の人だっているのよ…そんな理由でいない者として扱われたり、暴力を振るわれたり」
エミアンローズは、驚いて言葉を失った。
成長してからは頻繁には言わなくなったが、幼い頃は特に可愛い、可愛いと両親に愛されていたと思う。今もお父様は気に掛けてくれていることは伝わっている。
「でも、甘やかすだけなのも、ある意味、虐待なんでしょうね…」
「っ」
両親に甘やかされたララシャとエミアンローズ。生まれも育ち方も似てしまったからこそ、こうなってしまったのか。
ララシャはリベル殿下に見初められて、運が良かったと言えるだろう。
もし、アンセム陛下と結婚していたら、色んな意味で持たなかっただろう。でもどちらにしても、ララシャは自分の手で自分の未来を失うことになった。
惚れた方が負けと言われているが、それも一生続くという保証がないことに、気付かなかったのだろうか。
「ララシャにそんな風に言われたの?」
「…はい」
「あなたは素敵な方に見初められて、皆に羨ましがられる結婚をするの。だって私の娘なのだからとでも言われた?」
「お母様から、聞いていたのですか?」
「いいえ、ララシャの言いそうなことよ。何の努力もしていなかったのに、私に努力が足りないと言っていたのですからね。あなたもさすがに、ララシャが共通語が出来ないことは知っているのでしょう?」
「はい…」
そのことがエミアンローズの共通語を学ぶ気持ちを失わせたと言ってもいい。お母様は使うこともないんだから、覚えなくても困らないと言っていた。
お母様が王家で何をしていたのか、聞かれてもエミアンローズも答えられない。
「ララシャの言うように、何もしなくても、婚約者が出来て、結婚して、あなたの思う幸せが必ず訪れると、本当に思っていたの?」
「でも、いとこだって」
ソアリスは幼い頃は信じても、現実を知る時があったのではないかと思った。だが、いとこも自分と同じ条件で、結婚が出来たと思っていたのかと、理解した。
「もし結婚しても、何とかなるなんて思っていたら、同じことを繰り返すことになるわ。ララシャのように離縁だってあり得るのよ?結婚しなくても、まず王女として出来ること、目の前にやれることがあるなら、何が役に立つか分からないと思ってやろうとは思えない?」
冷静になりつつあったエミアンローズは、生まれた時からララシャは太っていたので、体形の差もあり、色味は似ていても、ソアリスと似ているとは思うことはなかったが、本当に全く違うのだと思った。
お母様から二歳しか違わないと聞いていたが、おそらく努力をしていることで、ここまで若くハツラツとしているのだと身を持って感じていた。
お母様は理想を言うことはあっても、口に出すだけで、お父様に頼むだけで、自分で何かしてくれることはなかった。何度か怒ったりすることはあったが、どうしたらいいか、導いてくれるようなことはしてくれなかったことに気付いた。
「王妃陛下が母親だったら、違ったのでしょうか…」
「そうね、まずそんな体形は絶対に許さないわね」
「え?」
またその話に戻るのかと、エミアンローズは思ったが聞くことにした。
3,714
お気に入りに追加
8,464
あなたにおすすめの小説
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。
離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。
王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。
アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。
断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。
毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。
※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。
※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。
(完結)嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
金の亡者は出て行けって、良いですけど私の物は全部持っていきますよ?え?国の財産がなくなる?それ元々私の物なんですが。
銀杏鹿
恋愛
「出て行けスミス!お前のような金のことにしか興味のない女はもううんざりだ!」
私、エヴァ・スミスはある日突然婚約者のモーケンにそう言い渡された。
「貴女のような金の亡者はこの国の恥です!」
とかいう清廉な聖女サマが新しいお相手なら、まあ仕方ないので出ていくことにしました。
なので、私の財産を全て持っていこうと思うのです。
え?どのくらいあるかって?
──この国の全てです。この国の破綻した財政は全て私の個人資産で賄っていたので、彼らの着てる服、王宮のものも、教会のものも、所有権は私にあります。貸していただけです。
とまあ、資産を持ってさっさと国を出て海を渡ると、なんと結婚相手を探している五人の王子から求婚されてしまいました。
しきたりで、いち早く相応しい花嫁を捕まえたものが皇帝になるそうで。それで、私に。
将来のリスクと今後のキャリアを考えても、帝国の王宮は魅力的……なのですが。
どうやら五人のお相手は女性を殆ど相手したことないらしく……一体どう出てくるのか、全く予想がつきません。
私自身経験豊富というわけでもないのですが、まあ、お手並み拝見といきましょうか?
あ、なんか元いた王国は大変なことなってるらしいです、頑張って下さい。
◆◆◆◆◆◆◆◆
需要が有れば続きます。
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
殿下をくださいな、お姉さま~欲しがり過ぎた妹に、姉が最後に贈ったのは死の呪いだった~
和泉鷹央
恋愛
忌み子と呼ばれ、幼い頃から実家のなかに閉じ込められたいた少女――コンラッド伯爵の長女オリビア。
彼女は生まれながらにして、ある呪いを受け継いだ魔女だった。
本当ならば死ぬまで屋敷から出ることを許されないオリビアだったが、欲深い国王はその呪いを利用して更に国を豊かにしようと考え、第四王子との婚約を命じる。
この頃からだ。
姉のオリビアに婚約者が出来た頃から、妹のサンドラの様子がおかしくなった。
あれが欲しい、これが欲しいとわがままを言い出したのだ。
それまではとても物わかりのよい子だったのに。
半年後――。
オリビアと婚約者、王太子ジョシュアの結婚式が間近に迫ったある日。
サンドラは呆れたことに、王太子が欲しいと言い出した。
オリビアの我慢はとうとう限界に達してしまい……
最後はハッピーエンドです。
別の投稿サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる