私のバラ色ではない人生

野村にれ

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叱咤5

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「あなたは両親には愛されたのだから、幸せだと言うべきじゃないかしら?」
「親なら子どもを愛するのは当たり前じゃないですか」
「当たり前ではないのよ、親でも子どもを愛せない人もいるの。物心ついて、家族から愛された記憶が一つもない人だっているの」

 貴族と孤児院、正反対な場所のようで、同じ痛みを持った子どもがいる。

「そんなこと…」
「我儘だからという理由ならまだいい方で、本人にはどうにもならない、容姿が悪いという理由だったり、ただ苦手な祖父母に似ているからという理由の人だっているのよ…そんな理由でいない者として扱われたり、暴力を振るわれたり」

 エミアンローズは、驚いて言葉を失った。

 成長してからは頻繁には言わなくなったが、幼い頃は特に可愛い、可愛いと両親に愛されていたと思う。今もお父様は気に掛けてくれていることは伝わっている。

「でも、甘やかすだけなのも、ある意味、虐待なんでしょうね…」
「っ」

 両親に甘やかされたララシャとエミアンローズ。生まれも育ち方も似てしまったからこそ、こうなってしまったのか。

 ララシャはリベル殿下に見初められて、運が良かったと言えるだろう。

 もし、アンセム陛下と結婚していたら、色んな意味で持たなかっただろう。でもどちらにしても、ララシャは自分の手で自分の未来を失うことになった。

 惚れた方が負けと言われているが、それも一生続くという保証がないことに、気付かなかったのだろうか。

「ララシャにそんな風に言われたの?」
「…はい」
「あなたは素敵な方に見初められて、皆に羨ましがられる結婚をするの。だって私の娘なのだからとでも言われた?」
「お母様から、聞いていたのですか?」
「いいえ、ララシャの言いそうなことよ。何の努力もしていなかったのに、私に努力が足りないと言っていたのですからね。あなたもさすがに、ララシャが共通語が出来ないことは知っているのでしょう?」
「はい…」

 そのことがエミアンローズの共通語を学ぶ気持ちを失わせたと言ってもいい。お母様は使うこともないんだから、覚えなくても困らないと言っていた。

 お母様が王家で何をしていたのか、聞かれてもエミアンローズも答えられない。

「ララシャの言うように、何もしなくても、婚約者が出来て、結婚して、あなたの思う幸せが必ず訪れると、本当に思っていたの?」
「でも、いとこだって」

 ソアリスは幼い頃は信じても、現実を知る時があったのではないかと思った。だが、いとこも自分と同じ条件で、結婚が出来たと思っていたのかと、理解した。

「もし結婚しても、何とかなるなんて思っていたら、同じことを繰り返すことになるわ。ララシャのように離縁だってあり得るのよ?結婚しなくても、まず王女として出来ること、目の前にやれることがあるなら、何が役に立つか分からないと思ってやろうとは思えない?」

 冷静になりつつあったエミアンローズは、生まれた時からララシャは太っていたので、体形の差もあり、色味は似ていても、ソアリスと似ているとは思うことはなかったが、本当に全く違うのだと思った。

 お母様から二歳しか違わないと聞いていたが、おそらく努力をしていることで、ここまで若くハツラツとしているのだと身を持って感じていた。

 お母様は理想を言うことはあっても、口に出すだけで、お父様に頼むだけで、自分で何かしてくれることはなかった。何度か怒ったりすることはあったが、どうしたらいいか、導いてくれるようなことはしてくれなかったことに気付いた。

「王妃陛下が母親だったら、違ったのでしょうか…」
「そうね、まずそんな体形は絶対に許さないわね」
「え?」

 またその話に戻るのかと、エミアンローズは思ったが聞くことにした。
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