私のバラ色ではない人生

ミフルの結婚１

　そして、時は経ち、ミフルは無事に学園を卒業した。

　同時に、結婚のためにエスザール王国に旅立つ日が迫っており、兄夫妻たちや甥や姪、アリルやお腹の大きくなったエクルも、訪ねて来ては時間を過ごした。

　可愛いカイルスとケイトも、余すところなく堪能していた。

　そして、最後に全員を呼んで、食事をすることになった。皆で色んな話をして、賑やかな夕食を楽しんだ。そして、翌日にミフルはエスザール王国に旅立った。

　まだ結婚式があるので、両陛下とカイルスとケイト、王太子であるユリウス、アリルとルーファは出席する予定になっている。

　ミフルは何度も行っていたこともあり、ずっとお待ちしておりましたと、歓迎される形で受け入れられた。

　そして、結婚式のために、さすがに全員で行くことは出来ず、ルルエとエクルは妊娠中であるために、マイノスとエクシアーヌに任せて、出席することになった。

　アリルとルーファは王族ではないために、向こうで会うことになっている。

　ケイトは何が食べられるのかなと嬉しそうで、今回もご褒美付きのフラワーガールを務めることになっている。

　無事に到着すると、ミフルが待ち構えていた。

「ミフル！」

　声を上げたのは、アンセムだった。

「無事、到着して良かったですわ」

　アンセムとしては、駆け寄って抱きしめてしまいたいくらいだったが、さすがに控えることにした。

「「お腹が空いたわ（おなきゃがすいたわ）」」

　重なった声は勿論、ソアリスとケイトであった。

「もう！お母様もケイトも、相変わらずね」
「ケイト、真似しないで頂戴」
「おかしゃまこそ」

　エスザール王国の者たちは、ミフルとケイトが似ていることに感動し、その上、口の達者な王女殿下に驚きながらも、微笑ましい姿に思わず笑みが零れていた。

　ご希望通りに昼食にありついたソアリスとケイト。国王夫妻、王太子夫妻、グレイ王子殿下も一堂に会して、全員王族という状況であった。

　その中でもケイトはいつもと変わらずだが、食べたことがない物もあり、『これはなぁに？』と聞きながら、『おいち』と言いながら、パクパク食べていた。ミフルにおかわりはさせないで欲しいと言われていたので、皆グッと我慢した。

「本当によくお食べになり、言葉も大人顔負けですな」

　クート国王陛下はまるで孫を見るかのように、微笑みながら言った。

「申し訳ありません、ミラン様に似ているのに、中身はどうやら私にそっくりのようで…無念でございます」
「そのようなことはありません」

　陛下はハハハっと笑っていたが、ソアリスは心底残念だという顔をしている。

「私もまさかこんなことになるとは思わず、想定外でございます。物凄く喋りますので、どうかお許しくださいませ」
「いえいえ、こんな可愛らしい王女様にお会い出来て光栄です」
「わたちは、よくたべて、よくうんどうをちていましゅ」

　突然、ケイトが話し始めて、ソアリスは何を言い出すのかと思ったが、誰かに吹き込まれたような定型文である。

「それは素晴らしいですね」
「ありがとうございましゅ。でしゅので、おかわりをいただけましぇんか」
「ケイト…おかわりは駄目だと言ったでしょう？」

　ソアリスはようやく、おかわりへの伏線だと気付いた。

「でも、こくおうへいかがいいですよっていったら、いいでちょ？」
「何てことを言い出すの…」
「おかしゃま、ここはこくおうへいかのおくになのよ？おかしゃまのこちょばよりも、こくおうへいかがいいですよっていうほうが、ちゅごいのよ？」

　ソアリスの目は半分閉じられ、誰の入れ知恵かとアンセムとユリウスとカイルスを見たが、首を振っており、ミフルにまで怪訝な顔を向けた。

「お母様、誰の入れ知恵だと思っているのでしょう？」
「違うの？」