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王妃と王女の帰還3
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「はい、ソアリス様は一応、ケイト殿下に配慮、そしてララシャ嬢は悪い口は通用しないということで、憂さ晴らしも兼ねて共通語で捲し立てておりました」
ソアリスはスープを啜りながら、そうそうと頷いている。
「そして、ララシャ嬢はやはり共通語をほとんど分かっていない、いえ、ほぼ分かっていない様子でした」
「事実だったんだな」
アンセムも婚約者時代に聞かされていたが、使ってみれば簡単に露呈する。ソアリスは確認と、逆手に取って、利用したのだろう。
「はい、苦手だとか、使っていなかったからと言い訳をしておりましたが、仮にも王子妃だった人間が言っていい言葉ではありませんでした。ケイト殿下の方が、共通語の犬と猫を理解されて、カイルス殿下に教えて貰ったという自己紹介までされました。素晴らしかったです」
「なんと!ケイト話せるのか?」
「ちゃんと覚えていたんだね~偉いね、ケイト~」
カイルスはケイトの横に座っていたので、頭を撫でており、ケイトも自慢気な顔で嬉しそうである。
「お父様たちにも聞かせてあげたら?」
『こんにちは、わたしはけいと・ぐれんばれんです。たべることがだいすきです』
皆、驚きと同時に笑みがこぼれて、拍手喝さいである。
ユリウスとルルエ、マイノスとエクシアーヌは顔を見合わせて、素直に凄いなと笑っている。すっかり、ケイトの自身の子どもたちとは、別人種だと考えている。
「へへへ、ちゅごい?」
「ああ、凄いじゃないか」
「上手だったね、また教えてあげるからね」
「うん!」
またカイルスに撫でて貰って、ケイトは嬉しそうにしている。
「メディナ夫人、続けてくれ」
「はい!ソアリス様はララシャ嬢にやるべきことをせずに、しなくていいことをして、自ら夫も娘も、王子妃という立場も手放したのだと突き付けました」
メディナはその言葉に、ララシャの仕出かした愚かなことが、全て凝縮されていると感じていた。
「まさにその通りだな、大人しくしておれば、一応は王子妃のままでいれたのに。何がしたかったんだろうな?」
「ちやほやされることを、好んでらっしゃる様子でしたので、注目されたいと思っていたのではないでしょうか」
「ふちょってるから、ちゅうもくちゃれてたよ?」
「さようでございますね」
「うん」
ララシャはそのような注目の仕方をしたかったわけではないが、皆、ララシャのあまりに変わった姿には注目していた。
「王子妃として何をしていたのか問う前に、ソアリス様がいるだけでいいとか、美しく着飾って華を添えるとか、子どもを産むとかは勘弁してと言うと、何も言えなくなっておりました」
「さすがだな」
「はい、言いそうなことを見抜いてらしたのでしょう」
ソアリスは再びパンを食べながら、そうそうと頷いている。
「まともなことは何一つ言っていなかったというのが、正直な感想でござました」
「メディナ夫人、ありがとう」
「いえ」
メディナは頭を下げて、後ろに下がった。
「おとしゃま」
「何だい?」
「ゆうちょくはごうきゃばんよね?」
昼食を食べたばかりだというのに、夕食のことを考えている。いや、正確にはおやつを挟んでの夕食のことを考えている。
「ああ、豪華版だ」
「やった!」
「ケイト、おやつもどうせ食べるんでしょうから、ログハウスに行って、運動してらっしゃい」
「あい!」
ソアリスに似ているので、食べることも好きだが、運動も好きである。メイドと護衛に付き添われて、楽しそうな足取りで去って行った。
「やはり大物だな…」
「ケイトが私にね、言ったの」
「何を?」
「お母様に似ていて嬉しいって、5人に好きと、カイルスには大好きを沢山貰ったけど、7人も産んだのに初めて言われたわ」
「今でも大好きですよ、お母様」
「まあっ!ありがとう、カイルス!お母様もよ」
「ふふっ、嬉しいです」
最近は会いに来ることは変わりないが、言っては来なくなっていたが、今でも恥ずかしげもなく言えるのがカイルスである。
ソアリスはスープを啜りながら、そうそうと頷いている。
「そして、ララシャ嬢はやはり共通語をほとんど分かっていない、いえ、ほぼ分かっていない様子でした」
「事実だったんだな」
アンセムも婚約者時代に聞かされていたが、使ってみれば簡単に露呈する。ソアリスは確認と、逆手に取って、利用したのだろう。
「はい、苦手だとか、使っていなかったからと言い訳をしておりましたが、仮にも王子妃だった人間が言っていい言葉ではありませんでした。ケイト殿下の方が、共通語の犬と猫を理解されて、カイルス殿下に教えて貰ったという自己紹介までされました。素晴らしかったです」
「なんと!ケイト話せるのか?」
「ちゃんと覚えていたんだね~偉いね、ケイト~」
カイルスはケイトの横に座っていたので、頭を撫でており、ケイトも自慢気な顔で嬉しそうである。
「お父様たちにも聞かせてあげたら?」
『こんにちは、わたしはけいと・ぐれんばれんです。たべることがだいすきです』
皆、驚きと同時に笑みがこぼれて、拍手喝さいである。
ユリウスとルルエ、マイノスとエクシアーヌは顔を見合わせて、素直に凄いなと笑っている。すっかり、ケイトの自身の子どもたちとは、別人種だと考えている。
「へへへ、ちゅごい?」
「ああ、凄いじゃないか」
「上手だったね、また教えてあげるからね」
「うん!」
またカイルスに撫でて貰って、ケイトは嬉しそうにしている。
「メディナ夫人、続けてくれ」
「はい!ソアリス様はララシャ嬢にやるべきことをせずに、しなくていいことをして、自ら夫も娘も、王子妃という立場も手放したのだと突き付けました」
メディナはその言葉に、ララシャの仕出かした愚かなことが、全て凝縮されていると感じていた。
「まさにその通りだな、大人しくしておれば、一応は王子妃のままでいれたのに。何がしたかったんだろうな?」
「ちやほやされることを、好んでらっしゃる様子でしたので、注目されたいと思っていたのではないでしょうか」
「ふちょってるから、ちゅうもくちゃれてたよ?」
「さようでございますね」
「うん」
ララシャはそのような注目の仕方をしたかったわけではないが、皆、ララシャのあまりに変わった姿には注目していた。
「王子妃として何をしていたのか問う前に、ソアリス様がいるだけでいいとか、美しく着飾って華を添えるとか、子どもを産むとかは勘弁してと言うと、何も言えなくなっておりました」
「さすがだな」
「はい、言いそうなことを見抜いてらしたのでしょう」
ソアリスは再びパンを食べながら、そうそうと頷いている。
「まともなことは何一つ言っていなかったというのが、正直な感想でござました」
「メディナ夫人、ありがとう」
「いえ」
メディナは頭を下げて、後ろに下がった。
「おとしゃま」
「何だい?」
「ゆうちょくはごうきゃばんよね?」
昼食を食べたばかりだというのに、夕食のことを考えている。いや、正確にはおやつを挟んでの夕食のことを考えている。
「ああ、豪華版だ」
「やった!」
「ケイト、おやつもどうせ食べるんでしょうから、ログハウスに行って、運動してらっしゃい」
「あい!」
ソアリスに似ているので、食べることも好きだが、運動も好きである。メイドと護衛に付き添われて、楽しそうな足取りで去って行った。
「やはり大物だな…」
「ケイトが私にね、言ったの」
「何を?」
「お母様に似ていて嬉しいって、5人に好きと、カイルスには大好きを沢山貰ったけど、7人も産んだのに初めて言われたわ」
「今でも大好きですよ、お母様」
「まあっ!ありがとう、カイルス!お母様もよ」
「ふふっ、嬉しいです」
最近は会いに来ることは変わりないが、言っては来なくなっていたが、今でも恥ずかしげもなく言えるのがカイルスである。
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