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仁義なき対決3
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「なんだ、ソアリスだったの」
「ええ、お座りになって」
「えっ、オードエル公爵も、まあ、そういうことね」
オードエル公爵に気付いたララシャは、嬉々とした声を上げた。肥え太った体で、ドサリとソファに座り、心なしかオードエル公爵に近い位置である。
そして、ようやくケイトの存在に気付いた。
「どうして娘まで連れているの?常識がないのではなくて?」
「どうしてだめなの?」
「え?」
「どうしてだめなの?」
オードエル公爵とミソラに向けられたものではなく、ソアリスに向かってであったために、答えているのは当のケイトである。
「だってこれから大人の話をするのだから、子どもがいたら話し辛いじゃないって、子どもに言っても分からないでしょう?」
「そのようなことはございませんので、ケイト殿下は心配なさらないでください」
「ちょうよね~」
ララシャには目も向けず、ケイトに答えたのはオードエル公爵である。
「そうでございます」
「サ、サリエスト様が、そうおっしゃるなら仕方ないわね」
ソアリスはララシャの言葉よりも、邸にいるので、コルセットをしていない様子のララシャが座ると膨らんだ腹部が、ドレスの上からでも三段腹になっていることが気になって、眉をひそめていた。
「大人しくしているのよ?ソアリスの子だから、心配なのよね」
ケイトにどうして不躾な態度が取れるのか理解が出来なかった。キリスとマルシャですら、怒りを感じていた。
「おかあしゃま、このふとったおばは、けいとをばかにしたの?」
ララシャをおばという言い方は、もはや伝統となっている。伯母と言っているように見せかけて、ばばあの丁寧な言い方ようなものである。
「そうね、お母様とケイトを馬鹿にしたの。この肥え太った伯母はね、自分が一番なの。中年になっても、自分が一番魅力的で可愛いと思っていて、頭があまり良くないことも、肥え太っていることも認められないの」
「っな!ソアリス、なんてことを言うの!」
ララシャは怒るというよりは慌てた素振りを見せ、なぜなのかはオードエル公爵がいるのにという意味である。
「ふとっていりゅことも?」
「そうよ」
「こんにゃにふとっているのに?おっかしい」
ケイトは鼻に皺を寄せて、クフフと笑った。
「っな!」
「昔はね、ネズミかってくらい食べていなかったから、痩せていたのを、食べても太らないと言って、皆に羨ましいと言われることが自慢だったの。お母様にも毎日、私と違ってあなたは太っているわねって言っていたの」
「おかしゃまに?」
「そう、クソみたいな自慢でしょう?それなのに、今度は肥え太って、皆に誰なのか分からない、見る影もない、人ではなく肉の塊でしょう?とか、転がしたらよく転がって行きそうって、笑われているのよ」
影で笑い者にされているので、ララシャは知らない。
「おにくはちゅきだけど、ふとったおばのにくはいらにゃいわ~」
「お母様もよ、中年の肉なんていらないわ」
「わりゃわれてとうじぇんね」
「でしょう?」
ソアリスが捲し立てて話しても、完全に会話が成り立っており、王家では当たり前の光景である。
「ソアリスいい加減にして!」
『王子妃として嫁いだのに共通語も出来ない?一体あなたは何をしていたの?』
ソアリスは共通語で話したが、ララシャは何も答えなかった。
『本当に分からないのね、学園でも授業にあったでしょう?しかも、あなた王太子妃教育を受けていたのよね?一体、何をしていたの?』
さすがにソアリスと同じように受けていたはずだったので、多少は分かっているのかと思って話したが、本当に分からないのかと、呆れるしかなかった。
ララシャも昔は習っていたが、もう二十年以上前で、身に付いていなかった上に、使っていなかったことで、全く聞き取れていない。
公爵令嬢としてですら、身に付けておくべきことである。
「ええ、お座りになって」
「えっ、オードエル公爵も、まあ、そういうことね」
オードエル公爵に気付いたララシャは、嬉々とした声を上げた。肥え太った体で、ドサリとソファに座り、心なしかオードエル公爵に近い位置である。
そして、ようやくケイトの存在に気付いた。
「どうして娘まで連れているの?常識がないのではなくて?」
「どうしてだめなの?」
「え?」
「どうしてだめなの?」
オードエル公爵とミソラに向けられたものではなく、ソアリスに向かってであったために、答えているのは当のケイトである。
「だってこれから大人の話をするのだから、子どもがいたら話し辛いじゃないって、子どもに言っても分からないでしょう?」
「そのようなことはございませんので、ケイト殿下は心配なさらないでください」
「ちょうよね~」
ララシャには目も向けず、ケイトに答えたのはオードエル公爵である。
「そうでございます」
「サ、サリエスト様が、そうおっしゃるなら仕方ないわね」
ソアリスはララシャの言葉よりも、邸にいるので、コルセットをしていない様子のララシャが座ると膨らんだ腹部が、ドレスの上からでも三段腹になっていることが気になって、眉をひそめていた。
「大人しくしているのよ?ソアリスの子だから、心配なのよね」
ケイトにどうして不躾な態度が取れるのか理解が出来なかった。キリスとマルシャですら、怒りを感じていた。
「おかあしゃま、このふとったおばは、けいとをばかにしたの?」
ララシャをおばという言い方は、もはや伝統となっている。伯母と言っているように見せかけて、ばばあの丁寧な言い方ようなものである。
「そうね、お母様とケイトを馬鹿にしたの。この肥え太った伯母はね、自分が一番なの。中年になっても、自分が一番魅力的で可愛いと思っていて、頭があまり良くないことも、肥え太っていることも認められないの」
「っな!ソアリス、なんてことを言うの!」
ララシャは怒るというよりは慌てた素振りを見せ、なぜなのかはオードエル公爵がいるのにという意味である。
「ふとっていりゅことも?」
「そうよ」
「こんにゃにふとっているのに?おっかしい」
ケイトは鼻に皺を寄せて、クフフと笑った。
「っな!」
「昔はね、ネズミかってくらい食べていなかったから、痩せていたのを、食べても太らないと言って、皆に羨ましいと言われることが自慢だったの。お母様にも毎日、私と違ってあなたは太っているわねって言っていたの」
「おかしゃまに?」
「そう、クソみたいな自慢でしょう?それなのに、今度は肥え太って、皆に誰なのか分からない、見る影もない、人ではなく肉の塊でしょう?とか、転がしたらよく転がって行きそうって、笑われているのよ」
影で笑い者にされているので、ララシャは知らない。
「おにくはちゅきだけど、ふとったおばのにくはいらにゃいわ~」
「お母様もよ、中年の肉なんていらないわ」
「わりゃわれてとうじぇんね」
「でしょう?」
ソアリスが捲し立てて話しても、完全に会話が成り立っており、王家では当たり前の光景である。
「ソアリスいい加減にして!」
『王子妃として嫁いだのに共通語も出来ない?一体あなたは何をしていたの?』
ソアリスは共通語で話したが、ララシャは何も答えなかった。
『本当に分からないのね、学園でも授業にあったでしょう?しかも、あなた王太子妃教育を受けていたのよね?一体、何をしていたの?』
さすがにソアリスと同じように受けていたはずだったので、多少は分かっているのかと思って話したが、本当に分からないのかと、呆れるしかなかった。
ララシャも昔は習っていたが、もう二十年以上前で、身に付いていなかった上に、使っていなかったことで、全く聞き取れていない。
公爵令嬢としてですら、身に付けておくべきことである。
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