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悲劇のヒロイン再び4
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「エスザール王国に首を差し出してということもあったはずよ?あなただけではなく、娘もね」
「…そんなはずは」
「エスザール王国が許さなかったら、そうするしかないでしょう」
ルーエンヌもロアンスラー公爵令嬢として生きていたので、生死に係ることになっていても、驚きはしない。
「あなたは娘のためと言って、娘を殺しかけているの。お兄様に聞かなかったの?お兄様もここまで言わないと理解が出来ないとは、思っていないのかもしれないわね」
さすが妹というべきか、その通りである。さすがに王族であったので、理解しているだろうと思い、話をしていなかった。
「もし、クロンデール王国側が伯母と従妹が迷惑を掛けたから、婚約は止めましょうってなっていたら、きっとミフル殿下が嫁いでくるのを楽しみに待っている人たちは、あなたと娘を恨んだでしょうね」
ララシャとエミアンローズと血の繋がりがあるために、辞退するということも選択としてあったのではないかと、ルーエンヌは思っていた。
「でもエミアンが嫁げばいいことじゃない」
「はあ?馬鹿なの!?」
青筋を立てて、思わず大きな声を出した。側にいた執事は、落ち着いてくださいと宥めている。
「はあ…そんなことになるはずないじゃない。首を差し出すことになっていたという話だと言っているでしょう。いい加減にして頂戴」
「叔母様はエミアンに会ったことがないから、私に似て、とても可愛いの!」
「娘も同じ体形なの?王族として人前に出るのに、何も言われなかったの?」
「言、言われないわよ」
ピデム王国の王族にこのような体形の方はいなかったので、異質だったろう。
ルーエンヌも王族に近い立場であったことから、王太子妃の母であるならばと、マルシャの姿に何度も苦言を呈していた。
「何度もあなたの母親にも言ったのよ、痩せなさいと…」
「ええ?お母様に?そうなの?」
ララシャは馬鹿にしたように笑ったが、その様子が不気味でしかなかった。
「あなたも痩せなさい、高位貴族として相応しくないわ。ちゃんと自分を見つめ直しなさい。分かったわね?」
「酷いわ…私は、なかなか妊娠が出来なかったせいなの…」
「そう言えば、同情を買えると思ったの?妊娠で、太ってそのままなだけでしょう?平民や下位貴族ならいいわよ、でも高位貴族は貴族としての務めでもあるの。そのくらい王族だったのなら、分かるでしょう?」
その通りだったので、ララシャも答えに窮した。
「はあ…この国にいた頃から怪しかったけど、やはり成長していなかったのね」
「私は王太子の婚約者で」
「ええ、おこぼれのね!ソアリスがおこぼれ婚なんて言われて、私としてはララシャの方がそうだと思っていたわよ」
おこぼれと言われたのはソアリスであり、ララシャもそのことは知っており、そうなるわよねと笑っていた。だが、実はララシャの方がおこぼれは先である。
「は?」
「だってそうじゃない、アイリーン王女殿下が王太子にならないとなったから、サイラスとの縁がなくなって、まあ相性も悪かったから良かったけど、それでアンセム王子殿下の婚約者に、たまたま先に生まれたあなたがなれただけでしょう?」
「それでも、私が選ばれて…」
ララシャは運が良かったではなく、選ばれるということにプライドを持っていた。
「生まれただけじゃない、その後は努力もせずに怠慢ばかり」
「ちゃんとやっていたわ!」
「嘘ばっかり!私はあなたの教育担当に聞いたのよ?逃げてばかりだったと、本当に恥ずかしかったわ」
どうにかなると思っていた当時のララシャは、他者と未来に託していたが、今となっては結果が全てである。
「でも、ソアリスだって不出来で」
「ソアリスはね、やる気がないだけだったの!あの子は、体を動かす方が好きだったから。そうでなければ、王妃になんてなれるはずがないでしょう?」
「…そんなはずは」
「エスザール王国が許さなかったら、そうするしかないでしょう」
ルーエンヌもロアンスラー公爵令嬢として生きていたので、生死に係ることになっていても、驚きはしない。
「あなたは娘のためと言って、娘を殺しかけているの。お兄様に聞かなかったの?お兄様もここまで言わないと理解が出来ないとは、思っていないのかもしれないわね」
さすが妹というべきか、その通りである。さすがに王族であったので、理解しているだろうと思い、話をしていなかった。
「もし、クロンデール王国側が伯母と従妹が迷惑を掛けたから、婚約は止めましょうってなっていたら、きっとミフル殿下が嫁いでくるのを楽しみに待っている人たちは、あなたと娘を恨んだでしょうね」
ララシャとエミアンローズと血の繋がりがあるために、辞退するということも選択としてあったのではないかと、ルーエンヌは思っていた。
「でもエミアンが嫁げばいいことじゃない」
「はあ?馬鹿なの!?」
青筋を立てて、思わず大きな声を出した。側にいた執事は、落ち着いてくださいと宥めている。
「はあ…そんなことになるはずないじゃない。首を差し出すことになっていたという話だと言っているでしょう。いい加減にして頂戴」
「叔母様はエミアンに会ったことがないから、私に似て、とても可愛いの!」
「娘も同じ体形なの?王族として人前に出るのに、何も言われなかったの?」
「言、言われないわよ」
ピデム王国の王族にこのような体形の方はいなかったので、異質だったろう。
ルーエンヌも王族に近い立場であったことから、王太子妃の母であるならばと、マルシャの姿に何度も苦言を呈していた。
「何度もあなたの母親にも言ったのよ、痩せなさいと…」
「ええ?お母様に?そうなの?」
ララシャは馬鹿にしたように笑ったが、その様子が不気味でしかなかった。
「あなたも痩せなさい、高位貴族として相応しくないわ。ちゃんと自分を見つめ直しなさい。分かったわね?」
「酷いわ…私は、なかなか妊娠が出来なかったせいなの…」
「そう言えば、同情を買えると思ったの?妊娠で、太ってそのままなだけでしょう?平民や下位貴族ならいいわよ、でも高位貴族は貴族としての務めでもあるの。そのくらい王族だったのなら、分かるでしょう?」
その通りだったので、ララシャも答えに窮した。
「はあ…この国にいた頃から怪しかったけど、やはり成長していなかったのね」
「私は王太子の婚約者で」
「ええ、おこぼれのね!ソアリスがおこぼれ婚なんて言われて、私としてはララシャの方がそうだと思っていたわよ」
おこぼれと言われたのはソアリスであり、ララシャもそのことは知っており、そうなるわよねと笑っていた。だが、実はララシャの方がおこぼれは先である。
「は?」
「だってそうじゃない、アイリーン王女殿下が王太子にならないとなったから、サイラスとの縁がなくなって、まあ相性も悪かったから良かったけど、それでアンセム王子殿下の婚約者に、たまたま先に生まれたあなたがなれただけでしょう?」
「それでも、私が選ばれて…」
ララシャは運が良かったではなく、選ばれるということにプライドを持っていた。
「生まれただけじゃない、その後は努力もせずに怠慢ばかり」
「ちゃんとやっていたわ!」
「嘘ばっかり!私はあなたの教育担当に聞いたのよ?逃げてばかりだったと、本当に恥ずかしかったわ」
どうにかなると思っていた当時のララシャは、他者と未来に託していたが、今となっては結果が全てである。
「でも、ソアリスだって不出来で」
「ソアリスはね、やる気がないだけだったの!あの子は、体を動かす方が好きだったから。そうでなければ、王妃になんてなれるはずがないでしょう?」
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