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悲劇のヒロイン再び2
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「ララシャ・ロアンスラーですわ。ルーエンヌ叔母様を呼んでいただける?」
ララシャは開始時間を知らなかったので、まだパーティーの入場は始まっていなかった。叔母様にも同情を買わなければならないので、丁度良く、待たせて貰えばいいと、ルーエンヌを呼ぶことにした。
門番はロアンスラーの名前に困惑し、名前を名乗ったことは良かったが、招待状も持っていなければ、風貌も変わってしまっているので、本人かすら分からない。
「少々、お待ちください」
門番は万が一を考えて、執事に確認をすることにした。
「早くして頂戴ね」
ララシャはすぐに入れては貰えると思ったが、あまり騒いで問題になってはいけないと、静かに待つことにした。
しばらくすると、執事が邸から出て来たが、ララシャだと確認は出来ずに、ララシャと話すことなく戻っていった。
埒が明かないので、ルーエンヌ前伯爵夫人に相談することにした。
「ララシャが?」
「はい…ですが、風貌が変わられたのか、私にはご本人かどうか判断が出来ませんでした。ですが、マルシャ様には似てらっしゃるとは思います」
ルーエンヌは当主夫人ではないため、参加はするが、準備などは現伯爵夫妻に任せているので、体は空いていた。
「私も最後に見たのは…随分前だもの。一体、何をしに来たの?」
「分かりませんが、ドレスアップはしてらっしゃるようでした」
「パーティーに参加しようと思って来たということ?」
「そうかもしれませんが、一応、ロアンスラー公爵家の方ですから」
「一応ね…」
ルーエンヌも、ララシャの事情は兄であるキリスに聞いている。
元々、甘さの見られる娘だったが、キリスとマルシャが王太子殿下との婚約者だからと、優遇していた。
だが、今となっては不出来なララシャを庇い、ピデム王国にも見放された形となり、肩身の狭い思いをしている。
ソアリスの生家ということ、サイラスはソアリスと多少和解したようで、ロアンスラー公爵家は維持が出来ているという状態である。
正直、生家ではあるが、ざまあみろと思った。
とはいってもルーエンヌは、ララシャともソアリスとも、特別親しかったわけではない。時折会うだけで、その場限りの関係であった。
それでもソアリスに、ロアンスラー公爵夫妻が嫌われていることには気づいた。
なぜソアリスに嫌われているのかと兄・キリスに訊ねると、マルシャが手を上げていたという。ソアリスに公表してしまえばいいと伝えた。
『ロアンスラー公爵家のことは考えなくていいわ、後ろ盾は今のあなたなら私でも十分出来るわ』
『いいえ、自分たちが懺悔するならともかく、私が言ってしまったら、脅せなくなるじゃない?一生相手にされずに、後悔をして貰わなくちゃ』
『そんなに…』
その表情は、奥深い恨みがあるのだと思った。確かに、サイラスとララシャには行わずに、お転婆なソアリスだけに手を上げていたという。恨まれて当然だろう。
サイラスはともかく、出来の悪いララシャではなく、今王妃として、この国の女性のトップになったソアリスに手を上げるなど、後悔しかないだろう。
『人って傷付くのよ?子どもでも、大人でもね。謝ったくらいで、なかったことにされたら堪らないもの。王妃だから許さなきゃいけないの?』
『そんなことはないわ』
『そうでしょう?心が狭くたって、昔のことだと言われたって、同じ目に遭わせてくれるわけでもあるまいし。でもお兄様だけは利用させて貰うわ』
サイラスは近年では従順になり、みごとにソアリスの目論見通りになったようだ。
ルーエンヌが邸から出ると、門のところに体格のいい中年の女性が立っていた。遠目で見るとマルシャには見える。
「あれが、ララシャ…?」
「…そうだとおっしゃっています」
ララシャは開始時間を知らなかったので、まだパーティーの入場は始まっていなかった。叔母様にも同情を買わなければならないので、丁度良く、待たせて貰えばいいと、ルーエンヌを呼ぶことにした。
門番はロアンスラーの名前に困惑し、名前を名乗ったことは良かったが、招待状も持っていなければ、風貌も変わってしまっているので、本人かすら分からない。
「少々、お待ちください」
門番は万が一を考えて、執事に確認をすることにした。
「早くして頂戴ね」
ララシャはすぐに入れては貰えると思ったが、あまり騒いで問題になってはいけないと、静かに待つことにした。
しばらくすると、執事が邸から出て来たが、ララシャだと確認は出来ずに、ララシャと話すことなく戻っていった。
埒が明かないので、ルーエンヌ前伯爵夫人に相談することにした。
「ララシャが?」
「はい…ですが、風貌が変わられたのか、私にはご本人かどうか判断が出来ませんでした。ですが、マルシャ様には似てらっしゃるとは思います」
ルーエンヌは当主夫人ではないため、参加はするが、準備などは現伯爵夫妻に任せているので、体は空いていた。
「私も最後に見たのは…随分前だもの。一体、何をしに来たの?」
「分かりませんが、ドレスアップはしてらっしゃるようでした」
「パーティーに参加しようと思って来たということ?」
「そうかもしれませんが、一応、ロアンスラー公爵家の方ですから」
「一応ね…」
ルーエンヌも、ララシャの事情は兄であるキリスに聞いている。
元々、甘さの見られる娘だったが、キリスとマルシャが王太子殿下との婚約者だからと、優遇していた。
だが、今となっては不出来なララシャを庇い、ピデム王国にも見放された形となり、肩身の狭い思いをしている。
ソアリスの生家ということ、サイラスはソアリスと多少和解したようで、ロアンスラー公爵家は維持が出来ているという状態である。
正直、生家ではあるが、ざまあみろと思った。
とはいってもルーエンヌは、ララシャともソアリスとも、特別親しかったわけではない。時折会うだけで、その場限りの関係であった。
それでもソアリスに、ロアンスラー公爵夫妻が嫌われていることには気づいた。
なぜソアリスに嫌われているのかと兄・キリスに訊ねると、マルシャが手を上げていたという。ソアリスに公表してしまえばいいと伝えた。
『ロアンスラー公爵家のことは考えなくていいわ、後ろ盾は今のあなたなら私でも十分出来るわ』
『いいえ、自分たちが懺悔するならともかく、私が言ってしまったら、脅せなくなるじゃない?一生相手にされずに、後悔をして貰わなくちゃ』
『そんなに…』
その表情は、奥深い恨みがあるのだと思った。確かに、サイラスとララシャには行わずに、お転婆なソアリスだけに手を上げていたという。恨まれて当然だろう。
サイラスはともかく、出来の悪いララシャではなく、今王妃として、この国の女性のトップになったソアリスに手を上げるなど、後悔しかないだろう。
『人って傷付くのよ?子どもでも、大人でもね。謝ったくらいで、なかったことにされたら堪らないもの。王妃だから許さなきゃいけないの?』
『そんなことはないわ』
『そうでしょう?心が狭くたって、昔のことだと言われたって、同じ目に遭わせてくれるわけでもあるまいし。でもお兄様だけは利用させて貰うわ』
サイラスは近年では従順になり、みごとにソアリスの目論見通りになったようだ。
ルーエンヌが邸から出ると、門のところに体格のいい中年の女性が立っていた。遠目で見るとマルシャには見える。
「あれが、ララシャ…?」
「…そうだとおっしゃっています」
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