私のバラ色ではない人生

野村にれ

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私が主役2

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「お兄様は良さが分かっていないのだから、黙っていて頂戴」
「ならば、メイドは下げる。母上から頼まれて行ってくれているのに、そんな態度なら貸さない」
「ちょ、ちょっと、待ってよ。意見を言っただけじゃない」
「どこが意見だ?お前の言ったことは文句だろう?その差も分からないのか?もう下がっていい」

 メイドたちは仕方なく行っていただけで、当主であるサイラスに頭を下げて出ていこうとして、ララシャはようやく慌てた。

「待って、悪かったわ、黙るから」
「はあ…なぜ最初から出来ないんだ?」
「…」

 ララシャは楽しい気持ちに水を差された気持ちになったが、メイドを下げられては夜会に行けなくなるので、黙って従うことにした。

 両親の公爵家のお忍び用の馬車を貸りて、夜会に向かった。

 ララシャは前に使っていた馬車がいいと言ったが、出戻りの中年に貸す馬車はこれだけだと言われて、嫌なら乗合馬車で行くように言われて、乗るしかなった。

 それでもサプライズには丁度いいかもしれないとポジティブに変換した。一応、面倒なことになってはいけないために、御者と護衛だけは付けている。

 ララシャはピデム王国で最後に作っていた最新のドレスを纏い、バート伯爵家に降り立った。ライトアップされて、人で賑わい、心が躍るような音楽も響いていた。

 ああ、戻って来たのだとララシャは胸の高鳴りを感じ、肥え太った身体を揺すって、ドスドス歩いていった。

 一人であるために誰だろうかと見る者もおり、その視線がまたララシャ高揚させた。ピデム王国では関心を持たれず、久し振りに向けられる熱い視線であった。

 長年離れていたララシャが誰だか分からない人も多く、知っている者も認識が出来ずに分からないという状態であった。

 護衛はその姿に、天性の勘違い女だなと思った。

 サイラス様は離縁してすぐに修道院となれば、ソアリスへの批判を生むかもしれない。それならば、王族に相応しくはなかったが、罪を犯したわけではないという風向きにしたかった。

 だが、ララシャが自身で、修道院に入れられて当然ということになるならば、悪評が立ったとしても、ロアンスラー公爵家としてはソアリスとは関係なく、自業自得という状況を作れて、丁度いいと思われていることを知らないのだ。

「ファシリア!お招きありがとう」
「まあ、ララシャ様、ようこそおいでくださいました」

 ファシリアは笑顔で夫を紹介し、バート伯爵は丸顔で、目が細く、美男子とは言い難く、体形も老いによって、腹回りが出ており、中年そのものだった。

 ララシャも同じような状態で、夫もいないというのに、ファシリアはララシャが結婚する際はまだ婚約者がおらず、夫とは初対面であった。だからこそ、これが夫なのかと、心の中で馬鹿にしていた。

「是非、楽しまれてくださいね。皆様、きっとララシャ様の登場に、驚きになられているはずですわ」
「出戻りですから、恥ずかしいですわ」

 ララシャはソアリスよりも、悲劇のヒロイン向きであるために、自分は不遇であることを前面に押し出す気であった。

「そのようなことはありませんわ」
「いいえ、自分でも分かっておりますの。それでもお招きは嬉しかったですわ。今日はひっそりと楽しませていただきます」

 その会話を聞いていたのは、ポーリア・ラーバ伯爵夫人である。

 ソアリスにもサイラスから連絡が入っており、ポーリアが監視と報告を兼ねて、同じ夜会に夫と参加している。

 ソアリスはララシャと関わっても楽しくないので、関わりたくない。メディナとキャロラインは苛立ちが抑えられない、ポーリアは愚かだと楽しめますからと立候補してくれたのだった。

「夫人は馬鹿にさせるために呼んだようですわね、そうだと思いましたけど」
「ああ、だがどうなるかな?」

 ラーバ伯爵夫妻は、成り行きを見守ることにした。
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