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知らないってぇ
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仕事を終えて、気の重いまま、邸に帰ったブレオン・オイエン侯爵は、出迎えたローティーから結果を聞くことになった。
「やっぱりぃ、知らないってぇ!王妃陛下は嘘を言ったんだわぁ」
「王妃陛下に嘘を付く理由がない」
「でもぉ、ミリンティーは何も知らないってぇ」
ちゃんと聞いたのかもしれないが、話し言葉で聞いていないようにしか聞こえない。王妃陛下が真似ていたように、いい加減にして欲しいが、いくら言っても直らないので、言うのが面倒になっただけである。
「はぁ…理由が分かっているが、都合が悪いから分からないと言っているのか。本当に分かっていないのか。どちらだ?」
「都合が悪いだなんてぇ、そんな子じゃないわぁ」
「ならば、なぜ縁談を断れるんだ?」
「そんなことぉ、分からないわぁ!皆、見る目がないだけよぉ」
「もういい、私が話をしてみる」
「お願いねぇ、でも理由なんてないと思うわぁ」
ブレオンはミリンティーの部屋に向かった。ドアを叩いたが反応がないので、入ることにした。
「ミリンティー」
「お父様、どうなさったの?」
ミリンティーは、ローティーには気を遣うことはないが、ブレオンにはきちんと接するようにしている。
「話をしようと思って来たんだ。お母様が聞いたと思うが、縁談を断れる理由があるのか?それを勘付いているのではないか?」
「理由なんて知らないわ」
「何か誤解があったりしたこともないのか?」
ブレオンはミリンティーを真正面からじっと見つめると、ミリンティーはすっと視線を逸らした。
「ないわ」
「そうか…分かった」
渋い顔をしたブレオンに、ミリンティーは少し不安になった。
「縁談がないのは、理由があると言われたの?」
「そうだよ」
「でも王妃陛下が紹介してくださるのでしょう?」
ブレオンはミリンティーにも勝手に話していたのかと、溜息を付きそうだったが、嘆くミリンティーに、慰めと喜ばせるために言ったのだろう。
ミリンティーもすっかりそのつもりで、アリルの母親に紹介されるのは癪だけど、王妃陛下なら絶対に自慢できるような、素晴らしい人のはずである。そうでなかったら、王妃陛下のせいにすればいい。
これでようやく婚約者が出来ると思ったが、だからと言ってすぐに元気になったと思われるのは嫌だったので、部屋で大人しくしていた。
「紹介はされない」
「え?どうして…」
「お母様が勝手に騒いでいただけだ。親しくもないのに、そもそも王妃陛下に紹介して貰るわけがないだろう?」
ローティーはララシャと友人だったことは確かだが、ソアリスとララシャが仲が良いと言う話を他から聞いたこともないが、ローティーからソアリス王妃陛下のエピソードを聞いたこともない。
「でもララシャ様が責任を取ってくれることになったって」
「そう言われたのか?」
「そうよ、お母様がそう言っていたもの。姉妹なんだから出来るでしょう?」
「出来ないよ」
「そんな…どうにかならないの?」
「母親と同じことを言うんだな」
口調は違うだけで、ローティーと全く同じことを言うミリンティーに、そういった思考のせいではないかとすら思った。
「だ、だって婚約者が出来ると思ったの!皆、親が見付けてくれるのでしょう?それなのに、私はどうして出来ないのよ」
「やはり、何か理由があるのではないのか?」
「ないって言っているじゃない!お父様が王妃陛下に頼んでよ」
「いい加減にしなさい!どうしてもという場合がない限りは、王家は婚約や結婚に口を出すことはない」
「紹介…してくれてもいいじゃない」
侯爵令嬢が21歳にもなって、一度も婚約者もいないことは異例である。
娘はおろか、妻にも期待が出来ないために、年の近い子どもを持つ友人に心当たりがないか聞いてみるかと考えることにした。
「やっぱりぃ、知らないってぇ!王妃陛下は嘘を言ったんだわぁ」
「王妃陛下に嘘を付く理由がない」
「でもぉ、ミリンティーは何も知らないってぇ」
ちゃんと聞いたのかもしれないが、話し言葉で聞いていないようにしか聞こえない。王妃陛下が真似ていたように、いい加減にして欲しいが、いくら言っても直らないので、言うのが面倒になっただけである。
「はぁ…理由が分かっているが、都合が悪いから分からないと言っているのか。本当に分かっていないのか。どちらだ?」
「都合が悪いだなんてぇ、そんな子じゃないわぁ」
「ならば、なぜ縁談を断れるんだ?」
「そんなことぉ、分からないわぁ!皆、見る目がないだけよぉ」
「もういい、私が話をしてみる」
「お願いねぇ、でも理由なんてないと思うわぁ」
ブレオンはミリンティーの部屋に向かった。ドアを叩いたが反応がないので、入ることにした。
「ミリンティー」
「お父様、どうなさったの?」
ミリンティーは、ローティーには気を遣うことはないが、ブレオンにはきちんと接するようにしている。
「話をしようと思って来たんだ。お母様が聞いたと思うが、縁談を断れる理由があるのか?それを勘付いているのではないか?」
「理由なんて知らないわ」
「何か誤解があったりしたこともないのか?」
ブレオンはミリンティーを真正面からじっと見つめると、ミリンティーはすっと視線を逸らした。
「ないわ」
「そうか…分かった」
渋い顔をしたブレオンに、ミリンティーは少し不安になった。
「縁談がないのは、理由があると言われたの?」
「そうだよ」
「でも王妃陛下が紹介してくださるのでしょう?」
ブレオンはミリンティーにも勝手に話していたのかと、溜息を付きそうだったが、嘆くミリンティーに、慰めと喜ばせるために言ったのだろう。
ミリンティーもすっかりそのつもりで、アリルの母親に紹介されるのは癪だけど、王妃陛下なら絶対に自慢できるような、素晴らしい人のはずである。そうでなかったら、王妃陛下のせいにすればいい。
これでようやく婚約者が出来ると思ったが、だからと言ってすぐに元気になったと思われるのは嫌だったので、部屋で大人しくしていた。
「紹介はされない」
「え?どうして…」
「お母様が勝手に騒いでいただけだ。親しくもないのに、そもそも王妃陛下に紹介して貰るわけがないだろう?」
ローティーはララシャと友人だったことは確かだが、ソアリスとララシャが仲が良いと言う話を他から聞いたこともないが、ローティーからソアリス王妃陛下のエピソードを聞いたこともない。
「でもララシャ様が責任を取ってくれることになったって」
「そう言われたのか?」
「そうよ、お母様がそう言っていたもの。姉妹なんだから出来るでしょう?」
「出来ないよ」
「そんな…どうにかならないの?」
「母親と同じことを言うんだな」
口調は違うだけで、ローティーと全く同じことを言うミリンティーに、そういった思考のせいではないかとすら思った。
「だ、だって婚約者が出来ると思ったの!皆、親が見付けてくれるのでしょう?それなのに、私はどうして出来ないのよ」
「やはり、何か理由があるのではないのか?」
「ないって言っているじゃない!お父様が王妃陛下に頼んでよ」
「いい加減にしなさい!どうしてもという場合がない限りは、王家は婚約や結婚に口を出すことはない」
「紹介…してくれてもいいじゃない」
侯爵令嬢が21歳にもなって、一度も婚約者もいないことは異例である。
娘はおろか、妻にも期待が出来ないために、年の近い子どもを持つ友人に心当たりがないか聞いてみるかと考えることにした。
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