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吉報3
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「もう!で、ミオスは預かっているの?」
「そうよ、危ないわよとは言ったのだけど、強くなって欲しいんだって。私、今日午後は公務もほとんどない日だったから」
「強く?」
「荒波に揉まれるためかしら?」
「ケイトは荒波なの?」
「明らかにそうじゃない?」
ルーファはその会話にふふふっと笑っており、アリルはいつの間にか荒波になってしまった妹をそっと見たが、今度はケイトがミオスの頬を掴んでいる。
「ケイト!頬を掴まないで」
乳母が離そうとしているが、離さないので頬が伸びてしまっている。ミオスもすっかり慣れているので、泣きはしない。
ソアリスが立ち上がって、ケイトの手を離させた。
「ミオスごめんなさいね、ちょっとルーファ、犠牲になってくれる?」
「え?」
「さすがに妊婦にケイトは危険だわ!頬と頭に気を付けてね」
「は、はい!」
ポンとケイトを渡されたルーファは、可愛らしい王女と至近距離で向き合った。ソアリスはミオスを抱いて、ごめんなさいねと頬を擦っていた。
「んば~」
「ケイト、アリルお姉様よ」
横からアリルが声を掛けると、ニコッと笑った。
「ま~」
「可愛いわね、大人しくしていればだけど。ケイト、この方はお姉様の夫で、ルーファよ?仲良くしてあげてね」
「ルーファです!カイルス殿下も可愛かったけど、ケイト殿下も可愛いなぁ」
カイルスに甘々だったルーファだったが、暴君ケイトでも、やっぱり目尻を下げっぱなしである。
「め~」
「瞳はアリルやソアリス様の色だね」
「そうなの、中身はともかく、プラチナブロンドだから神秘的でしょう?」
「へへ」
「陛下が言っていたように、言っていることが分かっているようだね」
「な~!」
ついに両手を広げて、ルーファの頬を持ってしまった。すると、グリグリよりは強くないのだが、むにむにと揉み始めた。
「ぁわぁわ、わわわ、あっ、きゃ」
「痛い?」
「いだくはないげど…」
「ふひひ」
「あら、ルーファは揉む方なのね。グリグリよりマシね」
ソアリスがミオスを抱いたまま、戻って来た。ミオスはソアリスにピッタリと引っ付いている。祖母に見えなくもないが、ケイトのせいか親子にしか見えない。
「種類があるのね」
「そうなの、判定はよく分からないのだけど?女の子にはやらなくなったわ。私が化粧が落ちるって、怒ったからかしら?」
「男の子にはやるのね」
「やるわね。陛下も、ユリウスも、マイノスも、護衛も、陛下の側近も全員、餌食になったわ…そして、今もなっているわ」
護衛達は渋い顔で、頷いている。
「カイルスは?」
「カイルスは一番世話をしてくれるおかげなのか、むにむにだけね」
「あっ、あああああ…」
ルーファの悲痛な声がして、アリルはケイトに声を掛けた。
「ケイト、そろそろ止めてあげて頂戴」
「ひひ」
ケイトは止めて、向きを変えて、ルーファの膝の上にどーんと座り込んだ。
「やっぱり偉そうね」
「否定、出来ないわね」
何だか、ふんぞり返っているようにも見える。そして、両手を出して、受け取るポーズをしている。
「おやつはさっき食べたでしょう?はあ…これ毎日、言っているのよ。呆けた老人と赤子は紙一重ね」
「ば~」
「おやつはもう食べました」
「ぼ~」
「にっこりしても駄目です。次は夕食です」
ソアリスが珍しく呆れた顔をされるのではなく、呆れた顔をしている。
「お母様が振り回されるのなんて、珍しいことだから、何だか私は面白いわ」
「そうなの、皆、そう言うのよ?酷いでしょう」
「お母様も私たちの身になればいいのよ」
「ええ!嫌よ」
「そっくりじゃない、どうなっているのよ。分裂したのではないでしょうね」
「それも言われたわ、一緒にしないで欲しいわ」
きょうだいたちにもアリルの妊娠が報告されて、王宮は喜びに包まれた。ケイトは今日も夕食を、もっともっとと強請っている。
「そうよ、危ないわよとは言ったのだけど、強くなって欲しいんだって。私、今日午後は公務もほとんどない日だったから」
「強く?」
「荒波に揉まれるためかしら?」
「ケイトは荒波なの?」
「明らかにそうじゃない?」
ルーファはその会話にふふふっと笑っており、アリルはいつの間にか荒波になってしまった妹をそっと見たが、今度はケイトがミオスの頬を掴んでいる。
「ケイト!頬を掴まないで」
乳母が離そうとしているが、離さないので頬が伸びてしまっている。ミオスもすっかり慣れているので、泣きはしない。
ソアリスが立ち上がって、ケイトの手を離させた。
「ミオスごめんなさいね、ちょっとルーファ、犠牲になってくれる?」
「え?」
「さすがに妊婦にケイトは危険だわ!頬と頭に気を付けてね」
「は、はい!」
ポンとケイトを渡されたルーファは、可愛らしい王女と至近距離で向き合った。ソアリスはミオスを抱いて、ごめんなさいねと頬を擦っていた。
「んば~」
「ケイト、アリルお姉様よ」
横からアリルが声を掛けると、ニコッと笑った。
「ま~」
「可愛いわね、大人しくしていればだけど。ケイト、この方はお姉様の夫で、ルーファよ?仲良くしてあげてね」
「ルーファです!カイルス殿下も可愛かったけど、ケイト殿下も可愛いなぁ」
カイルスに甘々だったルーファだったが、暴君ケイトでも、やっぱり目尻を下げっぱなしである。
「め~」
「瞳はアリルやソアリス様の色だね」
「そうなの、中身はともかく、プラチナブロンドだから神秘的でしょう?」
「へへ」
「陛下が言っていたように、言っていることが分かっているようだね」
「な~!」
ついに両手を広げて、ルーファの頬を持ってしまった。すると、グリグリよりは強くないのだが、むにむにと揉み始めた。
「ぁわぁわ、わわわ、あっ、きゃ」
「痛い?」
「いだくはないげど…」
「ふひひ」
「あら、ルーファは揉む方なのね。グリグリよりマシね」
ソアリスがミオスを抱いたまま、戻って来た。ミオスはソアリスにピッタリと引っ付いている。祖母に見えなくもないが、ケイトのせいか親子にしか見えない。
「種類があるのね」
「そうなの、判定はよく分からないのだけど?女の子にはやらなくなったわ。私が化粧が落ちるって、怒ったからかしら?」
「男の子にはやるのね」
「やるわね。陛下も、ユリウスも、マイノスも、護衛も、陛下の側近も全員、餌食になったわ…そして、今もなっているわ」
護衛達は渋い顔で、頷いている。
「カイルスは?」
「カイルスは一番世話をしてくれるおかげなのか、むにむにだけね」
「あっ、あああああ…」
ルーファの悲痛な声がして、アリルはケイトに声を掛けた。
「ケイト、そろそろ止めてあげて頂戴」
「ひひ」
ケイトは止めて、向きを変えて、ルーファの膝の上にどーんと座り込んだ。
「やっぱり偉そうね」
「否定、出来ないわね」
何だか、ふんぞり返っているようにも見える。そして、両手を出して、受け取るポーズをしている。
「おやつはさっき食べたでしょう?はあ…これ毎日、言っているのよ。呆けた老人と赤子は紙一重ね」
「ば~」
「おやつはもう食べました」
「ぼ~」
「にっこりしても駄目です。次は夕食です」
ソアリスが珍しく呆れた顔をされるのではなく、呆れた顔をしている。
「お母様が振り回されるのなんて、珍しいことだから、何だか私は面白いわ」
「そうなの、皆、そう言うのよ?酷いでしょう」
「お母様も私たちの身になればいいのよ」
「ええ!嫌よ」
「そっくりじゃない、どうなっているのよ。分裂したのではないでしょうね」
「それも言われたわ、一緒にしないで欲しいわ」
きょうだいたちにもアリルの妊娠が報告されて、王宮は喜びに包まれた。ケイトは今日も夕食を、もっともっとと強請っている。
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