私のバラ色ではない人生

野村にれ

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成長3

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「え?」
「ミオスも?」
「そうなの、気付いたら、ケイトが二人に圧し掛かっていたのよ」

 3人を集めて遊ばせてみたら、伯母ではあるが、一番幼いケイトが活きが良すぎて、甥と姪が潰されていたのだ。

 ぐええと言っていて、さすがに可哀想であった。

「んんん?」
「それで満足したのか、キャッキャッとハイハイし始めて、マイペースというかなんというか」
「そっくりじゃない」
「私も子どもの頃のことまで覚えていないわ」

 ソアリスの子どもの頃の話は祖父母と仲良くないために、情報がない。

「木登りしているような子どもは、絶対やらかしてるわよ」
「ええ、私が会った時にはもう木に登っていたもの」
「ほら!お義母様が言うんだから、絶対同じよ」

 話している間も、ケイトはハイ回っており、カイルスがここまでおいでと嬉しそうに待っている。

「妹の元気の良さに嬉しさと同時に、驚きを隠せないわ」
「でしょう?ハイハイが出来るようになって、水を得た魚のようになってしまって、最短で木に登るかもしれないわ」
「間違いないわね」

 リズも頷いており、アリルはルルエとエクシアーヌに渡す物があると会いに行き、その間にソアリスとリズはお茶することになった。

 アリルは先にルルエの元へ行くと、エクシアーヌも一緒におり、二人とも楽しそうに話をしていたという表情ではなく、アリルに向かって笑顔は作っているが、心なしか虚ろな目で、顔色が悪い。

「具合が悪いのですか?」
「いえ、そうではありません」
「エクシアーヌ様も?」
「はい、大丈夫です」
「それならばいいのですが、ちょうどお二人にお疲れではないかと、茶葉を届けに来たのですが…」

 ソアリスは気が利くとは思えないので、リズに何か産後に良いものはないかと相談して、購入してきたものだった。

「まあ、ありがとうございます」「ありがとうございます」

 二人は食い気味で本当に有難いという顔で、相当、疲れているのだろう。

「リラックス効果があるそうですから」
「まあ、嬉しいですわ」「私も感謝申し上げます」
「原因は子育てですの?」
「はい…」「はい」

 アリルはまだ子どもはいないが、初めての子育てはこうなってしまうのではないかと、しみじみ思った。

「イヤイヤと、言うことを聞かなくて…」「エマリーは好き嫌いが多くて」
「なかなか寝ない上に、すぐ起きてしまって…乳母も看てくれるんですけど」「エマリーもです」
「兄たちは?」
「一緒に付き合ってくれるのですが、私よりも公務も多いですから、休んでいただきたくて」
「私もです。率先してやってくれるのですけど」
「それならばいいのですが」

 兄たちは妻たちに任せきりになっているのではないかと思ったが、そうではないようで、安心した。そうだったら、乗り込もうと思っていたが、おそらく母が知っているとしたら、既に怒られているだろう。

「もしかして、ケイトは違うのにって思っていない?」

 ケイトは分かり易いのにと、どうしても比べてしまうのではないか。

「分かってはいるんですけど」「…はい」
「あの子はお母様にそっくりだから、おそらく規格外よ」

 赤ちゃんらしくないわけではないが、別物だと考えた方がいい。

「はい…」「間違いないと思います、同じ表情をされていますもの」
「お二人もそう思うのね…」
「お義母様とケイト様が寝ているのを見たのですけど、全く同じポーズで、恐ろしいほど似ておりますの」

 ああ…確かにケイトの寝ている姿に既視感があると思ったら、母だったのかと思い浮かべた。

「比べてはならないと分かっているんですけどね」「ええ」
「きっと、もう少し、大きくなれば違いますわよ」
「はい、そうですわね」「はい…」

 どうにかしてあげられることでもないので、二人の様子は当分は見守るしかないと、アリルは思うしかなかった。

 そして、子育てに奮闘している王宮にある日、ソアリスに会いたいとやってきた人物に、再び耳が遠くなったのではないかと驚いた。

「え?何て?」
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