私のバラ色ではない人生

野村にれ

文字の大きさ
上 下
130 / 335

妊婦2

しおりを挟む
「さすがに寝れませんわね…」
「やはり痛いのですか」
「ええ、私は1日掛かりましたから」

 ルルエは初産であったために、正確には26時間も掛かった。エクシアーヌもルルエを見て、自分も覚悟をしていた。

「そうでしたわね、お義母様は?」
「ん?ルルエの後で、非常に言い辛いわ」
「早かったのですね…」

 その様子にルルエも、さすがに気付いてしまった。

「ユリウスの時が最高で、8時間くらいだったかしら?」
「私のほぼ3分の1です」
「他の方はいかがでしたか?」
「ミフルまでは3時間以下で、カイルスは4時間くらいだったかしら?でも今回は分からないわよね」
「それはそうですね」「そうですね」

 そう言いながらも、ハツラツとした様子に、何だか早いような気がすると思う、ルルエとエクシアーヌであった。

 そして、ソアリスは妊娠5ヶ月目に入った。妊娠していると頭では分かっていたが、無茶はしなかったが、ずっと本当になのかと思っていた。

「本当に妊娠しているのかと、ちょっと疑っていたのだけど、今日初めて胎動があって、ようやく本当だと思ったわ」
「はい?疑っていたのですか?」

 ソアリスは小刻みに素直に頷いている。

「だって、43なのに、もうすぐ44だけど。ロペス医師を疑っていたのではなく、自分の身体を疑っていたのよ」
「実感が出来たのなら良かったです。話し掛けたりしてくださいね」
「ばあさまですよ、っあ、間違えたわ。最近、すっかりばあさまモードだったから」
「お母様でございます」

 当たり前のことを言い合うソアリスとロペス医師。

 そして、ソアリスのお腹も目立ち始めたので、発表することとなった。妊娠6ヶ月となっていた。エクシアーヌは出産予定日まで1ヶ月を切っていた。

 本日、王家から発表があるとされ、エクシアーヌの出産が、早まったのだろうと皆が思っていた。

「ソアリス王妃陛下が、第七子をご懐妊されたことを発表いたします。年齢を考慮して、発表は控えておりましたが、出産は3ヶ月後を予定しております」

 結果、知らなかった貴族も、国民も耳を疑うことになった。当の本人ですら、半信半疑だったのだから無理もないことだろう。

 さも当たり前に発表している、広報を務める大臣にも伝えてはいなかったので、大変なことになった。

 この大臣は妻の不貞で、ログハウスを購入したラセール伯爵である。子どもたちも成人したので、離縁して、不貞妻は実家に戻された。

「申し訳ありません、耳が遠くなったのでしょうか?もう一度、よろしいですか」
「それ、同じことを私も医師にやったわよ」

 その言葉に伯爵は事実だと分かって、絶句して停止した後、なぜか立ち上がろうとして、椅子から転げ落ちた。

「大丈夫?」

 護衛が立たせており、腰が砕けたのかと思った。

「申し訳ありません、失礼ながら驚きまして…はい」
「43よ、もうすぐ44だけど」

 聞いてもいないが、聞きにくいだろうと思い、ソアリスが答えている。

「はい、おめでとうございます」
「顔が引き攣っているわよ!大丈夫、今のところ順調だから」
「それは良かったです。いつ生まれるのでしょうか」
「3ヶ月後くらいかしら?」
「はひ?」

 口元がおかしくなっているが、構わずにソアリスは話を続ける。

「もうね、6ヶ月なのよ。それでお腹も目立ちだしたから、発表して貰おうということになって。エクシアーヌの出産もあるから、その前にね」
「はい、さようでございますね、早々にいたしましょう。しつこいようですが、お体は大丈夫なのですよね?」
「ええ、毎日診察されているから」
「そうしてください」
「調整して、明日、いえ、明後日には発表しましょう」

 そして、発表された懐妊発表は、その日の国一番の話題となった。他国にも伝わることになり、それぞれに驚かれることになる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

婚約者の彼から彼女の替わりに嫁いでくれと言われた

クロユキ
恋愛
子爵令嬢フォスティヌは三歳年上になるフランシス子爵を慕っていた。 両親同士が同じ学友だった事でフォスティヌとフランシスの出会いでもあった。 そして二人は晴れて婚約者となった。 騎士への道を決めたフランシスと会う日が減ってしまったフォスティヌは、フランシスから屋敷へ来て欲しいと連絡があった… 誤字脱字があると思いますが読んでもらえたら嬉しいです。不定期ですがよろしくお願いします。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

壊れた心はそのままで ~騙したのは貴方?それとも私?~

志波 連
恋愛
バージル王国の公爵令嬢として、優しい両親と兄に慈しまれ美しい淑女に育ったリリア・サザーランドは、貴族女子学園を卒業してすぐに、ジェラルド・パーシモン侯爵令息と結婚した。 政略結婚ではあったものの、二人はお互いを信頼し愛を深めていった。 社交界でも仲睦まじい夫婦として有名だった二人は、マーガレットという娘も授かり、順風満帆な生活を送っていた。 ある日、学生時代の友人と旅行に行った先でリリアは夫が自分でない女性と、夫にそっくりな男の子、そして娘のマーガレットと仲よく食事をしている場面に遭遇する。 ショックを受けて立ち去るリリアと、追いすがるジェラルド。 一緒にいた子供は確かにジェラルドの子供だったが、これには深い事情があるようで……。 リリアの心をなんとか取り戻そうと友人に相談していた時、リリアがバルコニーから転落したという知らせが飛び込んだ。 ジェラルドとマーガレットは、リリアの心を取り戻す決心をする。 そして関係者が頭を寄せ合って、ある破天荒な計画を遂行するのだった。 王家までも巻き込んだその作戦とは……。 他サイトでも掲載中です。 コメントありがとうございます。 タグのコメディに反対意見が多かったので修正しました。 必ず完結させますので、よろしくお願いします。

心の鍵は開かない〜さようなら、殿下。〈第一章完・第二章開始〉

詩海猫
恋愛
侯爵令嬢フィオナ・ナスタチアムは五歳の時に初めて出会った皇弟フェアルドに見初められ、婚約を結ぶ。 侯爵家でもフェアルドからも溺愛され、幸せな子供時代を経たフィオナはやがて誰もが見惚れる美少女に成長した。 フェアルドとの婚姻も、そのまま恙無く行われるだろうと誰もが信じていた。 だが違った。 ーーー自分は、愛されてなどいなかった。 ☆エールくださった方ありがとうございます! *後宮生活 5 より閲覧注意報発令中 *前世話「心の鍵は壊せない」完結済み、R18にあたる為こちらとは別の作品ページとなっています。 *感想大歓迎ですが、先の予測書き込みは出来るだけ避けてくださると有り難いです。 *ハッピーエンドを目指していますが人によって受け止めかたは違うかもしれません。 *作者の適当な世界観で書いています、史実は関係ありません*

嘘を囁いた唇にキスをした。それが最後の会話だった。

わたあめ
恋愛
ジェレマイア公爵家のヒルトンとアールマイト伯爵家のキャメルはお互い17の頃に婚約を誓た。しかし、それは3年後にヒルトンの威勢の良い声と共に破棄されることとなる。 「お前が私のお父様を殺したんだろう!」 身に覚えがない罪に問われ、キャメルは何が何だか分からぬまま、隣国のエセルター領へと亡命することとなった。しかし、そこは異様な国で...? ※拙文です。ご容赦ください。 ※この物語はフィクションです。 ※作者のご都合主義アリ ※三章からは恋愛色強めで書いていきます。

その悲劇、大嘘ですよね?元婚約者の私に慰めてもらえるとでも?

希猫 ゆうみ
恋愛
伯爵令嬢シンシアの婚約者パトリックは悲劇のヒロインぶる令嬢リリアナに心を奪われ、リリアナを救う為にシンシアとの婚約を破棄してしまう。そして非難轟々の中リリアナと結婚してしまった。 2年後、シンシアは宮廷に仕え異国から迎えた妃殿下の侍女として特殊な宝飾品を管理する充実した日々を送っていた。 しかし元婚約者パトリックはその頃、被害妄想の強い幼稚な妻リリアナの我儘と奇行に辟易する毎日を送っていたようで…… 「彼女が家族に虐げられているなんて大嘘だよ。騙された」 知ったことではないと接触を拒むシンシアにパトリックは復縁まで持ちかけてくる。 「いえ、お断りですが?」 なぜならシンシアは既に異国の王子と…… 【誤字報告お礼】 複数の読者様から誤字報告をいただきました。ありがとうございます! 御厚意に与りコメントは非表示とさせていただきましたが、この場を借りて御礼申し上げます。 これからもお楽しみ頂けましたら幸いです。

「だから結婚は君としただろう?」

イチイ アキラ
恋愛
ホンス伯爵家にはプリシラとリリアラという二人の娘がいた。 黒髪に茶色の瞳の地味なプリシラと、金髪で明るい色彩なリリアラ。両親は妹のリリアラを贔屓していた。 救いは、祖父母伯爵は孫をどちらも愛していたこと。大事にしていた…のに。 プリシラは幼い頃より互いに慕い合うアンドリューと結婚し、ホンス伯爵家を継ぐことになっていた。 それを。 あと一ヶ月後には結婚式を行うことになっていたある夜。 アンドリューの寝台に一糸まとわぬリリアラの姿があった。リリアラは、彼女も慕っていたアンドリューとプリシラが結婚するのが気に入らなかったのだ。自分は格下の子爵家に嫁がねばならないのに、姉は美しいアンドリューと結婚して伯爵家も手に入れるだなんて。 …そうして。リリアラは見事に伯爵家もアンドリューも手に入れた。 けれどアンドリューは改めての初夜の夜に告げる。 「君を愛することはない」 と。 わがまま妹に寝取られた物語ですが、寝取られた男性がそのまま流されないお話。そんなことしたら幸せになれるはずがないお話。

処理中です...