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羨望
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アリルはカイルス以外のきょうだいを呼び出して、事情を説明した。
結婚したユリウスも、きちんといる。さすがにルルエにはまだ聞かせられないので、不参加である。
「アリル、酷い目に遭ったねと言いたいところだけど、母上の全力を見たかった」
「私も」
「私も」
「私も」
アリルをじっとりとした目で見つめるユリウス、マイノス、エクル、ミフル。
「そう言われると思ったわよ、私だって驚いたのよ?お父様がまさかゴーを出すなんて。初めてじゃない。よっぽど怒っていたんだと思うわ」
「父上の隠し玉だな、母上は」
「危なっかしいけどな」
「かしいじゃないでしょうよ、危険玉よ」
エクルがピシャリと言い切り、横でミフルも強く頷いている。
「やはり凄かったのか?」
「ええ、もう言い慣れているから、悪い言葉がぽんぽん出て来るんだもの。誘拐王だの、樽だの、おちょぼ口がきもちわりぃだの、どんどん口が悪くなって、終わりに近づくにつれて、丁寧な言葉に戻っていったけど、それはそれで怖かったわ」
あーっと察した、悪口の後で、正論をぶち込んで来るスタイルである。
「まさか、祖母に叩かれていたとは…」
「私もあの強気なお母様がと思ったけど、もしかしたら最初はやり返せなくて、あの悪い口の原点は自分を守るためだったのかと…」
「そうだな…」
「まあ、これまで通り知らない振りってことで、でないと脅せないからって」
「でも樽って…」
「樽にしか見えないわ」
マルシャは孫に樽だと認知されたことを知らないまま、表向きは変わらないが、心の中で敵意を向けられることになる。
「しかし、アリルも厄介な相手に好かれたものだよ」
「胸部がお気に召したんでしょうよ」
「エクルとミフルは見られていないな?」
「多分?」
「顔はじろじろ見られたけど」
さすがにエクルはまだ見られていなかったが、ミフルの顔には食い付いたのか。
「お兄様たちもなんて、お母様に疑われていたわよ」
「嘘だろ…」
「兄上、結婚したのに」
「もしそんなことをしていたら、屍になっていたでしょうね。私が直々に教育しましょうなんて、言い出し兼ねないわよ」
皆が、絶句した瞬間だった。母にされることも恥ずかしいが、我が家で言えば、行うのは間違いなく、父ではなく母だろう。
「うっわ、どんなことになるんだ?」
「ちょっと興味はあるが、身が持たない」
「受けてみたら?」
「受講させてくれって言うのか?違うのに?」
「受講しましょう」
エクルとミフルも頷いており、王女たちによって、念のためにソアリスのピデム王国で言えば、紳士教育が行われることになった。
肩を落としたユリウスとマイノスが、三王女とともに歩いているところに、出くわしたアンセムと、側近であるオーランとクイオ。
「どうしたんだ?」
「お母様の変態辱めカリキュラムです」
「は?」
ソアリスに相談したら、快く引き受けてはくれたが、変態辱めカリキュラムねと言われてしまったのだ。現在カイルスはお昼寝中である。
「もし兄様たちが胸部を見ていたらどうなったのか、皆で受講しようと」
「それは、酷い目に遭うぞ?」
「存じております。でも興味がありますでしょう?」
「確かに…」
「お父様も受けます?」
結局、家族と側近と侍女と護衛で受けることになった。変態辱めカリキュラム。
子どもたちと陛下と側近は、ソアリスに向き合って、並べられた椅子に座った。侍女はソアリスの後ろに控え、護衛はきちんと配置に付いている。
「お母様、変態辱めカリキュラム、お願いします」
ソアリスはいつもの姿勢の良い姿ではあるが、片手になぜか鞭を持ち、教師の出で立ちではない。
「ヘイ!チブサ、ダイスキボーイ?」
「そこから始まるのですか…」
「ご機嫌ですね…」
意外なノリで始まり、母上の侍女はどうしてあんなスンとした顔で立っていられるのかと思っていると、護衛は完全に驚愕の目を向けている。
結婚したユリウスも、きちんといる。さすがにルルエにはまだ聞かせられないので、不参加である。
「アリル、酷い目に遭ったねと言いたいところだけど、母上の全力を見たかった」
「私も」
「私も」
「私も」
アリルをじっとりとした目で見つめるユリウス、マイノス、エクル、ミフル。
「そう言われると思ったわよ、私だって驚いたのよ?お父様がまさかゴーを出すなんて。初めてじゃない。よっぽど怒っていたんだと思うわ」
「父上の隠し玉だな、母上は」
「危なっかしいけどな」
「かしいじゃないでしょうよ、危険玉よ」
エクルがピシャリと言い切り、横でミフルも強く頷いている。
「やはり凄かったのか?」
「ええ、もう言い慣れているから、悪い言葉がぽんぽん出て来るんだもの。誘拐王だの、樽だの、おちょぼ口がきもちわりぃだの、どんどん口が悪くなって、終わりに近づくにつれて、丁寧な言葉に戻っていったけど、それはそれで怖かったわ」
あーっと察した、悪口の後で、正論をぶち込んで来るスタイルである。
「まさか、祖母に叩かれていたとは…」
「私もあの強気なお母様がと思ったけど、もしかしたら最初はやり返せなくて、あの悪い口の原点は自分を守るためだったのかと…」
「そうだな…」
「まあ、これまで通り知らない振りってことで、でないと脅せないからって」
「でも樽って…」
「樽にしか見えないわ」
マルシャは孫に樽だと認知されたことを知らないまま、表向きは変わらないが、心の中で敵意を向けられることになる。
「しかし、アリルも厄介な相手に好かれたものだよ」
「胸部がお気に召したんでしょうよ」
「エクルとミフルは見られていないな?」
「多分?」
「顔はじろじろ見られたけど」
さすがにエクルはまだ見られていなかったが、ミフルの顔には食い付いたのか。
「お兄様たちもなんて、お母様に疑われていたわよ」
「嘘だろ…」
「兄上、結婚したのに」
「もしそんなことをしていたら、屍になっていたでしょうね。私が直々に教育しましょうなんて、言い出し兼ねないわよ」
皆が、絶句した瞬間だった。母にされることも恥ずかしいが、我が家で言えば、行うのは間違いなく、父ではなく母だろう。
「うっわ、どんなことになるんだ?」
「ちょっと興味はあるが、身が持たない」
「受けてみたら?」
「受講させてくれって言うのか?違うのに?」
「受講しましょう」
エクルとミフルも頷いており、王女たちによって、念のためにソアリスのピデム王国で言えば、紳士教育が行われることになった。
肩を落としたユリウスとマイノスが、三王女とともに歩いているところに、出くわしたアンセムと、側近であるオーランとクイオ。
「どうしたんだ?」
「お母様の変態辱めカリキュラムです」
「は?」
ソアリスに相談したら、快く引き受けてはくれたが、変態辱めカリキュラムねと言われてしまったのだ。現在カイルスはお昼寝中である。
「もし兄様たちが胸部を見ていたらどうなったのか、皆で受講しようと」
「それは、酷い目に遭うぞ?」
「存じております。でも興味がありますでしょう?」
「確かに…」
「お父様も受けます?」
結局、家族と側近と侍女と護衛で受けることになった。変態辱めカリキュラム。
子どもたちと陛下と側近は、ソアリスに向き合って、並べられた椅子に座った。侍女はソアリスの後ろに控え、護衛はきちんと配置に付いている。
「お母様、変態辱めカリキュラム、お願いします」
ソアリスはいつもの姿勢の良い姿ではあるが、片手になぜか鞭を持ち、教師の出で立ちではない。
「ヘイ!チブサ、ダイスキボーイ?」
「そこから始まるのですか…」
「ご機嫌ですね…」
意外なノリで始まり、母上の侍女はどうしてあんなスンとした顔で立っていられるのかと思っていると、護衛は完全に驚愕の目を向けている。
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