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角逐
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「まだ11歳だよ?さすがに早いよ」
「そうかしら?でもそろそろお話がありそうな気がするんだけど」
ララシャはエミアンローズに早く良き相手を、素敵な相手をと常々思っており、頻繁に話をする。リベルも最初はまだ考えたくなかったが、最近は慣れて来て、落ち着いて話が出来るようになった。
リベルはエミアンローズを愛しているが、縁談の話は一度も来たことがない。
「ソアリスの子も同じ年の子がいたわよね?」
「ああ、ミフル王女だな」
美しいと言われていたが、確かに一度見たら忘れないほど、整った顔をしていた。
「婚約者はいないの?」
「ああ、まだ決めていないようだが?」
「そう」
「張り合うものではないぞ?」
「分かっているわよ、居るのかなって思っただけじゃない」
あちらはクロンデール王国の第三王女で、こちらはいずれは王弟の子どもという立場であるため、同じではない。エミアンローズには、大事にしてくれる貴族に嫁がせる方がいいと思っている。
「王女二人も国内でしょう?どこかの貴族に嫁がせるんでしょうね」
クロンデール王国は互いに良い縁談ならいいが、無理やり結婚させて他国と結び付けて、利を得ようとは、あまり考えていないお国柄である。
ゆえにララシャは婚約者だったので、国益を取ったが、アイリーンがゾル王国の公爵家に嫁いだのも、エクシアーヌ王女を娶ることも、利はあるが、お互いに良しとしたから結ばれたからという前提がある。
恋愛感情というよりは、相性を優先するという方が強い。
だが、ララシャはリベルに求められたこともあり、愛されることを優先しながらも、羨ましがられる相手でなければならないという気持ちが強い。
「いや、それこそいい相手がいたら、他国にも嫁がせるんじゃないか?」
「そうかしら」
ララシャは結局ミフルを見たこともないので、エミアンローズと同い年だから、比べられて可哀想と思っている。
奇しくもソアリスですら、ミラン様に生き写しのようなミフルが、美しいことは理解しており、互いに同じようなことを思っていたのである。
「エミアンもいいお相手のためにも、教育を頑張って貰わないとな」
「大丈夫よ、私たちの娘ですもの」
「だが…あまり進んでいないと聞いている」
集中力のないエミアンローズは、王族の教育を受けさせているが、芳しくないと聞いている。ララシャに泣きついては、授業がなくなることもある。
さすがに教育だけはきちんとさせたいが、ララシャが匙を投げられた状態であることが理解出来ていないので、何とかなると思い込んでおり、何度も話しているのだが、エミアンローズが泣いているからと、聞く耳を持たない。
「厳しいのではなくて?」
「だが、王族としてきちんとしなければ、いい縁談も難しくなってしまうぞ」
「それは大丈夫よ、エミアンは絶対に、いいお相手が見付かるわ」
ララシャは自分に似ていることから、絶対的な自信を持っている。
「恥を掻くのはエミアンローズなんだよ、恥ずかしい思いをさせたいかい?」
「それはそうだけど…」
「きちんと受けるように言わないと、いくら本人たちが想い合っても、相手側が否と言えば覆ってしまっては可哀想だろう?」
「そうね…分かったわ」
リベルももう幼女ではない、エミアンローズを甘やかしてばかりではない。
どこに嫁ぐにしても、教育は無駄になることはない。
一方、カリルはルイスのことは女性に聞く方が早いだろうと、妻であるオリンダーに婚約の報告も兼ねて聞くことにした。おそらく、今まで何も言っていないことから、気付いていない可能性が高い。
「婚約はやはり難しかったようだ」
「そう、仕方ないわね」
「それで…ルイスのことなんだが…」
「何?何かあったの?」
「今から衝撃的なことを言うが、落ち着いて聞いてくれ。冗談ではなく、これからのためにも大事なことなんだ」
「は、い」
オリンダーはカリルのただならぬ様子に背筋を伸ばした。
「そうかしら?でもそろそろお話がありそうな気がするんだけど」
ララシャはエミアンローズに早く良き相手を、素敵な相手をと常々思っており、頻繁に話をする。リベルも最初はまだ考えたくなかったが、最近は慣れて来て、落ち着いて話が出来るようになった。
リベルはエミアンローズを愛しているが、縁談の話は一度も来たことがない。
「ソアリスの子も同じ年の子がいたわよね?」
「ああ、ミフル王女だな」
美しいと言われていたが、確かに一度見たら忘れないほど、整った顔をしていた。
「婚約者はいないの?」
「ああ、まだ決めていないようだが?」
「そう」
「張り合うものではないぞ?」
「分かっているわよ、居るのかなって思っただけじゃない」
あちらはクロンデール王国の第三王女で、こちらはいずれは王弟の子どもという立場であるため、同じではない。エミアンローズには、大事にしてくれる貴族に嫁がせる方がいいと思っている。
「王女二人も国内でしょう?どこかの貴族に嫁がせるんでしょうね」
クロンデール王国は互いに良い縁談ならいいが、無理やり結婚させて他国と結び付けて、利を得ようとは、あまり考えていないお国柄である。
ゆえにララシャは婚約者だったので、国益を取ったが、アイリーンがゾル王国の公爵家に嫁いだのも、エクシアーヌ王女を娶ることも、利はあるが、お互いに良しとしたから結ばれたからという前提がある。
恋愛感情というよりは、相性を優先するという方が強い。
だが、ララシャはリベルに求められたこともあり、愛されることを優先しながらも、羨ましがられる相手でなければならないという気持ちが強い。
「いや、それこそいい相手がいたら、他国にも嫁がせるんじゃないか?」
「そうかしら」
ララシャは結局ミフルを見たこともないので、エミアンローズと同い年だから、比べられて可哀想と思っている。
奇しくもソアリスですら、ミラン様に生き写しのようなミフルが、美しいことは理解しており、互いに同じようなことを思っていたのである。
「エミアンもいいお相手のためにも、教育を頑張って貰わないとな」
「大丈夫よ、私たちの娘ですもの」
「だが…あまり進んでいないと聞いている」
集中力のないエミアンローズは、王族の教育を受けさせているが、芳しくないと聞いている。ララシャに泣きついては、授業がなくなることもある。
さすがに教育だけはきちんとさせたいが、ララシャが匙を投げられた状態であることが理解出来ていないので、何とかなると思い込んでおり、何度も話しているのだが、エミアンローズが泣いているからと、聞く耳を持たない。
「厳しいのではなくて?」
「だが、王族としてきちんとしなければ、いい縁談も難しくなってしまうぞ」
「それは大丈夫よ、エミアンは絶対に、いいお相手が見付かるわ」
ララシャは自分に似ていることから、絶対的な自信を持っている。
「恥を掻くのはエミアンローズなんだよ、恥ずかしい思いをさせたいかい?」
「それはそうだけど…」
「きちんと受けるように言わないと、いくら本人たちが想い合っても、相手側が否と言えば覆ってしまっては可哀想だろう?」
「そうね…分かったわ」
リベルももう幼女ではない、エミアンローズを甘やかしてばかりではない。
どこに嫁ぐにしても、教育は無駄になることはない。
一方、カリルはルイスのことは女性に聞く方が早いだろうと、妻であるオリンダーに婚約の報告も兼ねて聞くことにした。おそらく、今まで何も言っていないことから、気付いていない可能性が高い。
「婚約はやはり難しかったようだ」
「そう、仕方ないわね」
「それで…ルイスのことなんだが…」
「何?何かあったの?」
「今から衝撃的なことを言うが、落ち着いて聞いてくれ。冗談ではなく、これからのためにも大事なことなんだ」
「は、い」
オリンダーはカリルのただならぬ様子に背筋を伸ばした。
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