私のバラ色ではない人生

野村にれ

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帰国

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 翌日、シシリーヌ王女は迎えが来て、帰って行った。

 何か言いたそうではあったが、昨夜、ソアリスの言ったように夜這い未遂があったのだ。シシリーヌは艶めかしいとまでは言えないナイトドレス姿で、マイノスの部屋の前までやって来たが、警備が立っていた。

「シシリーヌ・ゾルワンよ。ちょっとだけ殿下とお話をしたいのだけど」
「もう眠ってらっしゃいます」
「少しだけだから」
「言伝でしたら、私が承ります」

 騎士はシシリーヌの前に立ち塞がった。

「どうしても今日中に、私の口からお話しておきたいの。私はゾル王国の第一王女です、分かりますわよね?」
「はい。未婚の王女殿下を婚約者のいる殿下の部屋に、このような時間にお通しすることは出来ません」
「っな」
「陛下、もしくは王妃陛下をお呼びすることになりますが」
「いえ、もう結構よ」

 対応したのは女性騎士。念のため男女の騎士を配置していた。これが男性騎士だけだったら、体に触られたなどと言い出して、脅したたかもしれない。

 渋々帰ったシシリーヌは、これからの道のりは厳しいものになるだろう。

 平常に戻ったクロンデール王国。マイノスはようやくエクシアーヌとの時間を取り、二人は婚約者の時間を楽しんだ。

 ソアリスもいつもの素振りと走り込みと、木登り、ミニログハウスで昼寝生活を満喫し、その日の夕食。

「人気者夜這い王女が帰ったことを祝して、カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「ソアリス!」

 アンセムが怒っても、可愛い腰巾着がソアリスと同じように、グラスを持って既に賛同してしまっている。

「申し訳ございませんでした!」

 マイノスの部屋に入り込もうとしたシシリーヌに、エクシアーヌはさすがにしないだろうと思っていたので、卒倒しそうになった。

「ですが、私も祝杯を挙げたい気持ちでございます」
「ほれ」

 ソアリスはアンセムをどうだと言わんばかりに見下ろしている。

「では…乾杯!」
「カンパ~イ!!」「かんぱ~い」
「「「「「乾杯」」」」」

 ソアリスはくうぅと言いながら、ワインを一気に飲みし、カイルスも真似しようとしているが、さすがに一気は難しそうだ。

「カイルス、無理するな」「そうだぞ」
「むう」

 そんな姿を見ていたエクシアーヌは、しみじみと語り出した。

「本当に素晴らしいご家族で、羨ましいです。近年、こんなに食事中が楽しかったことはございません」
「苦労されているのですね…」
「何がきっかけで姉の機嫌が悪くなるか分かりませんから、極力会話は控えるのです。後は勝手に話していることを聞くくらいで…」
「我々も別の意味で苦労はしているがな…」

 目線は肉をひょいひょいと優雅にペロリと平らげて、お代わりを要求しているソアリスに向く。体力作りに余念のないソアリスはよく食べる。

「おかあさま、わたしのきって」
「やーよ、自分で切りなさい」

 シシリーヌが帰ったので、至れり尽くせりは終了している。

「どうしてよ、おかあさまがきってくれたら、とってもおいしくなるのよ」
「嘘おっしゃい!誰が切っても変わらないわ」
「ちょんな~!」

 追加の肉が届き、ソアリスが一口サイズに切ると、カイルスにあ~んと言い、いいの?という顔をして、満面の笑みで口を開いた。

「おいしい!!」
「後は自分で切って食べなさい」
「あい!」

 完全に飴と鞭である。いや、餌付けだろうか。

 エクシアーヌは五日間の滞在予定だったが、シシリーヌに取られた時間と、ゾル王国でのシシリーヌの対応もあるので、七日間滞在することに変更された。

 そして、ゾル王国に帰国したシシリーヌは両親と対峙していた。
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