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姉4
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「ルオンからお母様を説得して欲しいの」
「する気はない」
「これからはきちんとするし、再婚も受け入れるつもりよ」
ルオンは呆れるしかなく、鼻で笑った。断ったのに押し掛けてくる時点で、変わったとは思っていなかったが、どうしてメルベールは変われないのだろうか。
あの父ですら変わったとというのに、諸悪の根源は変われないのか。
「再婚?そんな話、あるわけないだろ」
「ルオンは何も知らないのね。また侯爵家は難しいでしょうけど、経産婦って人気があるのよ」
それは不遇な扱いをされていた夫人や、夫を亡くした未亡人だけだろう。評判の悪い経産婦なんて何の価値がある?
「子種があるか調べる道具になるってことか?」
「そんな言い方しないでよ!私の子どもが欲しいって意味よ」
万が一にもないが、縁談があっても、持参金も付ける気はない。グラーフ伯爵家とトスター侯爵家の子どもたちのためにも、他の貴族に押し付ける気はないからだ。
これがオーランドと別れたユーリ姉様なら私が出るまでもなく、仲良くしていた方がきっといい相手を探してくれていただろう。
そうなっていたら、どれだけ良かったか。
私はあれからユーリ姉様の悲しみを堪えた、笑みばかり思い出してしまう。一体どんな思いで、一体どんな顔で死んでいったんだろうか。私はすぐ側にいたからこそ、最期の様子を母上に聞けないでいる。
毒を飲んだことを知らなかったとしても、なぜ駆け付けなかったのか、どうなったのか聞くべきだった。後悔ばかりが渦巻いている。
「再婚だとか言っているが、自分の産んだ子どもは可愛くないのか?」
「可愛いに決まっているじゃない!でもアベリーは修道院に行くって言うし、息子たちにも何を吹き込まれたのか知らないけど、素っ気ないのよ」
母親と姉のいない状況に、トスカーとミエルにも、さすがにアベリーとメルベールのことは話してあると聞いている。
アベリーはきちんと反省したはずだと母上が言っていた、トスカーとミエルにも歩み寄って貰えるかもしれない。だが、メルベールはこの調子だと難しいだろう。
メルベールがどの選択をしても、きっと二度と会うことはない。
「お願いよ、このままではグラーフ伯爵家の評判だって悪くなるでしょう?」
「あなたのせいじゃないか。夫人方はユーリ姉様と母上のおかげで、マリリアは嫌な思いをしないで済んでいるんだ」
「それなら、私が復帰すればもっと支えていけるわ。マリリアともあまり親しくしていなかったけど、これからは仲良くするわ」
この者は何を言っているんだ、記憶がないとでも言うのか?
「誰もあなたを呼ばない。招待すらしてくれないさ」
「っな!いい加減にしなさい!お姉様が困っているのよ、マリリアにも言いなさい。私も連れて行くように。助けるのが弟の務めでしょう?」
「それ、ユーリ姉様にも言ったの?」
メルベールはバツが悪そうに黙り込んだが、すぐに復活した。
ルオンは今までメルベール側の人間だったからだろう、話せば分かってくれる、いや、分からせることが出来ると思っている。
「私は施設とか修道院なんてところでは、生活が出来ないわ。分かるでしょう?身体を悪くしてしまうかもしれないわ」
「私には関係ない。もうここへは来ないでくれ。連れ出してくれ」
メイド二人がメルベールの両腕を持ったが、まだ喋っている。
「待ってよ、どうしてよ」
「ユーリ姉様ならあなたを助けたのかもしれないね、でもユーリ姉様はこの世にいない。それだけだよ」
喚きながら連れて行かれ、ルオンは同じ顔をしたメルベールを見ても、ユーリの顔が浮かぶことはなかった。それほどまでにメルベールを嫌悪していた。
そして、メルベールの出した答えは…
「する気はない」
「これからはきちんとするし、再婚も受け入れるつもりよ」
ルオンは呆れるしかなく、鼻で笑った。断ったのに押し掛けてくる時点で、変わったとは思っていなかったが、どうしてメルベールは変われないのだろうか。
あの父ですら変わったとというのに、諸悪の根源は変われないのか。
「再婚?そんな話、あるわけないだろ」
「ルオンは何も知らないのね。また侯爵家は難しいでしょうけど、経産婦って人気があるのよ」
それは不遇な扱いをされていた夫人や、夫を亡くした未亡人だけだろう。評判の悪い経産婦なんて何の価値がある?
「子種があるか調べる道具になるってことか?」
「そんな言い方しないでよ!私の子どもが欲しいって意味よ」
万が一にもないが、縁談があっても、持参金も付ける気はない。グラーフ伯爵家とトスター侯爵家の子どもたちのためにも、他の貴族に押し付ける気はないからだ。
これがオーランドと別れたユーリ姉様なら私が出るまでもなく、仲良くしていた方がきっといい相手を探してくれていただろう。
そうなっていたら、どれだけ良かったか。
私はあれからユーリ姉様の悲しみを堪えた、笑みばかり思い出してしまう。一体どんな思いで、一体どんな顔で死んでいったんだろうか。私はすぐ側にいたからこそ、最期の様子を母上に聞けないでいる。
毒を飲んだことを知らなかったとしても、なぜ駆け付けなかったのか、どうなったのか聞くべきだった。後悔ばかりが渦巻いている。
「再婚だとか言っているが、自分の産んだ子どもは可愛くないのか?」
「可愛いに決まっているじゃない!でもアベリーは修道院に行くって言うし、息子たちにも何を吹き込まれたのか知らないけど、素っ気ないのよ」
母親と姉のいない状況に、トスカーとミエルにも、さすがにアベリーとメルベールのことは話してあると聞いている。
アベリーはきちんと反省したはずだと母上が言っていた、トスカーとミエルにも歩み寄って貰えるかもしれない。だが、メルベールはこの調子だと難しいだろう。
メルベールがどの選択をしても、きっと二度と会うことはない。
「お願いよ、このままではグラーフ伯爵家の評判だって悪くなるでしょう?」
「あなたのせいじゃないか。夫人方はユーリ姉様と母上のおかげで、マリリアは嫌な思いをしないで済んでいるんだ」
「それなら、私が復帰すればもっと支えていけるわ。マリリアともあまり親しくしていなかったけど、これからは仲良くするわ」
この者は何を言っているんだ、記憶がないとでも言うのか?
「誰もあなたを呼ばない。招待すらしてくれないさ」
「っな!いい加減にしなさい!お姉様が困っているのよ、マリリアにも言いなさい。私も連れて行くように。助けるのが弟の務めでしょう?」
「それ、ユーリ姉様にも言ったの?」
メルベールはバツが悪そうに黙り込んだが、すぐに復活した。
ルオンは今までメルベール側の人間だったからだろう、話せば分かってくれる、いや、分からせることが出来ると思っている。
「私は施設とか修道院なんてところでは、生活が出来ないわ。分かるでしょう?身体を悪くしてしまうかもしれないわ」
「私には関係ない。もうここへは来ないでくれ。連れ出してくれ」
メイド二人がメルベールの両腕を持ったが、まだ喋っている。
「待ってよ、どうしてよ」
「ユーリ姉様ならあなたを助けたのかもしれないね、でもユーリ姉様はこの世にいない。それだけだよ」
喚きながら連れて行かれ、ルオンは同じ顔をしたメルベールを見ても、ユーリの顔が浮かぶことはなかった。それほどまでにメルベールを嫌悪していた。
そして、メルベールの出した答えは…
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