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真実3
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「醜いわね」
「何ですって!ユーリに何を言われたか知らないけど、お母様はどうして私を責めるのよ!」
「ユーリが私に何か言ったと思っているのね?自覚があったということね?」
「え、そうじゃなくて」
メルベールは怒りに任せて話すあまり、不都合があるという自覚があったことを認めているようなものだった。
ルオンは悪意がまではないと言ったが、自覚があったのならば、悪意があったと言えるのではないかと、サイラは思った。
「メルベールを責めるようなことを、言い残していると思っているのでしょう?それは責められる自覚があるからじゃない?」
「それこそ嘘かもしれないじゃない!死ぬ間際の人の言葉なんて、誰でも信じたくなるでしょう?お母様が私のことを責めるなんておかしいもの!いつも何も言わなかったじゃない!」
サイラに些細なことを注意されることはあったが、本気で怒られたことはない。ただメルベールにとって些細な事であって、サイラは気付く範囲ではあるが、細やかに注意して来たつもりだった。
「あなたのように言えば言うだけ、ユーリに向かうから、言わなければならない時しか、言わないようになっていたわ…それでは足りなかった。守れなかった。死なせてしまった…それが事実なの。そして、事実であることは証言も証拠もあるわ」
「でもそれはユーリが書いたものでしょう!」
ユーリが都合よく書いた物を、証拠だと言われても、認められるわけがない。お母様は世間知らずだから、分かっていない。
「あなた、シュアト公爵家の茶会に行ったのでしょう?あそこにいらした方は全員、ユーリと親しくしていた方よ?」
「だから何よ!ユーリは私に親しい方を奪われたくなくて、紹介しなかったのでしょう?ユーリってそういうところがあるものね」
ユーリの親しくしていたクラスメイトは、私とも友達になりましょうと言っても、あまりいい顔をしなかった。きっとユーリに何か言われていたのだ。
「あなたと親しくしたいなどと思うはずがないでしょう?」
「はあ?」
「何も言わないユーリを大事に思って、周りを調べられていたとは思わないの?」
「っえ…どういう意味…」
「私は、今日、ここで裏付けを聞いた上で話をしているの。証拠や証人もいらっしゃるそうよ、あまり舐めない方がいいわ」
「っな」
皆は薄々、思い込みで話をしているわけではないことに気付いていたが、やはり茶会のメンバーに調べられていたことが決定的となった。
「アベリーは、気付かないまま同じ道を行くか、気付いて反省出来るか…キリアムくん、寄宿学校の様子はどうなのですか?」
「まだ報告は来ていませんが、苦情も来てはいないので、何とかやっているのではないかと願っています」
キリアムは苦情が来ることも想定していたが、さすが厳しいと言われる寄宿学校なだけあって、少々の我儘程度は慣れているとも言える。
「そう…どちらにしても厳しい道になるでしょうね」
「私のせいじゃないって言っているでしょう!私は奪ったりなんかしていない」
「手柄を奪っただろう…自覚はあるんだろう?」
ユーリは進んではしてくれなかったけど、お願いすれば頼みを聞いてくれた。確かに自分が行った様にも言ったけど、双子なんだからいいじゃない。私は悪くない、間違っていない!
「何を言っても信じて貰えないんでしょう、だったらもういいわ!」
「そう」
いつもならそうじゃないと言ってくれる人が必ずいたが、もういない。父も義父様に言われたことが堪えたようで、黙っている。
「で、アレクス。キリアムくんの問いの答えがまだだわ」
「それは…」
「私もきっかけが分からない。あなたは分かっていて言わないの?」
「きっかけがあるのですか?」
「ユーリが書き記していたことがあるの、もしかしたらということが、でもそうであった場合、とても信じられることではないの」
「何ですって!ユーリに何を言われたか知らないけど、お母様はどうして私を責めるのよ!」
「ユーリが私に何か言ったと思っているのね?自覚があったということね?」
「え、そうじゃなくて」
メルベールは怒りに任せて話すあまり、不都合があるという自覚があったことを認めているようなものだった。
ルオンは悪意がまではないと言ったが、自覚があったのならば、悪意があったと言えるのではないかと、サイラは思った。
「メルベールを責めるようなことを、言い残していると思っているのでしょう?それは責められる自覚があるからじゃない?」
「それこそ嘘かもしれないじゃない!死ぬ間際の人の言葉なんて、誰でも信じたくなるでしょう?お母様が私のことを責めるなんておかしいもの!いつも何も言わなかったじゃない!」
サイラに些細なことを注意されることはあったが、本気で怒られたことはない。ただメルベールにとって些細な事であって、サイラは気付く範囲ではあるが、細やかに注意して来たつもりだった。
「あなたのように言えば言うだけ、ユーリに向かうから、言わなければならない時しか、言わないようになっていたわ…それでは足りなかった。守れなかった。死なせてしまった…それが事実なの。そして、事実であることは証言も証拠もあるわ」
「でもそれはユーリが書いたものでしょう!」
ユーリが都合よく書いた物を、証拠だと言われても、認められるわけがない。お母様は世間知らずだから、分かっていない。
「あなた、シュアト公爵家の茶会に行ったのでしょう?あそこにいらした方は全員、ユーリと親しくしていた方よ?」
「だから何よ!ユーリは私に親しい方を奪われたくなくて、紹介しなかったのでしょう?ユーリってそういうところがあるものね」
ユーリの親しくしていたクラスメイトは、私とも友達になりましょうと言っても、あまりいい顔をしなかった。きっとユーリに何か言われていたのだ。
「あなたと親しくしたいなどと思うはずがないでしょう?」
「はあ?」
「何も言わないユーリを大事に思って、周りを調べられていたとは思わないの?」
「っえ…どういう意味…」
「私は、今日、ここで裏付けを聞いた上で話をしているの。証拠や証人もいらっしゃるそうよ、あまり舐めない方がいいわ」
「っな」
皆は薄々、思い込みで話をしているわけではないことに気付いていたが、やはり茶会のメンバーに調べられていたことが決定的となった。
「アベリーは、気付かないまま同じ道を行くか、気付いて反省出来るか…キリアムくん、寄宿学校の様子はどうなのですか?」
「まだ報告は来ていませんが、苦情も来てはいないので、何とかやっているのではないかと願っています」
キリアムは苦情が来ることも想定していたが、さすが厳しいと言われる寄宿学校なだけあって、少々の我儘程度は慣れているとも言える。
「そう…どちらにしても厳しい道になるでしょうね」
「私のせいじゃないって言っているでしょう!私は奪ったりなんかしていない」
「手柄を奪っただろう…自覚はあるんだろう?」
ユーリは進んではしてくれなかったけど、お願いすれば頼みを聞いてくれた。確かに自分が行った様にも言ったけど、双子なんだからいいじゃない。私は悪くない、間違っていない!
「何を言っても信じて貰えないんでしょう、だったらもういいわ!」
「そう」
いつもならそうじゃないと言ってくれる人が必ずいたが、もういない。父も義父様に言われたことが堪えたようで、黙っている。
「で、アレクス。キリアムくんの問いの答えがまだだわ」
「それは…」
「私もきっかけが分からない。あなたは分かっていて言わないの?」
「きっかけがあるのですか?」
「ユーリが書き記していたことがあるの、もしかしたらということが、でもそうであった場合、とても信じられることではないの」
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