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真実2
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「何だそれは…アレクス、正気か?お前、狂っているのか?」
マトムが同じ双子を持つ親として、一番に耐え切れず発した。
「大公閣下夫妻も同じことをおっしゃっていました。あなたの夫は狂っていると、その通りだと思いました」
アレクスは黙ったまま、口を開かない。
「私も初めて知りました、ユーリだけに言っていたんでしょう。ユーリの覚書にも書いてありました、最初は6歳の時でした。そこからずっと言い続けていたのですか!答えなさい!」
「いや、それは…」
「どうしてそんなことになる?そんなはずないだろう?私の目にも幼い頃は平等に見えた、その後はメルベールに甘く、ユーリに厳しい姿だった。本来、厳しくすべきだったのはメルベールの方だろう?」
メルベールはさすがに義父に言われて、バツが悪そうに顔を伏せた。
「私は注意するのはメルベール、ルオン、ユーリの順番でした。ですが、あなたはユーリしか怒らない、ユーリを褒めない。メルベールが50点、ユーリが90点でもメルベールを褒めるのですわよね?」
「っそれは」
「何だそれは。両方褒めるなら分かるが、50点の方だけを褒めてどうする?」
「ユーリにはどうして満点ではないのだと言うのです。メルベールは50点だというのに、何がよく頑張ったですか?メルベールもおかしいと思わなかったの?」
「私は、ユーリを庇っていたわ」
メルベールは自分がユーリを守る優しい姉だと、周りからもそう思われていると、自負していた。
「また嘘を付くのね…ユーリは90点なんて凄いわと言って、私は勉強は苦手だからとわざわざアレクスに言って、その後アレクスはメルベールが可哀想だから、ユーリにいい点を取るなと言ったんですよ」
「あ?何だそれは!お前…」
「私がユーリに気にしなくていい、そんなことはする必要はないと言い聞かせたのです。双子で比べられるのは仕方のないことかもしれませんが、馬鹿に合わせて、何になるというのです」
「馬鹿…」
メルベールは初めて母に馬鹿だと言われたことに、母にそう思われていたのかとショックを受けた。
アレクスはユーリを罵声を浴びせるように、メルベールに自分が同じことをしてはならないと律していたが、口に出さなかっただけである。
「僕も聞いていたよ、メルベールは意図的に行ったとしか思えなかったよ」
「ルオン!どうしてそんなこと言うの!そんなはずないじゃない」
声を上げたのは黙って成り行きを見ていたルオンだった。ルオンもその場に居り、おかしいとは思ったが、意見して怒られるのが嫌だったから、何も言わなかった。
「悪意まではないけど、ユーリ姉様を下に見たかったんですよね。偽りでも、見せ掛けだけでも」
「っな!ふざけないで!」
「ふざけていません、僕はずっとそう思っていましたよ」
メルベールは弟・ルオンとは、あまり仲が良いとは思っていなかったが、責められるとは思っておらず、怒りで震えた。
「私は今だから言いますが、トスター侯爵家にメルベールでは無理だと思っていました。侯爵家を切り盛りできるはずがない。キリアムくんにやって貰えばいい、ユーリに助けてもらおうとしか思っていなかったはずです。そして、事実だった」
「違うわ!私はちゃんとやって来たの!子ども、そうよ、子どもを産んだわ!ユーリは産んでいないじゃない!私の方が優れているわ!」
下を向いているアレクス以外は、メルベールを信じられない気持ちで見つめた。サイラは娘ながら、化け物だとすら思った。
確かに子どもを産むことは貴族の血を繋ぐという点では、大事なことだろう。
だが、メルベールの結果はどうだろうか。
「あなたは言葉通り、産んだだけじゃない、しかも一人は怪我させて寄宿学校で修道院…過ちに気付いた時、アベリーはあなたを恨むでしょうね。お母様の真似をしただけなのにと…」
「っな、私のせいじゃないわ」
マトムが同じ双子を持つ親として、一番に耐え切れず発した。
「大公閣下夫妻も同じことをおっしゃっていました。あなたの夫は狂っていると、その通りだと思いました」
アレクスは黙ったまま、口を開かない。
「私も初めて知りました、ユーリだけに言っていたんでしょう。ユーリの覚書にも書いてありました、最初は6歳の時でした。そこからずっと言い続けていたのですか!答えなさい!」
「いや、それは…」
「どうしてそんなことになる?そんなはずないだろう?私の目にも幼い頃は平等に見えた、その後はメルベールに甘く、ユーリに厳しい姿だった。本来、厳しくすべきだったのはメルベールの方だろう?」
メルベールはさすがに義父に言われて、バツが悪そうに顔を伏せた。
「私は注意するのはメルベール、ルオン、ユーリの順番でした。ですが、あなたはユーリしか怒らない、ユーリを褒めない。メルベールが50点、ユーリが90点でもメルベールを褒めるのですわよね?」
「っそれは」
「何だそれは。両方褒めるなら分かるが、50点の方だけを褒めてどうする?」
「ユーリにはどうして満点ではないのだと言うのです。メルベールは50点だというのに、何がよく頑張ったですか?メルベールもおかしいと思わなかったの?」
「私は、ユーリを庇っていたわ」
メルベールは自分がユーリを守る優しい姉だと、周りからもそう思われていると、自負していた。
「また嘘を付くのね…ユーリは90点なんて凄いわと言って、私は勉強は苦手だからとわざわざアレクスに言って、その後アレクスはメルベールが可哀想だから、ユーリにいい点を取るなと言ったんですよ」
「あ?何だそれは!お前…」
「私がユーリに気にしなくていい、そんなことはする必要はないと言い聞かせたのです。双子で比べられるのは仕方のないことかもしれませんが、馬鹿に合わせて、何になるというのです」
「馬鹿…」
メルベールは初めて母に馬鹿だと言われたことに、母にそう思われていたのかとショックを受けた。
アレクスはユーリを罵声を浴びせるように、メルベールに自分が同じことをしてはならないと律していたが、口に出さなかっただけである。
「僕も聞いていたよ、メルベールは意図的に行ったとしか思えなかったよ」
「ルオン!どうしてそんなこと言うの!そんなはずないじゃない」
声を上げたのは黙って成り行きを見ていたルオンだった。ルオンもその場に居り、おかしいとは思ったが、意見して怒られるのが嫌だったから、何も言わなかった。
「悪意まではないけど、ユーリ姉様を下に見たかったんですよね。偽りでも、見せ掛けだけでも」
「っな!ふざけないで!」
「ふざけていません、僕はずっとそう思っていましたよ」
メルベールは弟・ルオンとは、あまり仲が良いとは思っていなかったが、責められるとは思っておらず、怒りで震えた。
「私は今だから言いますが、トスター侯爵家にメルベールでは無理だと思っていました。侯爵家を切り盛りできるはずがない。キリアムくんにやって貰えばいい、ユーリに助けてもらおうとしか思っていなかったはずです。そして、事実だった」
「違うわ!私はちゃんとやって来たの!子ども、そうよ、子どもを産んだわ!ユーリは産んでいないじゃない!私の方が優れているわ!」
下を向いているアレクス以外は、メルベールを信じられない気持ちで見つめた。サイラは娘ながら、化け物だとすら思った。
確かに子どもを産むことは貴族の血を繋ぐという点では、大事なことだろう。
だが、メルベールの結果はどうだろうか。
「あなたは言葉通り、産んだだけじゃない、しかも一人は怪我させて寄宿学校で修道院…過ちに気付いた時、アベリーはあなたを恨むでしょうね。お母様の真似をしただけなのにと…」
「っな、私のせいじゃないわ」
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