【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ

文字の大きさ
上 下
78 / 118

答え6

しおりを挟む
「金額のことを言うのは下品でしょうけど、十分の一にも満たないものですよね?もしくは何も贈ってもいない。厚意を受け取らないのに、自分は厚意のような物を贈る、理不尽ではありませんか?」
「その通りだと思います」
「それでもあの子は大事に使っていたようです。普段使いのような品なのに、出掛ける時などに持って行っていたようです…」
「っあああ、あっ…」

 レイアはよくやく理解出来たのか、声にならない声を出し、ユーリのしていたことこそが、贈り物への厚意と言うものだ。

「では、サファイアのネックレスの年の誕生日に、妻は贈り物はしていないということだな?」
「はい、そうなりますね」

 サファイアのネックレスにハンカチ一枚だと思っていたが、一枚すら贈っていないこと分かった。

「収支が書いた物は義母上がお持ちですか?」
「はい、私が保管しております」
「贈った物の値段も分かりますよね?」

 返す当てがなくとも、金額と事実は確認しなければならない。

「ええ、全て分かります」
「っは!贈り物くらいいいじゃないか、強請っていようが、ユーリも喜んでいたかもしれないじゃないか」

 オーランドの不貞行為にはさすがに擁護は出来ず、アレクスも黙っていたが、贈り物の話になって、レイアを擁護するのではなく、ユーリを責める隙を探していた。

「総額700万を超えているのですよ?どうして喜ぶのです!」

 男性陣はおおよその金額は聞いていたので、驚くことはなかったが、さすがにレイア自身も、メルベールも驚いた。

「っ、だがそのくらい」
「あなたのように商売をしているわけでもないのに、一人が簡単に稼げる金額ではありません!」
「っだが」
「確かに食住に困ることはなかったでしょう。でも自由になるお金は年に何度も奪われる…だから茶葉のブレンドをして、おこずかいを稼いでいたのよ!」
「言えば良かったじゃないか」
「じゃあ、あなたなら目上の人に言える?大公様にも言えずに逃げたあなたには、言えないでしょう?」
「―――っ、金ぐらい…私に」
「あなたにユーリが言えるわけないでしょう!言っても、何でお前なんかにで終わりでしょう?」
「そんなことはない」

 お金はあっても、ユーリに渡すわけがない。もし渡すとしてもユーリを散々罵倒して、蔑んでからであろう。そんなことユーリが選ぶはずがない。

 オーランドも信用が出来る相手ではないと分かった以上、頼むことはしたくなかっただろう。ユーリなりの意地もあったのかもしれない。

「じゃあ、あなたが身一つで稼いでみさないよ!」
「申し訳なかった…夫人の言う通りだ。ユーリが身一つで稼いだ金だ。返す返さないではなく、レイアも同じ金額を自分で稼いで来なさい」

 謝ったのはアレクスではなく、マトムだった。おかげでアレクスは次の言葉を、もごもごと収めることにしたようだ。

「っな、どうして私がそんなことを…」
「お前が強請った物だろう?仕事は監視を付けて紹介してやる」
「私が働く?」

 レイアは嘘でしょうとブツブツ言っていたが、サイラは話を続けた。

「それで、コンクエッツ公爵夫人は、ある夜会で一緒になったレイア夫人のお兄様であるスジュア伯爵に、伯爵家では普通のことなのかとお尋ねになったそうです」
「っな、お兄様に…」

 両親はレイアに甘かったが、兄は違う。

 レイアは表向きは自分の価値を下げることはしなかったが、祖父母や両親には物も買って貰い、我儘を言い、マトムとの婚約も強引に進めて貰ったりした。

 アベリーのことがあって、どう伝わっているか分からないので、実家にも行かず、連絡も取っていなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

戻る場所がなくなったようなので別人として生きます

しゃーりん
恋愛
医療院で目が覚めて、新聞を見ると自分が死んだ記事が載っていた。 子爵令嬢だったリアンヌは公爵令息ジョーダンから猛アプローチを受け、結婚していた。 しかし、結婚生活は幸せではなかった。嫌がらせを受ける日々。子供に会えない日々。 そしてとうとう攫われ、襲われ、森に捨てられたらしい。 見つかったという遺体が自分に似ていて死んだと思われたのか、別人とわかっていて死んだことにされたのか。 でももう夫の元に戻る必要はない。そのことにホッとした。 リアンヌは別人として新しい人生を生きることにするというお話です。

さようなら、わたくしの騎士様

夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。 その時を待っていたのだ。 クリスは知っていた。 騎士ローウェルは裏切ると。 だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。

処理中です...