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約1年後

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 メルベールとレイアは社交を控えるように夫に言われて、必要な場合は男性陣だけが出席するようになり、約一年が経ち、アベリーも7歳を過ぎ、寄宿学校に入る時は刻一刻と迫っていた。

 だが当のアベリーはいつか元に戻るだろうと思って、拗ねたまま過ごしていたが、寄宿学校に入ることを伝えると、外に出られると喜んでいたほどであった。

「勉強する場所なんだよ」
「分かっているわ、そこで暮らすんでしょう?ここよりずっといいわ」
「そうか…理解出来ているんだな?」
「学校に行くことくらい分かるわ」

 アベリーは貴族令嬢は皆、その学校に入ると思っているようではあったが、それならそれでいいかと、連れて行く際に大暴れされることも想定していたために、何も言わないことにした。

 メルベールとレイアも邸でじっとしているような性分ではないため、今は噂が消え、アベリーが寄宿学校に入るまでと思って、耐えながら過ごしていた。

 オーランドは辞めることはないと言われ、王太子殿下の側近を続けていた。再婚を勧められることも増えたが、する気にはなれなかった。

 サイラは未だにどこにいるか分からず、誰にも見付かっていない。

 グラーフ伯爵家はアレクスはひとりで出席することが、我慢ならず、どうしても出席しなければいけない場合は、ルオンと妻・マリリアが出席するようになっていた。

 アレクスは見付からない苛立ちはあったが、出て行かれたことが公になることはプライドが許さず、ますます仕事にのめり込むようになっていた。

 サイラは療養中となっており、娘が亡くなって、落ち込んでいるのだろうと思われており、疑う者はいない。

 マリリアはオーギス伯爵令嬢で、父親がアレクスほど傲慢ではないが、家庭を顧みない、仕事人間であった。ゆえにアレクスの態度も、似たようなものだと気にしておらず、サイラのことも仕方ないと思っていた。

 元々大人しい性格で、グラーフ伯爵家で起こったことは理解しているが、黙って息子であるラースを育てることに気持ちを注いていた。ルオンもマリリアにはアレクスを見て、マリリアには優しく接しており、さらにユーリのことで傲慢さは身を潜め、静かに過ごすようになった。

 あるパーティーで、ルオンはリルフォーミュア・パーシを見掛けた。

 高級そうなドレスに身を包んでおり、自分で購入できるはずもないので、借金をしたのか、誰かに買って貰ったのだろうと思った。

 いい相手が見付かったなら良かったとは思ったが、誰なのかが分からない。下の世代の男性の顔はあまり把握しておらず、マリリアは自分より二つ年下であったため、分かるかと思って訊ねた。

「マリリア、あのパーシの姉の方と一緒にいる方は誰か分かるか?」

 ルオンはリルフォーミュアと発するのも面倒で、かと言って略して親しいと思われるのも嫌なので、いつもパーシ姉、パーシ妹と呼んでいる。

「あれは確かログラン子爵家の、アキス様だと思います。でも、確か…婚約者がいたはずでは?」
「何だって?」
「男爵家の方と婚約していると、聞いたことがあったのですけど…どこだったかしら?思い出せないです、ごめんなさい」
「いや、婚約者がいるのに、エスコートされているなら不味いだろうな」

 ちゃんと婚約者がいる者は止めておくように伝えたはずだが、まさか相手に払って貰おうとでも思っているのではないだろうな。

「解消になっていなければ、あっ、そうだわ。確かジース男爵家よ。お父様が目の付け所がいいって言っていたから」
「解消になっていることを祈るしかないな、そろそろ帰ろう」
「ええ、挨拶も済ませましたし、いいですわよね」

 万が一のことがあって、巻き込まれたら堪らないと、早めに帰ることにした。

 だが、二人の願いは届かず、リルフォーミュア・パーシの行動は、さらにパーシ子爵家の首を絞めることになった。
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